Guns&Sorcery:銃と魔法の物語
日々の生活から脱出したい
そう願った男が、新大陸に移民する
だが夢は果たされず、男は歴史に消えていった。
ここ、ユーラフリカ大陸から新大陸に移民する。
貴族の既得権益にがんじがらめの、息苦しい旧世界からの脱出だ。
新大陸は、移民当初は先住民のエルフと手を取り合って協力していたがある時点でいきなりエルフが狂暴化し移民を襲いだしたと報告されているが、どうやら…エルフへのだまし討ち・詐欺行為・略奪・婦女子への暴力行為を繰り返したため反撃され排除されたらしい。
それでも融和を解く、和エルフ、つかまって奴隷に落とされた俘虜エルフ、あくまで対抗する荒エルフに大別されるらしい。
先住民は、獣人が一番多く次いでエルフ少数のドワーフが確認されているらしい。
移民側が、ヒューム族=所謂人族が主流で一部ドワーフが混じっている。
そんな新大陸では、旧世界で主流の軍用弾の0.38インチでは効果が薄く0.44インチが主流になっている。
すぐに入手できるのは4インチバレルの"市民"、運が良ければ6インチバレルの"軍用"、コネが無くては入手できない8インチバレルの"騎兵"。
元々各社がばらばらに作っていた弾薬も、標準を規定し0.44インチの弾薬を40グレインの火薬で撃ちだす.44-40という弾薬を.44"政府"と定めた。
18インチバレル装着とグリップをショルダーストックに交換したレボルビングライフル、管状弾倉をバレル下部に装着した連発ライフル、ストック内部に管状弾倉を埋め込んだ旧式連発ライフルなどのピストル弾を使うライフル。
強力なライフル弾が撃てるがブリーチブロックのトラップドアを開けて一発ごとに排莢、装填と手動で行う軍用ライフルこれは.50-70"政府"実包を使う強力なライフルだが元込め式とはいえ単発銃なので多くの敵がいる場合や一撃必殺の相手じゃないと不利になる。
それに補給が困難な奥地に向かうんだ、同じ弾薬を使えるレバーアクションライフルかレボルビングライフルがよさそうだ。軍放出が手に入るだろうしな。
頑丈な4足竜の4頭立ての箱馬車を入手し次第出発するか。
ここ新大陸は北を統治するドルイド王国の植民地「メイプル領」、移民の窓口「連邦」、連邦から奴隷の国有化を要求され分離した「連合」、そして南部を領有する「シルバニア」、大陸中西部を維持する原住民の住む「未開地」。
5つの領域は戦争こそしていないがお互い隙あらば征服を狙いあうほど仲が悪い。
そして国境はお互いが相手国を認めていないので未確定という状況でうかつに移動すれば犯罪者になる恐れがある。
種族ごとに、地域ごとに争っているが誰が正しく誰が悪いなんて決めつけられない。それぞれに言い分がありそれぞれが相手に対し罪がある。
新大陸は開拓地で、法律すら効力があるのはそれなりの大きな都市だけだろう。治安判事と呼ばれる絶対権力を与えられた司法官が定期的に巡回しているが開拓集落で犯罪者が出ると私的制裁が唯一の解決策扱いだしな。
自治体が雇う「保安官」、領主が派遣する「護民官」、そして国が巡回させる「司法官」がこの大陸の治安を守る人たちだ。
保安官は雇用する自治体によって「村落保安官」「町保安官」「都市保安官」その上部自治体である郡が雇用する「郡保安官」は合同捜査の時に指揮を執るが上司ではなく同格の地位と認識されている。
「保安官補」は不定で一人もいない村落もあれば複数いる村落、シティーシェリフのように2桁のアシスタントがいる例もある。
護民官は司法面より武力面が期待され、軍が派遣されない規模の村落の警備をよく担っている。
司法官はすべての保安官の上位に位置し、司法官が滞在中は保安官は司法官のアシスタントとして補佐する規定がある。
司法権はないが、住民が編成した「自警団」も治安維持の一助として機能している。
臨時に編成される「防衛隊」という制度もあるので、かなり小さな開拓集落でもガバメントなら入手に困ることはない。むしろ食料が入手しにくいだろう。
だから俺は軽快に動ける騎乗を選ばず、補給品を持ち運べる4頭立ての箱馬車を手に入れようとしているんだ。
幌馬車だと入手が容易だが、食料品を持ち運ぶと野獣を引き寄せる可能性が強くなる。
4足竜の引く箱馬車だと、頑丈なキャビンを野営時の居室にできるし。食料の匂いをまき散らし野獣を呼び寄せる可能性も減る。そして4足竜を餌にできるほど強力な野獣はいない。
