2021問題L
ブロロロロロロ
「ちっ、なんでこの俺が他の連中のミスをフォローしなきゃいけねぇんだよ」
それはあんたが毎回のようにミスをするからなんだよ。
ミスしない人間はそんな事しないし、上から任されない。
仕返し感覚でやらせているんだ。
木下はバイクに乗って、寄り忘れた荷物を届けに行く。いちお、2件。
ピンポーン
現地に着いたら、ヘルメットをとり、頭を下げて荷物を渡す。
「申し訳ございませんでした」
「ああ、いいのよ。別に」
ここらへんは事情を言ったり、言わなかったり。ただ、お客様目線ではこの配達員がやらかしたとかしか思っていない事は良くある事だ。
会社内……もとい、業務の中身というのはお客様目線では分からず。人によっては、コールセンターを任されているお姉さん方を配達員と勘違いしている輩もいる。色んな仕事の細かな情報をお客様が勝手に決め付けていると、非常に対応が難しい。
分かってくれる必要はない。分からせるというのがとんでもなく大変だ。
ビイイィィッ
「おう、なんだよ!うっせーな!」
『木下さん。追加でもう一件寄ってくれ』
あともう1件というところで、課長から電話が入る。嫌な予感しかしねぇーなって。話を聞く。
『誤配回収だ。荷物を回収してこい』
「はぁ~~~?住所言えよ!」
『××町、○丁目…………』
「!……それは矢木が今日配達している地域だよ!!矢木に行かせろ!あいつ、飲んでるんだぞ!」
『仲間のミスは仲間がフォローしてください。というか、矢木がそんなミスするとは思ってないんですが?現地確認、ヨロシク!』
夜勤の時の電話というのは、……ぶっちゃけ、クレーム対応しかない。お客様が帰ってくるからこそ、そーいうのが流れてくる。
再配が終わったら、次は誤配回収かよって溜め息をつく。
「すみませんでした」
「ちゃんとしてください!」
自分が忘れた荷物ならしっかりと頭を下げられるが、人のミスを謝罪するというのはとても難しい事だ。
今回は少し怒られるだけで、お咎めなし助かったが。
「ミスしてんじゃねぇよ」
他人のミスを謝罪する。この仕事……もとい、この業務は大変だ。こんな業務を任されている連中の給与や待遇がいいのは納得できる。
いや、……ホントに……
ピンポーン
「すみませーん、誤配回収をしに来ました」
なんでこんな事をしなきゃいけないのか。
指定されたお宅を訪ねると、いかにも怒りそうな人間が現れる。
「テメェか、この野郎!!」
怒鳴りながら誤配した荷物を持って来て、玄関を開ける!!
「目ン玉ついてんのかぁ!?なぁ!!」
あーっ、この手のタイプってめんどくせぇーんだよなぁ。何がめんどくせぇーって、説明が大変なんだよ。話せば分かるって、死亡フラグの台詞を言ってやりたい。
呆れながら誤配された荷物を確認する木下。それでも止まらず、
「小学生のできる事だろうが!!テメェの仕事なんざよぉっ!!腐れてんだよ、テメェの脳みそはよ!死ね!!」
「すんません、すんません」
荷物の両面をチェックする。
「……あーっ」
配達地域によって任された担当がだいたい決まっている。
課長が言うように、矢木がそーいうミスをする事は少ない。木下だって、そーいう一面を知っているからこそ、半信半疑であった。この怒りようからして、だいたいなんでこんな時間に……。
怒り散らかす相手に、木下はもう……
「この荷物、俺達のじゃないんだけど」
「はあぁっ!?」
「ほら、ここに配送は○○××会社って、書いてるじゃないですか」
「……それで責任逃れようとするのか!?テメェっっ!!」
責任逃れでもなんでもねぇよ。
ストレートで伝えたんだが、聞く気ねぇーんだよな。
「だったら、なんでお前は謝罪したんだ!?お前と関わりあるところだろ!!」
「そりゃあ、回収なんですから頭下げるところから始まるでしょうが……」
「嘘をつくな!!」
「なんで嘘つかなきゃいけないんだよ……」
こーいうやたら元気な奴の相手は大変だ。




