2021問題A
2021問題……。
これはとても大事な問題であり、これからの社会を左右することだろう。
ピンポーン
「○○さん、お荷物届けに来ましたー」
「遅くまで大変ねー」
「判子かサインをお願いします」
2021問題。
再配希望時間、20~21時枠の問題についてである。
2021年に関わる地球や国の問題ではないし、そんな大袈裟な話ではない。だが、平民ぐらいの者達にとっては生活基盤の1つかもしれない。これはただただ関係者達の愚痴やエピソードなどを元にした話しである。
◇ ◇
「20時以降、めんどくせぇ~~~」
だったらその希望枠を無くせばいいだろう。そう思うかもしれないが、こうして利用者がいる以上なんとも言えないのが現状である。
今日の夜間配達員である木下は、17:39分にそんな言葉を漏らした。
「頑張れよ、夜勤者」
「夜勤者って言ってもな!俺、7時から働いてるの!!早く家に帰りたいの!」
「会社近くに住んでいるからいいだろ」
現在は夜勤者という担当がいない事の方が珍しくない現場。こうして、日勤勤務の人間が夜の再配の仕事をこなすのである。
「じゃあ、行ってくる」
担当する地域が広がるため、基本的にはベテランや中堅が担う。土地勘がないとちょいと難しいが、希望された家だけを回ると考えると、業務負担はかなり軽かったりもする。土砂降りだと悲惨だが。
20時以降の希望がある中、木下は17:48分に出発。現地に着くのは18:00頃だろう。18:00~の希望を回っていく。
「さー、木下に任せて帰った帰った!」
「……でも、可哀想ですね。20時の希望とか止めればいいのに」
森橋がそんなことを言うのは、まだまだこのメンバーの中では日が浅いからだ。先ほどのように、日勤勤務の人間が再配の仕事をこなす関係上、20時以降の荷物があるだけでかなりの労働時間にもなる。
「ははは、昔は20時以降は全然OKでしたよね。矢木さん」
「そうだったな。懐かしいな、実。森橋、上手くサービスを提供するって簡単じゃないんだぜ」
「……ちょっと訊きたいですね。昔の、20時以降の希望枠とかのお話」
そんな前振りから始まる、2021問題のお話。
「じゃあ、昔話でもしながら飲みに行きましょうか」
「山口親子も誘おうぜ。隅田川ちゃんも呼べたら呼ぼう」
◇ ◇
2021問題のお話しの前に、現在と過去では大きく違う事をご承知して欲しい。
まずなによりの違いは現場で働いている人数が違っており、考え方もかなり異なっている。
今でこそ、現場は人手不足と嘆いているが、昔は人手が多かった。今働いている人間には信じられないが、夜勤者が2人勤務というのも珍しくなかった。
20時~21時という枠は、お客様のために作られている枠だと言っていいし、当時からすればさほど問題になっている話しじゃない。
ゴクゴクゴクゴク
「はーーっ、仕事終わりの一杯はいいですね」
「だな」
近所の居酒屋に入って、飲みがてらの昔話。
まずはトップバッター。配達員の立ち位置からのお話を矢木からするのであった。