2021問題K
ゴクゴクゴク……
「はーっ、木下はそろそろ終わるか?」
「なんだかんだ、問題起こす人ですが、そろそろ配達が終わってもいいかと……トラブルがなきゃいいですが」
「交通事故だけはマジで止めろよ」
当たり前の話であるが、昼と夜。どちらが交通事故を起こしやすいか、どちらが大きな事故になりやすいかは分かるものだ。夜勤のお仕事は必ず、安全確実が問われる。
◇ ◇
ピンポーン
「お荷物でーす!」
安心安全が問われているから。20時まで、現地で野球中継を観ながら車内でゴロゴロしていた木下。
20時になればすぐにお客様の元に行き、荷物を渡して、今日の仕事は終わり!
配達証の整理や車を戻したりなどの片付けだけである。
普通はこれで終わりだ……。
「戻ったぜ~」
現地から会社に戻って来た木下。夜の再配でご不在の荷物もいくつかある。それを戻したりなどの作業をしているところに
「お疲れ……」
「よー。……?」
なんか顔色の優れない夜勤を任された課長の顔に、木下は若干の覚えがある。
帰ってきた人間に対して、
「木下さん。あの荷物はなんなんだ?」
「は?……え?なんで、机に荷物置いてあんの……?」
その荷物はあまり大きな物ではなく、小さい品物だ。しかも、18時~20時の希望だ。
荷物の再配はいつも大きな籠に詰め込まれており、そこから荷物を取り出して、担当者が順付けをしていくわけだが……。
「ちゃんとチェックしろって言っただろうが!!」
「おー、悪い悪い」
その籠の中に荷物を置き忘れてしまうという事もある。正確に言えば、会社の中に置き忘れてしまうというチョンボだ。
「じゃあ、バイク貸せや。車出すのは面倒だ」
「テメェ!なにいつも通りの顔して言ってんだ!!反省しろよ!」
「それよりも先に荷物を客に届けるのが、優先だろ」
「これはお前の失態なんだよ!馬鹿野郎!」
配達員側からだと、籠の中に置き忘れ、荷物を道順に並べている際にどこかに置いてしまうなど。そーいうミスもあるのだが……。
「悪い悪い。客には俺から電話しておくからよ」
「さっき電話が掛かってきたんだよ!!ごらああぁぁっ!」
「はははは、俺様が謝罪するまでもなかったか」
「何様だ、テメェ!!」
課長として……というか、上司として怒るのは当然である。こーいう小さなミスを無くしていかないと、信頼は得られない。
このような場合、謝罪の電話はするものだ。しかし、だいたいのお客様は届けばいいので、怒らなかったりするものだ。
「また行くな~」
「しっかり仕事しろ!!」
小さい荷物を運ぶのは簡単だろうと思っているお客様が多いものだが。こーいう置き忘れや寄りミスを誘発しやすいので、案外嫌な荷物だ。
今回は会社に置き忘れたパターンであるが、車やバイクの中にあった事を忘れて、会社に戻って来てしまうパターンもある。再配の荷物の中には追跡番号の記載がない荷物があり、配達員個人が管理しなきゃいけない荷物もある。
また、追跡番号があるからといって、お客様や配達員がしっかりと把握しているとは限らない。担当の配達員が会社を出る前に入力を忘れていると、……再配依頼がされても、誰がそれを持っているのか、把握する事ができないのである。ちゃんと入力しろって、上は口煩く言うのも分かる事だ。
「まったく、木下さんは…………」
「あのー、課長……」
「なに?」
木下に怒った後に、申し訳なさそうに課長に声をかけたのは……。荷物を会社内で管理するところの人であり、再配以来やここで直接荷物を受け取る事を業務にしている内務さん。
「すんません、荷物の出し忘れをしてしまいました」
「お前のところもかよ!!?」
「ごめんなさい、お願いします」
再配依頼された荷物を配達員に渡す業務をするのが、この内務さんの仕事である。そこで出し忘れが発生することもたまにあり、彼等の大半は配達業務をこなさないため。
「木下ーーー!!テメェの地域の荷物だ!!ついでに寄ってこいーー!!」
「ふざけんな!!ミスした奴が行って来いよ!!なんで俺がこっちまで謝罪しに行くんだよ!!」
「ミスしたお前が調子乗ってんじゃねぇよ!!」
お客様への謝罪も宜しくって、配達員に渡してくるのである。
「あの。私達の方は、その……19時~21時の荷物なんで、今から出れば、間に合うかと……」
今揉めてたら、間に合わないかもと、20時半に思う。




