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2021問題  作者: 孤独
13/14

2021問題M

「だーっ!!全然違ぇじゃねぇか!!ボケがぁぁっ!!」


ガアアァァンッッ



ヘルメットを床に叩きつけて、木下は会社へと帰還。

今回は客側のミスであったが、普段は同じ仕事をしている人間達がやらかすことだ。


「はーっ!終わった、ボケェェっ!!」


こんな感じにぶちギレてしまうのは納得が行く事。それくらいはさせねば、本人の毒となる。

他人のミスを一時ひとときとて、カバーするというのは、美しい友情や褒美でもらう金ではそう補えず。


ドゴオオォォッッ



「帰ってくんの、遅いわ!!この爺いぃがああぁぁっ!!」

「ぶほおおおぉっ!!?」


怒り狂った事を吐き出したかと思えば、今、怒り狂った事を自分に向けられる。これってパワハラやねんってツッコミも多いが、もはやここでは慣れたもの。

課長怒りのオーバヘッドキックが、木下の頭を襲ったのであった。


「車のキー返せやボケっ!!借りたつり銭戻してから、謝罪に行けや!!」

「ってーなっ!!戻ってからやろうとしたんだよ!!」


以前、配達証などの数を数えるといった事もしていると述べたが。それ以外にも当然ある。当たり前だ。

会社が用意している、車やバイクのキー。細かいお釣りに対応できるように、つり銭のご用意。これらはキッチリと返して、帰社してくれないと困る。

なぜなら夜の課長クラスは細かい備品のチェックも怠らない。また、翌日の午前指定などのチェックや準備も行なっているのだ。

ともかく、夜勤者は備品に至るまで、全て揃わないと困る。


「……それはそれとして、木下さん。7000円あるか?」

「は?新手の脅しか?屈しないぞ!」

「山口の奴が金を納めないで帰ってんだよ。代引きの7000円が足りてねぇんだよ!お前のチームの一員だろ!」


代引きのお金も、配達全業務が終了次第、会社に納める規則になっている。

そして、今のように金を納めないで帰る事も可能である。当然、


「俺は手持ちにない」

「課長が貧乏とはなぁ……ぷーっ、今までなんのために働いているのかね?」

「うっせーよ。子供ガキと奥さんのためだ。あんたもそうだったろう!」


会社が当日分に処理される金額分と差異が生じる場合。振り込むまで仕事はほぼ終わらない。誰かが払わなければいけないのだ。ちなみにこれが発覚するのは、夜勤者全員の勤務が終わった頃らへんである。このミスは会社内でも厳しく言われるので、気をつけよう。横領とか言われるぞ!


「ったく、しょうがねぇ課長だ。俺は後で山口に会う予定あるから、その時あいつからぶんどってやる。まずは、1万円を細かくするか(現金管理機で両替はできるぞ、あんまり良くないけど!)」

「分かった。じゃあ、おつりの3000円は俺が預かっておこう」

「ぶっ飛ばすぞ!!いい加減にしやがれ!!……それから、山口に俺から電話する」

「その前にキーとかをちゃんと返せ」


木下は舌打ちしつつも片付けをしている。その間に、課長は狡い事に木下に超勤時間を記入し始めた。まだ仕事をしているというのに、帰った扱いにしやがった。

一通り片付けを終わらせ、山口に電話をかける。


ビイイィィッ


「…………あの野郎」


さては、飲み潰れているのかと、疑う木下であったが。


ピッ


『おーぅ、遅いぞ。木下さん』

「山口!!お前、今日!現金を返金したか!?7000円足りてねぇって!」

『現金?』

「代引きがあったろう!この横領野郎が!!」

『あーっ……あーーーーっ!あったあった!返してなかった?』

「返してねぇーよ!俺が払う事になる話にされてんだよ!」

『すんませーん!今日担当の机の、引き出しに、金がないっすかね?』

「机の引き出し?」



ここで引き出しの中にお金はない……そう言って、本当に入っているお金をパクっても、木下達は疑われない。山口が全責任を負って首を切られるなり、減給されるなりする。

まぁ、連帯責任とか言って、上から面倒な視察がジャンジャン来るので、そんなことはしないが。


「おー、あったあった」

『パスの方はー』


現金を納める時にはそれぞれのパスワードが必須。これを他人に教えちゃったりすると、勝手にお釣りをパクられる危険性があるので、管理は徹底しよう。個人で言えば、銀行口座の番号とそんなに差異はないほど大事なものだ。



ガチャンッ



「おう。現金入れておいたからな」

『すんませーん、まだ盛り上がってるところなんで、急いで来てくださいよー』

「お前のトラブルのせいだよ!」



ピッ


仕事もようやく終わり。飲み屋に直行だ。


「じゃ、お疲れね。飲み屋で楽しくしてな。アルコールチェックにひっかからない程度にはしろよ」

「ちょっと待った。なんで俺の一万円を握っているんだ?」

「木下さん、金持ってるでしょ~。今日は飲み会なんて」


その前に、1000円10枚に両替した1万円をパクろうとする課長の手を掴んだ、木下だった。




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