表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2021問題  作者: 孤独
7/14

2021問題G

20時~21時の再配時間について、話すだけだというのに。

なんかあんまり関係のない話を続けていたようだが、


「その時間帯があまり問題にならなかったのは、現場の配達員がその時間帯になっても終わる事はまずありえなかったし、ほぼ全員で毎日を終えている状況だった」


急がなくて良い時間帯だからこそ、配達員からすれば安心されたものだ。だが、稀にその時間帯でも間に合わなかった事もあるほど、忙しかった事もある。

そして、お客様側からも配達側からも有り難かったサービスであったのは頷ける。


「人件費の高騰や色んなムダの処理を無くす過程で、不要や過剰なサービスを止めていったんだ」

「お客様目線で言えば、送料の値上げをしていて、サービス低下とかふざけんなっ!って感じだったろうけど」

「今までが異常としか言いようがないな」

「タダでやって当たり前ってな。実際、”タダ”で間違ってなかったけどな」


うんうんっと、その時代を経験しているさね、矢木、隅田川、山口の4名は頷く。

その頃に入社せんで良かったと、思っている森橋はお酒を飲んで忘れようと思った。そんな闇深き時代を無くすため、改革が入ってきた時代の話。


「まずは夜間業務に求めていることと、夜間業務をこなせる業務量から調べたもんだ」

「色々と無駄な事は今まで言いつくしたからな」


当日再配の依頼をする時間を狭めることや、不要不急な荷物は翌日回し、要求がキツイお客様への対応を無くすことなどなど。

適切に働く人数を出していき、年々、業務量を縮小する形に。これにより夜勤という勤務そのものを見直し、朝から夜まで働いてくれる方が良いのでは?となっていき……。

そうした過程でようやく、20時~21時の再配時間に頭を悩ませた。



「20時以降は基本、夜勤業務が終わらないからやれたサービスだ」

「ここはやれば分かるが、再配依頼の荷物を配りに行くだけの仕事って、慣れた人間がやると現場ついて20分そこらで終わるんだ(本数にもよるけど、当日再配の依頼を狭めた影響で、昔より多くない)」

「慣れたら楽じゃん!」

「うん。だから、夜勤者って要らなくね?って話になったんだ」


日勤をメインとする配達員の方が現場に詳しく、細かいトラブルもあまり起こさない。そして、夜勤メインの配達員は日勤の業務をこなせても、毎日残業か、あるいはミスが多い。非常に現場や経営者から嫌われていると、……口悪いが書いておく。

首切る理由にも最適だったこともある(結構、高齢な人物が多かった……)。



「ちょっと前は17:00~19:00、19:00~21:00、20:00~21:00の3つだったな」

「今は18:00~20:00、19:00~21:00、20:00~21:00ですね。変えた意味あるんですか?」



昔の時間指定にもトラブルがあった。

16時46分に17:00~19:00の再配依頼を出し、17:10までに届くもんだと思っていたのに届かない!というクレームを挙げてくるお客様もしばしばいた。冗談じゃなく、ホントにあった。17:30には出発しないと、子供を学習塾まで送れないだろって。



「いや、なんで再配依頼出すんだよ!?どーいう頭してんだ!?」


そんなお客様の文句の声を毎日のように電話で聞いていた、隅田川。思い出すだけで受話器を蹴り飛ばしたかった。知るか、ボケって。今あげた例でも、マシな理由の方である。


「そーいう客は多かったな。同じことを言ってしまうが……当日再配を狭めたかったのは、こーいうのに対応できないし、こっちも正当な処理な以上、家には行かなきゃいけない。クレームを挙げるのはもちろん、挙げずに不在もそりゃ問題だったりしたな」


夜間再配で2度、3度。……日勤の業務から合わせれば、最高で5回も同じ家を訪れる事だってある。どんだけムダな行為だったのだろうか。



「配達の現場目線から言えば……18:00~にしたかったのは、日勤から夜勤の業務をこなす際、休憩がとれないからでしたね」

「実さん、今も取れてませんけど?」

「馬鹿野郎、森橋。お前は17:00までの勤務だろうが。この時の俺達は、毎日21:00は覚悟してたんだよ。沢山働けて嬉しいなんて思った奴、誰一人いなかったぞ」

「休息ねぇし、昼飯なしで、朝の1食だけだぞ。4日連続、朝1食だけでぶっ通しで車に乗れ!配達員の健康チェックなんてな、今より酷くて『お前、今日生きてる?』ぐらいの確認しかしてねぇから!」



矢木と山口に詰め寄られる森橋。今でも過酷に感じているのに、彼等からすれば生温いとか内心思われているんだろう。

それが数年くらい前の出来事なんだなって、実もしみじみ思っている。


「18:00~にして、無駄な荷物の配達を止めて、配達員の休憩を優先したんだ。……だったら、夜勤者を確保できるように人数揃えて欲しいけどね……」


確保すると利益を出しにくいからしゃあないね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