シンギュラリティAI と ハヤト
6 ヴィブレインeffect
10月31日早朝、覚醒した僕は寝返りした。左側臥位が、お気に入りだ。この世界では貴重な、透明なガラスの張りの窓、ぼんやりと墨絵のように庭が見えた。
《ステータスオープンと、考えてください。声に出してもいいですが、まわりに人がいたら、独語するアヤシイ人と認識されます。》と、今?流行りの異世界転生か転移かのお約束の要請。ナゼか眼を閉じる。
…ステータスオープン
そっと ゆっくり ガラス窓を見・・在る。僕の前に、ステータスウィンドウが出現していた。
[名前] ハヤト・カーク・ウィントクーフ
[種族] 人
[年齢] 10歳(10月31日誕生日)
[職業] 王子・深宇宙最新鋭艦隊提督・旗艦艦長・王都魔法学院初等科3年生
[レベル] 100以上∞
[称号] 異世界人
[HP体力] 100以上∞
[MPマジックエネルギー] 100以上∞
[ATK攻撃力] 100以上∞
[DEF防御力] 100以上∞
[STR強靭さ、筋力] 100以上∞
[魔法] 全属性
[AGI俊敏性] 100以上∞
[Luck運] 豪運∞
[スキル] 言語フリー・アイテムボックス(時間停止収納∞)・転移・無詠唱・HP自動回復・MP自動回復・飛行・鑑定・魔法攻撃無効・物理攻撃無効・その他アトはおいおい(楽しみー)
[ユニークスキル] エナジードレイン・並列思考(演算)・エクスプロージョン(爆裂魔法)・魅了・変化変体・ステータスは名前、年齢、職業以外隠蔽され確認は本人のみ
… … …うと…ウト…
《キャップ!》…ちょっと 疲れたんだ。ステータスが、チート過ぎて…あっ、僕、職業異世界人だけど、勇者じゃないよね?!勇者と魔王は、絶対ムリ!絶対お断り!だって、勇者や魔王って、大変だよね?僕、とっても穏やかに暮してるし、それなりにガンバって、学力も魔法も模擬戦全部、ずーっとトップなんだ。《ソコですか…ソコは、まぁ前半は大丈夫なのですが、1年後、サザンクロス皇帝が、世界統一政府を目指し、世界大戦が始まります。キャップは、自分を自分自身で護れる強さを、開戦までにレベルアップしなければなりません。コレからの冬休みに向け、辺境都市サイドのダンジョンコア破壊シークエンスが発生しています。スキルは使ってこそ身に付きます。すでに、ビーコンはオールラウンド単位で状況把握を開始しています。》……わかってたよ、お約束だもん、でも、何かイロイロ盛り過ぎてるよね?あーっ…考えたら負けなヤツ!《ぷン…》?、トントントンと3回ノック(2回はトイレノックといい、幼稚園の面接で落とされる)、執事イリアが「おはようございます、朝食のお時間です」と声掛けしてくれる。「おはようございます」と返事をして、ステータスを閉じた僕は、朝のルーティンを1人でこなす。
お母様は、僕が1歳の誕生日に、お揃いのキラキラしたブレスレットをはめてくれた。キラキラ輝きながら、左手首でカチッと小さな音がすると、僕の宝物は見えなくなった。「?」「誕生日おめでとう!大丈夫よ、見えなくなってもあなたが右側で触れば、ホラそこにあるでしょう?母は、コレからお仕事に出掛けます。暫く会えないけど、マジックアイテムのブレスレットで、いつでもお話できます。」お母様は、僕が1歳になるまでに、自分のコトは自分1人で出来る、ように、朝から就寝までの、暮しの常識ルーティンと、生活魔法を教えてくれた。執事イリアを除くと、王城内の森の離宮は、お母様から僕への愛情のゆりかごだった。1歳の僕は、本能でひっつく。ぴとっ… … アキラメル。お仕事だし。僕は、母上を想いちょっとだけ宝物に触れ、1階に向かう。螺旋階段の真ん中のポールを滑り降りる(時短、消防士さんが使うのと同じ仕様)。
食事は、執事イリアの特製。お弁当も、いつも特製。朝食は、サクふわボルガ風のパンと、生ハムと葉野菜サラダ目玉焼きはハード、コンソメスープ。おいしく食べながら、「未明に、夢をみたんだ。1年後世界大戦が始まる。可及的速やかにに、辺境都市サイドのダンジョンを攻略して、僕は強くならねば。お願い出来る?」「っ…(絶対ムリだっ!)委細承知(っ!)暫し猶予を」執事イリアは、片眉が一瞬ピクっとしたようだけど、気のせいだ。残りのスープを飲み干すと、美味しい紅茶のあと、風の如くドアから出て行った執事イリアは、インポッシブルな作戦を開始する。
