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し、せ、ん、が、い、た、い☆


***


「恥ずかしい…死にたい…いや、死にたくはないけど…うわぁ…」

「支離滅裂だね」


にっこりと張本人が言うな。


ルイを睨み上げるがどこ吹く風。鉄壁の守りを崩せる日は来るのだろうか…。


呻き声を上げながら自己嫌悪に陥っているのは、当然屋敷でのことです。もう、恥ずか死ぬレベルの羞恥心が襲ってきてる。

遂に声に出てしまったのだが、返ってきたのは元凶から。こうなってる原因ルイだから。君だから。


あ、馬車には私とルイの二人だけなのでリアナたちは聞いていないよ。だからこうして本音を言っているのデス。

絶対二人きりにさせたい的な考えがあっただろうけど、結果オーライということで。心の内に溜めるより、今ここで発散したかったからね。


でも元凶がニコニコしているのは少し腹立つ。


「私がこうなってるの自分が元凶って分かってる?ねえ。何で笑っているの?」

「私が原因で悩んでいると思うと嬉しくてね」


会話が成立しない…

もうなんでそうなるのかと考えるのさえ面倒になってくる。


ブルーな気分が更にブルーになっていると、のすんと何かが頭上に乗った。


「ん?」


今、明らかに重力がかかったよね。

でもルイが何かしたわけでもなさそう。表情的にどっちかっていうと驚いているような…


え、まさか変なものでも乗った!?鼠とか!


『鼠とは失礼なことを考えるのぅマリー』

「ティーナ!」


懐かしい声に叫ぶと、ふよふよと目の前に飛んできた。

その表情が何となく拗ねている感じがするのは気のせいではないだろう。


…なんで私の思考が分かったんだろう。


「ティーナ久しぶりだね」

「麗しき光の女王。お久し振りです」


私たちが挨拶をすると、その端正な顔を顰めた。

どうしましたか?


『む?久しぶり、なのか?もしかして精霊界に行ってから百年ぐらい経って…』


ちょっと待って何でそうなる。


「違うよ。一週間ぐらい?かな」

『なんじゃ、それぐらいしかたっておらんのか。驚かせおって』


驚かせたのはティーナの方だが。


半目で見ていたら、割と本気で焦っていたのかほっと息をついて見せた。珍しい。


いやいや、なんで久しぶりで百年に飛ぶの。久しぶりでそこまで飛ぶかーい。一か月ならまだわか…分からないわ。

そもそもで百年も経っていたら私たち多分あの世へ逝ってるよ。生きていたとしてもよれよれのおばあちゃんですわ。

この姿のまんまだったら幽霊とか人外だよ。


…ツッコミ疲れた。ツッコミの疲労で倒れることってあるのかな。あるんだったら控えよ。


無理な気しかしないわ!はっはっはっ!


「…そういえば、精霊と人間の時間間隔はかなり違うんだっけ」

「あ、そっか。だから久しぶりだと、人間の一世紀分になるのか」


ルイの一言に納得する。


時間間隔が違うんだったら、まぁ分からなくもない。

だけど私たちが少女のままでいられるのは物理的に無理だから。そこは考慮しようか。


「ところでティーナ。精霊界に行っている間、私の様子は見てた?」


多分見ていたんだろうな。光の女王ならそれぐらい出来そう。

私から聞いてあれだが、とんでもないお叱り三回目が来そうで怖い。

ティーナは女王だから体罰もありそうで尚更。偏見を多分に含んでることはご了承を。


しかし、予想に反して首を横に振った。


『むー。それが出来なかったのじゃ。どうも精霊界と人間界の間には特殊な結界があるようで、お陰で別れてからのマリーの行動が見れんくて非常に残念なのじゃ』


へー。世界の境界には結界が張られているのか。結界は魔法を通さないのかな。

でも、特殊と言っていたから普通はそれで干渉不可になることはなさそう。


ほわほわと考えていると、ルイが疑問気に言った。


「ですが、妖精での王の地位があるものは世界を越えて魔法を使えたはずでは?」

『そうなんじゃよな~。だから何の心配もなく向かったのじゃが…予想外じゃった。妾がおらんかった間に危険とかなかったか?』

「!」


置いてけぼりにされていると、いきなり例の件に触れて心臓が飛び跳ねる。


断固として知られてはならない。知られた瞬間に長い長い説教と、多分体罰がやってくる。それだけは阻止しなければならない。


この間0.5秒


「あっt」

「何もなかったかなぁ!」

『そうか。それなら良かった』


ルイの声に被せるように言う。


あっぶない。あと少しでばれるところだった…。


語尾が強くなってしまったけれど、不自然には思われなかった様。

うんうんと満足げに頷くティーナの尻目にジト目のルイを見つめる。


その目は何言ってるの、と言いたげ。あと、反省してないのかと改めて怒りそうな雰囲気がある。

…これ絶対に暴露するよね。ぜっっっっっっったいに暴露するよね!


