お風呂は気持ちいい
「終わったぁ〜」
体を伸ばしながらそんな言葉を吐く。
先程全て終わって、取り敢えず零士にも確認のため動画を送り、オッケーをもらったところだ。
(うーんやることねーな!風呂入って寝るか!)
もう美桜も眠いと自身の部屋に戻ったところだ。
パソコンなんかを閉じたり服を取ったり諸々の準備をして風呂に入る。
「はぁ〜…」
シャワーを浴びながらそんな声が出る。
こう言う時が気持ちいいからお風呂は大分好きである。
(ふー…なんか最近すげー忙しかったな〜…オフ会とか…配信始めたこととか…でもやっぱり)
鏡で自分の姿を見る。
そこにはかつては考えられないほど美しく惚れ惚れするような自分の姿が映る。
(この体にも少し慣れてきた気がする)
そんな事を考えながらシャンプーをし始める。
(始まりは…朝起きた時だったな…突然女になってて…美桜に追い出されたり、姉貴と出かけたり。1人で出かけた時はほぼナンパされて…で逆にナンパされてる人助けるために…あ、そう言えばあの時普通に人殴って逃げてきたな〜…せ、正当防衛だよね?多分きっとなんかあのおじさん反社ぽかったし…うんうん)
ここ数日のことを考えながら暖まる。
(そう言えばこの体を見ても何も思わなくなったな〜)
"そう言えば最初は自分で自分を見るのも戸惑ってたな"なんて考えながら自分の体をベタベタ触る。
胸を揉だり弄ぶが何も思わない。
(なら下も…)
そんな事を考えるが流石にやめておこうと手を止める。
(浴槽に浸かろうかな)
そう思い立ち肩まで水につかる。
「ふー…」
何も考えずこうやって風呂に入るのも良いものだ。
こうやってじっとしていると2時間でも入って入れそうな気がする。
ほんの少し、ドアが開いた。
「天馬ー風呂おわったら飯作って〜飯ー」
小さな隙間からそんな声が聞こえる。
「鍵かかってるのに普通に入ってくんなよ!」
「大丈夫、大丈夫今日は中にまでは押しかけないから」
「それが普通ね?!」
.
そんな会話をする。
「はいはい…分かったよ…なんか作るから待ってよ」
「やったぁー」
"はー"っと一息ついてから浴槽から上がる。
「で、姉貴脱衣所から出てくれないと俺出れないんだけど」
「え?出れないことは無いんじゃないでさー何作ってくれる?」
"むむ"っとそんな擬音が聞こえたような気がした。
(姉貴が遂に少し頭を使って裸を覗きに来やがった、これあれだけ適当に会話して俺が痺れを切らして出てきたら"いや自分は話してただけだから、中にまでは入ってないから"で多少なりとも優位性を保とうとするあれだ)
楓の企みに気づき打開策を考える。
(背に腹は代えられん)
一つの結論にいたり。
ゆっくり浴槽からでる。
そうして流れるように扉を開き風呂から出る。
(くだらんことに時間を使うより速攻出て飯食ってねる!)
「姉貴ータオルとってー」
「……」
楓は流石にもう少し粘られると思ってたのか止まっている。
「……ご褒美か?」
「ちゃうから早くー寒いよー」
楓はタオルをとり天馬に渡す…ではなくタオルを広げ天馬に近づき始める。
「たまにはお姉ちゃんに甘えろよ〜拭いたあげるからほらほら」
それにため息をつく。
ここで粘ってはさっき早めに出る判断をしたのが無駄になる。
「は〜…なんかなー姉貴って尊敬できないよな〜」
「心外だなー」
ふふふ、っと上機嫌に天馬の体をタオルで拭き始める。
「姉貴を慕ってるのって実際問題夢那くらいじゃない?」
「そう?でも?天馬もお姉ちゃん好きでしょー?」
思いもしなかった質問が飛んできた。
それの回答に少し頭を悩ませる。
「うんまあ好きだよ、凄く頼れるし俺たちの為に、凄い動いてくれるし」
そう言うと少し楓の顔が赤くなった気がした。
多分真面目に返されると思ってなかったのだろう。
「もーう言ってくれるなー」
ゴシゴシと天馬を拭くタオルが少し早くなった気がした。
大体体を拭き終わって服を取ろうとする。
(あれ?着替えここに置いてた気がするんだけど)
そう考えた時ふと後を振り返れば天馬の着替え一式もった楓がいる。
「ささ、ほらほら着替えさせてあげよー」
そんな事を言いながら天馬の下着を広げる楓。
「はー…分かったから早くして」
ほんとにダルそうにそう言うが楓は止まる気配がない。
「ほらほら足通しましょうねー」
しゃがみこんで、天馬のバンツの穴を広げてそんな事を言う楓。
それに少々引きながらも指示に従う。
そうして下着が履けた頃だった。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん何処かしらな…い…」
そんな事を言いながら楓が天馬に服を着せようとしたタイミングで美桜が入ってきたのである。
「何してんの?」
その言葉で完全に場が凍るのであった