執事イリアは考える。もちろん並列思考ではなく、必死で。この企み(王子の夢)を、成功させるべく、粛々と動く。作戦1.非番の正騎士達男女数名に、金貨の袋を預ける。3組に分け、128cm位の男女の一般人の、品のイイ(ここ大事)子ども袋を20着、下着等全て20組、フード付きマントや帽子等生活必要物品を、全てお任せで揃えるよう指示。また、王都内の高級宿を一泊予約する事。プライバシーと安全を確認する事を指示。そして、翌日早朝からの、一般商人が使う箱型馬車と、腕効きの御者の用意の指示。正騎士達は、出来高成功報酬の金貨10枚以上(超ブラック企業レベルの要求)を、目指し速やかに散って行った。
作戦2.王都を出る手続き。宰相と王様、一番手強いだろう。宰相に、朝の挨拶と、王族の朝食会の第11王子の辞退報告を行なう(朝食会は、毎日8時頃からで、魔法学院に遅刻してしまう)。そして、王子の魔法学院初等科の首席卒業記念辺境都市までの旅行を、辺境伯にご挨拶(辺境伯夫人は、王様の姉上)し、社会勉強の為と説明した。結果、宰相と王様は、チョロかった。即日OKが出て、通行証まで出た。第11王子の自覚は、ほぼなかったが、王国にとり、王子は厄介の種扱い対応だったのだ。王子が王都を、無事出立の確認がとれさえすれば、あとは不慮の事故で行方不明になるのを、期待して書類にサインし、官僚や貴族のサインを、即日整えた強者がいたのは、王子のスキル豪運の、賜物だったのか・・父親である王様は、辺境伯夫人の姉上にビビって、王印をきっちり推した。サインの真横ジャストに!(笑っ)
作戦3.魔法学院は初等科首席卒業単位取得後であり、月曜日からの早期冬休み願いは、学院理事長である、王様に受理させた。チョロ過ぎるが、王様的には、王位継承に興味なく、たまにしか遊んでくれない、玉のような王子は、多分本当に可愛くて仕方ないのだ。
夕食時、執事イリアは、明日からの作戦を報告した。コトもなかったような、気安さで王子に、1日の結果だけと、明日1日のスケジュールだけを説明する。夕食は、大好きなチーズインハンバーグ大、ポタージュスープ、レーズンパン、葉野菜と果物サラダ。執事イリアは、日本の料理のテツジンのスキルがある?と、そう、たった今考えてしまった。いやいや、考えたら負けなヤツ…
天蓋付きベッドで、お母様と1年間暮した、僕の離宮を、暫く留守にする。少しだけ、AIと話し、ワクワクしながら眠った。
7 冒険者ギルドカード
翌日早朝、王都冒険者ギルド最上階、王国ギルドマスター会長室で、第11王子はニコニコ笑顔で、ソファでくつろいでいる。美味しい紅茶と、大粒マロングラッセが、鎮座する季節限定のケーキに夢中なのだ。前日、執事イリアにより手配されたこの席で、ウィントクーフ王国ギルドマスター会長、スターシアナは、エルフ特有の美しい顔の眉間に、三本の皺をよせたまま、器用に笑顔で執事イリアを、視線で殺そうとしていた。
冒険者ギルドカード取得書類、提出時必要な書き込みは、1.名前 ハヤト 2.年齢 10歳 3.職種 魔法戦士 コレだけだ。出身地等は、好みでスルー可なのだ。3つの項目を書いた
書類を、コンビニにある、コピー機位の真っ白な2枚貝の上部にセット、貝の中に右手首まで入れると、ナゼか手首の所は柔らかく変形して、2枚貝はピッタリ閉じた。ブゥーンとPC起動音?が発生し、コンビニコピーの如く、するんと、書類が貝に飲み込まれ?蝶番部分から、カードが出て来た。真っ白な2枚貝は、世界中のギルドにあり、冒険者者の行動記録等、瞬時に共有する。遥か昔から、大活躍中のマジックアイテム、コレも考えたら負けなヤツ!素直にカードを受け取り、無事登録出来て、大好物のケーキにご満悦な王子様。ギルマスの、三本皺の元凶は、カードの色!執事イリアが更新した、冒険者ギルドカードは、ミスリルカードのSクラス。王子は、自分と同じカードの色が、普通なんだと思い込んだ。冒険者カードは、自分のと、2枚しか見たことないのだ。スターシアナは、ぷるぷると震えながら、エルフの胆力を使い切り、目線を逸らした。