(お願い、言わないで!本当にこれ以上は勘弁なの)

(……)


し、せ、ん、が、い、た、い☆

伝わっているか分からないけど、何となく呆れている気がする。


もう一度、必死に目に力を込める。


(あとさ、ティーナが自分が居れバーッて落ち込むかもしれないし!)

(…分かった)


仕方がないと言いたげに頷いたルイに安心して、ティーナとの会話と再開する。

…大丈夫だよね、やりとり出来たよね?病みが入ってるルイを信じるしかない。


会話は更に進む。


「ティーナは向こうで何をしてきたの?」

『他の者への仕事の引継ぎが(おも)じゃの。他の王へも伝えなきゃならぬから、そこそこ時間がかかってしまったのじゃ』

「…それって大丈夫なんですか?止められません?」

『ふふん。日頃の行いが良かったからの』

「どや顔ですね…」


ええと、つまり…


ティーナも私と暮らすってことかな!?


「王が二人も住むとか冗談じゃないのですが!?」

「うお!?」

『ぬお!?』


口調が崩れてますよ、女王様。

ルイもなんか猫が一瞬崩れた、的な?素が一瞬見えた気がする…


私といるときずっと、猫を被ってるんだよね。ミライの時は一人称が“俺〟になって、今も少年らしい言葉だった。

…なんか寂しいなぁ。私は素を出しているのに、ルイは四六時中猫を被っている。これはちょっと、本当にちょっと、ちょっとだけ寂しい、のかな?


でもルイにもルイの事情があるのだろうし、何も言わないけど。


ていうか私今、とんでもない事言ってしまったのでは?折角誤魔化した事実を明らかにしてしまいそうなレベルの。


「あ、あー。王が住んでるっていうのは…」


一度言ってしまったからには否定はできない。かといって、「監視です☆」なんて正直に言えない…。

で、何も言葉が浮かんでこない。どうしよう。困ったぞ。


ルイも初めて聞くはずなので…


いや、知ってるな?


そうだ。盗み見しているからある程度は知っているはずだ。その天才的な頭脳で、見ただけでも分かるはずだ。


ということで助けて、ルイ!某アニメの主人公みたいになったけど気にしないで!


懇願の目を向けると、


「……事実ですよ、光の女王」


裏切られた。あと終わった。


『…誠か?』


信じられないのか問うティーナにルイは力なく頷く。


「本当です。信じられないかもしれませんが、本当の事なんですよ」

『…ええ。ちなみに誰かは…』

「竜王様です」

『なんであの気難しいじじぃが住むことになるの』


お知り合いでしたか。てかじじぃて。


「言い方言い方。…リュウ様――竜王様が」

『今リュウ様と言ったかの?マリー』


やらかし大臣ここに極まり。


…ついいつものノリで言っちゃうんだよ―――!私の馬鹿―――!


「えっと、なんていうか…」

『あーよい。大体は察せたからの。…よもやマリーが愛梨(まり)だったとは…』

「ちょっとティーナこっち」


ぐいっと引っ張って馬車の隅に寄らせる。

文句か何か言いそうなティーナに目を合わせると、怯んだように口を閉じた。

どうやら自分が思っているよりも厳しい目になっていたらしい。


『な、なんじゃ…』

「…ルイがいるところで、絶対に愛梨(まり)の名を出さないで」

『ぬ?その言い方…マリーは前世の記憶を持っているのか?』


心底不思議そうなティーナに頷いて見せると、形の整った眉を歪めさせた。

…なにかおかしい事でもあるのか?


『ふむ…前世の記憶を持たせて転生か…ありえる、のじゃろうか?』


なるほど?


「普通はあり得ないことなんだ」

『原則はな。しかし、何事にも例外はあると思うのじゃが…』


言葉を濁したティーナは、これ以上言う様子はなかった。

しかし、前世の記憶を持った状態での転生が異常と知れただけ良しとしよう。


「兎に角、ルイに前世の事を言わないでね。知られたくない部分もあるから」

『了解なのじゃ。しかし、どうして記憶をもって…?』

「それは転生させた人に聞いて…」


私が知ってるわけないじゃないか…


『そうじゃな、今度会ったときにでも聞いてみるか』


コソコソ話していると、思わぬところから爆弾を落とされた。


「あー…実は私知っているんだよ。マリーが転生者で前世の記憶を持っているって」

『「なんですと?」』

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