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第一話

 私、お貴族様の子供だったの!?



 孤児院で生まれ育った私は、ある日突然、クリアディナ男爵っていうおじさんに引き取られた。


 毎朝の習慣で孤児院の入り口に飾ってある、王族という肖像に礼を捧げていたとき、突然知らされた。

 金髪に金の瞳の男性と優しそうな銀髪に青の瞳の女性。


 実のお父さんなんだって。お母さんが死ぬ前に、子供を孤児院に預けたって手紙を出したんだとかなんとか言ってた。


 どうしても幼馴染のノールだけは、一緒にいたいって泣いてお願いしたら、従者にしてくれた。孤児院の先生も、ノールが引き取られることはないからって。こんなにも綺麗な顔なのに。白銀の髪に金色の瞳。こわいくらいに綺麗な顔。


 街の人たちと比べると、孤児院のみんなは整った顔をしていた。でも、その中でもピンク髪でくりくりな目をした私は、ダントツでかわいかったけど!

 お貴族様の娘って言われて、納得だよねー!




 なんか、お父さんの正妻さんと子供達が事故で亡くなって、後継者を慌てて探してたんだって。その時に、私の存在を思い出したとか。思い出してもらえてラッキーだよ。




 そんなこんなで、王立学園っていうところに通うことになったの。

 引き取られて1週間後。私もノールもびっくりのスケジュール。

 ただ、孤児院での教育が充分だったから、問題ないって言われて、貴族教育もなしなんだって。

 めんどくさいことは嫌だからいいんだけど、それでいいのかな? まぁ、お父さんがいいって言うならいっか!


 あ、そうだ。お父さんじゃなくてお父様って呼ばないと。







「はじめまして! シャイン・クリアディナと申します! クリアディナ男爵家の長女です!」


 お父様に言えって言われた挨拶をしたら、どこらかともなくクスクスと笑い声が聞こえた。


「孤児院出身の長女ですって」

「養女の間違いでなくて?」

「下賤な香りがここまでしますわ」





「おい! やめないか!」


 怒ったノールが飛び出していかないか心配していたら、そう言って止めてくれる人がいた。


「学園内では身分など関係ないだろう!」


「……ルディアーナ様」


 後に知ったんだけど、ルディアーナ様は、この国の騎士団の団長のご子息様なんだって。

 赤髪に青目で筋肉質な身体で男らしい感じ。








「おはよう! ルディ」


「あぁ、シャインか」



 あれから、私たちは友達になった。とっても仲良くしていたら、ノールに苦言を呈された。


「お嬢様、貴族ともあろうお方が、婚約者でもない異性を愛称で呼ぶなんて……」


「あら? でもノールだって、ノールじゃない? ノールとも友達なんだし、ルディとも友達。問題ないじゃない? 孤児院でもそうしていたし、学園でもそうしていいと習ったわ」


