2021問題C
「で、そうそう。配達員の人数を減らしたんだよ」
もっと違うところを減らせよっていう愚痴が強かったが。
「夜勤の人数を削る考えは正しかった。それは後のサービス改善でも、軸になったと思うよ」
凄く勘違いされる事であるから、もう一度。改めてだが、
「再配達がキツイ……というよりかは、再配達の業務で1日中働くシフトにならざるおえないから、キツイ」
朝早くから夜遅くまで配達するというのが、かなりの負担。
「夜の再配はキツイが1人でこなせる。2人、3人でやるのは簡単だが、金がかかってしょうがねぇ」
「本社からすれば1人でそいつをこなして、……なおかつ、朝から働いてくれるのが望ましいんです。利益のために」
改めて、夜の配達を専門として雇う考えもあったが、利益が出ない。あれやこれやと試してみて、どうして金が掛かってしまうのか。それには色んな要員がある。
「現場から改善する作戦としては、やっぱりサービス残業作戦だな」
「胸張って言わないでください、矢木さん」
サービス残業作戦。ちなみに現役です。
当日の夜勤担当者を朝から呼んで仕事をさせ、夜勤担当の時間になったら仕事を始めたと見なす作戦である。超強力である反面、担当の負担がハンパない。
そして、本部もこの作戦を活かすために
「活かすんじゃねぇよ!!」
再配時間などの見直しを検討するのであった。
「あ、いちお念のために言うが。この作戦でもそうだけど、残業で夜勤業務をしてるからな」
「本部はその夜勤業務を削るため、いろんなことをするんだわ」
何がキツくて、何がお金として掛かるか。
それを調べつつ出てきたことは色々あって、……配達件数と配達時刻、そして
「コールセンターに響く電話の数々」
ここまで大人しくしていた、コールセンターの隅田川にバトンタッチ。
「……色々な用件あるけど、夜遅くまでコールを開けてるせいもあったね」
当時を振り返ると、サービスが良すぎたくらいの対応である。21時過ぎまで開けていたのもそうだし、現在は夕方で締め切っている当日再配も、19:00まで対応。荷物の引き取りに至っては24時間営業。夜の業務は手当てつきもあって、
「夜の仕事を縮小しないとどーにもならんからな」
人件費がハンパではなく、便利なサービスであったが、利益が少ないあまりに廃止や見直しが成されたのは当然。その上、送料の値上げとくれば、お客様の不満はハンパではないのはしょうがない。
だが、事実。
わずかなマイナスどころか、大幅にマイナスだった。
会社も社会も、世界だってそう。
「平等って、儲からないし、運営は不可能で、あってはいけない事だ」
時間帯によって電車の混雑が異なるように、利用される時間帯や日にちによって、業務の量が変わっていくのは当然。そこに平等なサービスを持ち込むというのは、赤字のみならず、そのサービスに関わる人間に対して、とても差別的な言い回しかもしれないが
「このサービスを維持するには、人間扱いをしてはいけない」
「人件費の高騰は逆に、それまでの人間は価値が低かったことを示しているからな」
「それに不満があるって事は、嫌な解釈だが。人間に近づけるんじゃねぇーって事だな」
正直、この頃は人間扱いなどされていない。
ギスギスとした職場環境であり、殺伐としていた。