スターシアナの考察結果は、やっぱり、考えたら負けだ!だった。第11王子から、冒険者ハヤトになった。颯爽と、変身!髪は、黒髪から銀髪に、両目は、オッドアイから、ブルーアイに、性や身長は変更不可、とても残念!僕は、平均より、ちょっとだけ身長が低い。凹む!でも、成長期だし、きっと大丈夫。そして、アイテムボックスから出したのは、セーラーカラーの 淡いパステルイエローの上着と、濃い藍色のヒザ出しショートパンツ!肩の長さの、姫カットで、見た目女の子かなー♬ハヤトは、着る服は、清潔で動き易くて、目立たなければよいのだ。女の子に見えるのだって、特に気にならない。どんな格好をしていても、自分は自分なのだ。華美な貴族達の様子も、そんなモノだと、気にならない。執事イリアも、冒険者イリアに、服だけ変身!ちょっと見、やっぱり、とても上品な剣士だね。ギルマスは、デスクの書類の山に埋もれる事で、二人の変身を、なかったコトに決めた。冒険者は、全て自己責任だ。ただ、王子様の無事の帰還を、そっと願ったのは、スターシアナは、王子様を、好ましいお子様と考えたから…
王都冒険者ギルド、1階ホールに降り立った二人は、脳筋冒険者に絡まれるイベントをスルー、朝市から始まる、食糧爆買いイベントを開始した。屋台での買い食い!何ておいしくて、楽しいんだろー!串焼き、串揚げ、焼きたてパンに各種サンドイッチ。大量に買い、出来立てをアイテムボックスに、王都での大量爆買い、アイテムボックスは、特に珍しくない。一般商人達は、アイテムボックス持ちを、出来るだけ囲い込むのだから。ちなみに、千人に2〜3人の割合で、ランダムにアイテムボックスになる。家系や能力に、全く関係なしだ。そしてごく希に、マジックアイテムとして、ダンジョン等で取得される。夕方、予約した高級な宿は、夕食もおいしく快適だった。ハヤトは、イリアと翌日のスケジュールを確認し、早朝出立に向け、早くに眠った。AIとの、入眠前の一般常識の雑談は、思いの外楽しかった。
翌日早朝、二人は執事イリアと、第11王子として、王都隔壁中央門から出た。正式な記録を残し、揺れる馬車の中で、執事イリアは、インポッシブルな作戦を成功した。少しだけ、ほっとしたのは、王子様には秘密なのだ。
午後のお茶の時間、暖かいコーヒーを マジックアイテムの 水筒から飲みながら、ハヤトは泣き言をもらす。「イリア、クッションをしいても、お尻や足首、全身が痛いね。まるでブリキの人形になった気分」それは、馬車旅のお約束あるあるだった。
1 秘匿
315360000秒…
小さい端末は 待った。315360001秒 微弱な電気信号を 最新鋭フリゲート艦艇メインAIは確認。
新宇宙艦隊旗艦である、ハセイ 夢幻の宇宙に散りばめられたタイムワープ可能な艦隊から複数の小さな探査機が音もなく射出された。
2 side第11王子
青い三日月の夜誕生した、第11王子は、王位継承権とは、ほぼほぼ無関係だ。王城内の森の離宮に暮し、現在魔法学園初等科を卒業、12月からの冬休みを経て、4月から中等科生になる予定だ。
「ブルームーンって 本当に青いんだな?」第11王子は呟く。執事イリアは暖かい薬湯を、カップにそそぎながら、「週末で、学院は休みですが、王族会の朝食がありますよ?」と、秋のロマンチックな雰囲気は台無しにしてくれた。
3sideコタロ
コタロ6歳9ヶ月は、決断の機会を窺っていた。コタロ4歳の誕生日前夜、突然両親は行方不明になった。王都の次に栄える都で、塩を専売する豪商のおぼっちゃまを、その父親から忌避されていた母親の異母妹夫婦が、「この大きな邸宅は、今日から私達家族がすむのさ!おまえは、塩倉庫の2階にでも住むがいいさ」と、こずき倒した。
コタロを大切そうに、太助起こしたじいやは、「ジーナ様、世間体もありますぞ!コタロ様をむげに扱えば、塩の商売にも差し支えるでしょう!」とジーナを見据える眼は、おまえ達がご主人様夫妻を殺したのだろうと語る。ジーナはしばし怯み、目を逸らした。じいやは先祖代々塩屋に仕えており、ジーナ達より、街の信用はあるのだ。