 そこからルディの紹介で、高位貴族と言う人たちとも仲良くなったわ。





「シャイン、元気か?」


「えぇ、また今度ランチにいきましょう? ジョフィ」


 ジョフィは宰相の息子。黒髪黒目でほっそりしてる。真面目だけど優しいの。


「シャイン。私とは行ってくれないのか?」


「もちろん行くに決まっているわ! マッシュ」


 マッシュはこの国の王子様。金髪に金の瞳。王家の証なんだって。細マッチョでかっこいいの。


 最初は純粋な友達だったの。でも、私の可愛さに徐々にみんなが惹かれて行って……。








「シャイン。私だけを見てくれないか?」


「もちろんよ、マッシュ」


「シャイン。僕とも仲良くしてくれるよね?」


「もちろん大切なお友達だわ。ジョフィ」


「シャイン。今夜は泊まっていくか!?」


「もう! ルディったら! 誘い文句が直接的すぎる!」





 みんなで私を取り合うようになったの。でも私は一人だから、順番にみんなの相手をしていったわ。


 そうしたらね、婚約者の人たちが怒りにきたの。私に怒るのなら、自分の婚約者に怒ればいいのに。





「クリアディナ男爵令嬢。お噂はかねがねうかがっておりますわ。婚約者のある男性を寝取るのがご趣味だとか」


「まぁ。彼らとはいい友人関係を築かせてもらってますよ?」


「それはどんな友人関係なのかしら? 身体を使わないと継続されない友情?」




 クスクス笑う彼女たちに私は問いかける。


「それなら、婚約者の心を引き留めるために、いろいろ使えばいいじゃないですか。あぁ、そんな貧相だと難しいでしょうか。高位のご令嬢ですのに……」





「まぁ! なんて失礼な!」


 そう言って怒る令嬢から走って逃げるの、楽しかったわ。







「お嬢様。ご自身をもっと大切にしてください」


「あら、ノール。私は私を大切にしているわ? だって、こんなにもたくさんの殿方に愛されているんですもの」


 その頃からノールが私に苦言を呈さなくなっていった。私も、うるさくなくて幸せだと思って、令息たちとの仲を深めていた。





「マッシュ殿下。あのご令嬢は側妃になさるのかしら?」


「うーん。側妃は難しいだろうね。良くて妾かな?」


 マッシュが、婚約者のハウラッシュ公爵令嬢ルチアナ様とそう話していらっしゃった。

 ルチアナ様は、婚約者の中でも、唯一私にも優しく接してくれる方だわ。そんなルチアナ様と一緒に、マッシュ殿下を支えることができたら、幸せね。お父様も、マッシュ殿下と親しくしていると聞いて喜んでいたわ。






「マッシュ殿下。我が家の婚約者としての方針は、覚えておいででしょうか?」


「そうか……どんな理由でも浮気は認めない……。側妃や妾として彼女を迎えるのは、ハウラッシュ公爵が認められない、というわけか」


「えぇ。ですから、王家有責の婚約破棄をしていただけると助かりますわ。側妃や妾がいても殿下と結婚したいお方は、たくさんいらっしゃいますから」


「そうだな。父上も母上も私の自由にしていいと言っているし、私もシャインと共に過ごしたい。婚約破棄の手続きを進めよう」


 そんな話を聞いた私は、お父様に報告に参りました。そして、お父様に言われて思ってしまったのです。私でも王妃になれるかも、と。





「ねぇマッシュ。私もマッシュの1番になりたいわ」


 それまで遊んでいた男たちと手を切って、マッシュ一筋になった私を、マッシュも愛してくれていたと思っていたわ。


「うーん。でも、シャインはいろんな男と遊んでいただろう? 私はそんな小さいことを気にしないが、王家としては処女性が大事なんだって」


 私を組み敷きながらそう言うマッシュに、彼は王妃にするのではなく、私を妾として飼い殺そうとしているんだと気づいたわ。


 だから、私、お父様とたくさん相談したの。そうしたら、親切なお方が声をかけてくださったんだって。


「おい。シャイン。これは、恋愛成就のお守りだそうだ」


 そう言ってお父様が差し出してきたピアス。ピンク色の石の埋め込まれたピアスは、隣国の文化で我が国ではまだ普及していなかったわ。でも、王妃って流行を作るものよね?






「ねぇ、マッシュ。似合う?」


「あぁ、とても似合うよ、シャイン」


「じゃあ、私を王妃にしてくれる?」


「もちろんだ」


 そのピアスをつけてからというもの、マッシュは私にメロメロだ。私の持ち前の可愛さだけじゃなく、恋愛成就のお守りのおかげもあるわね。




「お嬢様。確実にそれは魔術具です。国家転覆罪に問われかねません。おやめください」


 そうやって止めてくるノールを我が家から追い出したわ。


 優秀だから、拾ってくれるお家もあると思っていたけど、まさかマッシュの前婚約者ハウラッシュ公爵に拾われるとは思っていなかったわ。ルチアナ様はお優しいお方ですものね。




「マッシュ。私、早く王妃になりたいな」


「わかった。私に任せろ」


 そう言ったマッシュは、国王と王妃を殺したらしい。殺された国王と王妃は、私の知ってはいけない何か犯罪行為をしている最中だったらしい。前にマッシュが、“父上も母上も加虐趣味なところがあるからな。でもシャインのことは守るから”と言っていたのを思い出した。






「国家転覆罪、王族の殺害教唆犯として、捕える」


 そう言って、私とお父様は捕らえられたわ。もちろんマッシュも一緒にね。


 お父様はわぁわぁと喚いていたわ。マッシュは自分のしたことに震えていたわ。私もこんな展開は望んでいなかったの。




「ルチアナ様。あちらのピアスが……」


「じゃあ、あのピアスを取り上げて調べさせてちょうだい」


 そう言ってルチアナ様の横に立つノールは、従者というよりも恋人同士のようであった。

 そのとき、胸がちりっと痛んだの。そして、気づいたんだわ。私、ノールと一緒に幸せになりたかっただけだったんだって。でも、もう遅いのね。

 ノールが幸せそうに微笑んでる姿を見て、私はノールの幸せだけを祈ることにしたの。





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