どこに所属するのか、じっくり見てから決めよう。多分北部の連邦か南部の連合になるだろうな・・・メイピーは宗主国のドルイドの影響が強すぎるしシルヴィーも旧大陸の強い影響を受けている。旧大陸の制度を嫌って移民したのに旧大陸の影響を受けた地域に住みたいと思わないしな。
未開地なら国を作れるかもしれないが、ノンヒュームの領域だから争いごととセットになる宿命だ。
消去法でユニオかコンフェになるだろうと思う。.50"ガバメント"ライフルと.38の6インチバレルじゃ長く生き残れそうもないが、いざという時の予備に持っていきたいから弾と火薬と雷管、弾頭も仕入れておく。撃ち殻を回収しておけば再装填できるしな。
さてと…国で紹介された何でも手に入る商会に向かうか。「マッコイ商会」っと…
「欲しいのは.44ガバメントの6インチ以上と同じ弾を使うレボルビングかレバーだな?」
「それと.38と.50のブリット、Bパウダー、小型ピストルニップルと大型ライフルニップルも追加してくれ」
「ほう?手持ちもリローディットする気か?.44はいらんのか?」
「忘れてた!一応それも追加してくれ」
「パウダーひと樽10ターレル、ブリットは10ポンドで1ターレル、ニップルは5ポンドで1ターレルだ」
「.38と.50を20ポンド、.44を10ポンド、ニップルは各10ポンド、あと2樽のパウダーをくれ」
「29ターレルだな…」
「マッコイさんよ、銃のほうはどうなっている?」
「まぁまて…ん?……」
「運がいいな、8インチバレルのキャバリエが手に入った。軍の正式採用から外れたレキシントン・モデルアーミーだ。軍正式のコルストに比べると手入れが難しいがな」
「あとは30インチバレル、14発装填できる.44マンチェスターライフル、キャバリエが10ターレルマンチェが25ターレル。70払うなら5ターレルの.44を二箱つけよう」
「100出すから.44を10箱!」
「…よし、10箱つけよう」
ふう….44が500発、.38が100に.50が35発ってとこか。とりあえず次は箱馬車だな。
幅が12フィート、キャビン長が36フィート。居室が8フィートで荷室が28フィート。居室のドアと荷室の引き戸との間に水の樽が吊り下げられる。屋根の上にキャリアーが付いているからそこにも荷物が載せられる。
よく調教された4足竜が4頭、当座の保存食も積んだし冒険の始まりだ。ただし箱馬車に800、4足竜が350×4…手持ちの全財産だった3000ターレルは準備だけでほとんど消えてしまった。食料や着替え諸々も入手したからあと500も残っていない。
戦争こそ、起きていないが一触即発のこの大陸。軍の傭兵や、集落での警備に商人の護送…とりあえず、旧世界からの輸入品を奥地に運ぶだけで金になる。
悠々自適と欲張らなければ、日々の金を稼ぐのは苦労しない。移動しつつ.50で野牛を狩って、散弾銃で野鳥を撃ち落とすことで食料を調達し。獲物や輸入品を町で売って特産品を買い取りまた町へ戻る。
荷馬車隊と合流し、奥地に向かうのはこれで何度目だろう?ユニオもコンフェも関係なく商売に向かう今の生活は悪くない…戦争さえ起きなければな。
たまに襲撃してくる荒エルフを撃退しつつ「今日は東に明日は西に」と旅を続けてきたが、拠点をそろそろ決めておきたいものだ。
ん?前が騒がしいな、どうやら襲撃があったようだ。獣の群れが襲い掛かってきた!
統制された動き、肉食獣と草食獣が連携している…これがうわさに聞いてた獣人か!.44ですら当たりが浅いと毛皮ではじかれちまう。
ローディングゲートから1発ずつ撃ち殻を押し出し、弾倉が空になったら1発ずつ装填してく必要がある。ライフルはマンチェスターなので機関部左下のローディングゲートから次々押し込めば再装填できるのが救いだな。ちぃ!とっさに予備の.38を目に撃ち込むと獣人は悲鳴を上げ崩れ落ちた。
どれぐらい時間がたったのだろう、手持ちの弾薬ケースはすべて空っぽガンベルトにあと何発残っているのだろう…次の襲撃は撃退できないかもしれない。
トテトテトー、トテトテトー
ラッパの音が聞こえてきた…あれは、たしか軍に属さない機動兵団である"騎兵隊"のラッパのような気がする。助かったのか?…今のうちに装填をしておこう。あとベルトに.44が14発、売り物に置いておいた弾薬箱が3つで150発。竜も怪我はないようだし、馬車も問題なさそうだ。
もう若くはない、旅商人のまねごとを続けていくのは無理だろうな。河港のある、ポートミーシャの町に着いたら定住しよう。店を構えて町で暮らしていこう。そのためには生き残る必要がある、俺の旅はポートミーシャで終わるようだ。
西部劇風作品を書いてみたくなった。