コタロの父親は草(間諜)だった。先祖代々サザンクロス帝国のスパイだ。時折父親の肩に止まる小鳥、その小さな足にハマるリングに、「オープン」と言いながら触ると、卒業証書入れの筒ほどになる。【特に異常なし】【引き続き定時連絡せよ】と、繰り返して、半年に一度金貨1枚が筒に入っており、報酬となる。「クローズ」と言いつつ筒と小鳥の足に触ると、足にはまるリングになり、小鳥は飛んで行くのだ。父親のあと、小鳥は当たり前のように、コタロの肩にとまる。じいやは、小鳥がコタロの肩止まったとこで、父親の死と、コタロも草(間諜)になったことを悟った。
じいやは、コタロに言い聞かせた。「能あるタカは、爪を隠す。マワリは皆敵とおもえ」と、ジーナからまずコタロを護らないといけない。幼い4歳の子どもに、読み書きと計算、生活魔法、間諜の忍術。コタロは賢く聡い子どもだ。数え切らない涙をながし、泥まみれになりながら、じいやの鍛錬に耐えた。5歳の誕生日、じいやはアイテムボックス(時間停止)になっている、汚くみえるみさんがをコタロにハメた。コタロ専用の魔法をかけて。「秘密のマジックアイテムですぞ!命の素です」と言い含めた。じいやにはもうあまり、時間がないのだ。コタロを護って育てる時間!時間は無駄に出来ない。
コタロはじいやと、草原や川、時には森で1日を過ごす。そして、湖のほとりの露天風呂に毎日入る。ジーナ達は、3棟あった塩倉庫が空になりかけて、金の工面にイライラと2人を見張っていた。じいやは、塩には一切手を付けず、ウサギや鳥をかり、魚やエビやカニをとり、森の果実と、竹や蔦のカゴやざるを街で売り、コタロを養う。手が出せないでいたのだ。
4sideサザンクロス帝国第3王子
ダイアナ・フラウ・サザンクロス第1王女は皇帝の右隣に立つ。親衛隊長と騎士総長であり、皇帝の信用厚く、何事にも頼りにされている者にのみ許される立ち位置、左側には宰相であり、ダイアナの幼なじみの乳兄弟シオリとタッグは、皇帝の盾と鉾として、大陸中に轟渡っている。
サザンクロス帝国のお家事情は、お約束どうりだ。
帝位継承権第一位 第1王子アーサーは、病弱で儚い命は、まさに風前の灯。
帝位継承権第二位 第2王子ハイメは、脳筋のキン肉○カ。東国のお伽話の頭に輪っかのゴリラの様相。
帝位継承権第三位 第1王女ダイアナは、頭脳明晰、聡明な淑女にして、親衛隊長と騎士総長を兼任する、女傑。
ここまでが、皇帝と王妃の実子
帝位継承権第四位 第3王子ユーダリ。妾腹で実際に皇帝の種かと疑われて育った為、性格が歪み、帝位に執着し暗躍する。
側室との間には、王女ばかり14人もおり、全員すでに他国に政略結婚(一応イヤイヤは無し)しており、平和貢献している。
で、ユーダリのイライラは現在最高値近い。もし、明日にでも、父皇帝のツルの一声で、皇太子にダイアナが選ばれたら!第2王子のハイメさえ、喜んで賛成するだろう。そう、何十年も第1王子に毒をモリ続けた苦労も水疱と帰す。目の上のタンコブのダイアナは、ウイントクーフ国王の側室であり、第11王子の母親なのに、王子を王国に残し、実家に帰って暮らしているのだ!言い方をかえれば、ダイアナには、もう継子までいるのだ!ユーダリの立ち位置は、針の先程か。
5 10月31日未明
バルコニーのお月見で、冷えた身体を暖かい薬湯で暖め、天蓋付のベッドで眠る。マジックアイテムのベッドは、強固なシールド付で、エンシェントドラゴンのブレスも防ぐだろう。王国では、第11王子でも、ダイアナの唯一無二の男の子なのだ。(本人自覚皆無)
すや…すや…すう
未明のブルームーンが弾けて、碧い雫が僕にまとわり付いた?夢?の中のオッドアイ、瑠璃色の虹彩から世界が発光した。
身体がブレた…AIを立ち上げたような音とシンクロして…?…おかしな夢だ…
《キャプテン、並列思考を開始します。私はシンギュラリティAIです》脳内に響きわたる音声?
落ち着け僕!夢だから…息を吐いて吸う、腹式呼吸で、自律神経を刺激し、副交感神経系を優位に働くことで、心のリラックス効果を、期待するんだ!
…はあっー…すうっー……ゲホゲホ
《キャプテン、コレからキャップとお呼びしますが、落ち着いたら、ステータスオープンと考えてください。ソロソロお約束とお気づきと愚考しますが》
10月31日未明の出来事から、僕も覚醒した。