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転移とは…


「どうしたんだ?」


いやどうしたも何も、紫音(シノン)の方々が消えておるのですが…

あ、もしかして見間違い?あはは、そうだよねー。単体の転移なら存在すれども、集団で何て、無理が――


この言い訳の方が無理あるね!ファンタジーか!


「あ、あのリュウ様?何故か紫音(シノン)の人がいなくなっているのですが…?」


いなくなるというより消えたの表現の方が正しいのだろうけど。


微妙に引き攣った表情で尋ねると、納得がいったようにリュウ様は頷く。


「すまん、転移させる前に一言いえばよかったな。紫音(シノン)の人がいなくなったのは【集団転移】…まぁ転移魔法の一種だ」


…集団転移?


なんだ、それは。

転移というのは予想とあってはいたけど…。原則、転移魔法は一つの物体しか同時に出来ないはずだ。

何故全員が転移できたのだろう?


そんな私の疑問が顔に出ていたのか、丁寧に説明を始めてくれた。


「今回私が使ったのは【集団転移】。文字の通り、複数の対象を転移できる。消費魔力は多いので神格をもつ者しか発動できないが、便利であるためよく使う。よく使うといっても数時間は開けないとならないから、連続で使う奴は化け物だ」


最後ら辺のはちょっとしたジョークかな。


しかし、解説はありがたいのだが、神格といったものが分からないな…。

ううむ…乙女ゲームの知識があるからと怠けないでしっかり情報収集する必要があるみたいだ。


「神格とはなんですか?」

「神格は、神に与えられる階級みたいなものであり、称号の一種でもある。階級なだけあり、神格の中でも階級分けされ、神格持ちでも強さにはばらつきがある。ただ世界の中での上位者であるため、誰もが国一つは余裕で滅ぼせる実力者だ。…他に質問はあるか?」

「大丈夫です。ありがとうございます」


お礼を言い、内心で納得する。


なるほど。神に与えられるということは、数はあまりいないのだろう。だから転移は一つだけという常識がある。


…リュウ様も使えるということは、神格持ちで凄い強いんだね。


知ってたけど。


だけど世界で有数の実力者だと思うと体の震えがとまら――


そこまで考えて、ふとある可能性に気付いた。


もしかして、ミライとかは持っていたりするのだろうか。

最後、意味不明な姿のくらませかたは、確実に転移だ。気配の消え方がそれである。

問題なのは、一人ひとりが行使したのか。それともミライが【集団転移】を使ったのか。


もしも後者だとしたら…


ツ…と嫌な汗が背中を辿る。

今回は本当に運が良かった。どれか一つの要素が欠けていたら、きっと今生きてはいなかっただろう。


…強くならなくては。全員を守れるように。誰かを頼らなくてもいいように。


「……」


拳を握りしめた私をじっとリュウ様が見ていたが、それに気づくこともなく私は次の疑問に移る。


「ところで、どこへ転移させたのですか?」


リュウ様はすぐに答えなかった。

不思議に思って首を傾げると、ゆっくりと口を開く。自然の動作であったため、答えを考えていたのだろうと、特に気にせずに目の前の話に集中する


「…住処の方に返しておいた。マリが大切にしているあの二人の子も届けておいたが…迷惑だったか?」

「いえいえ!むしろ助かりました、ありがとうございます!」


後を考えると、うるさいやら面倒やらで地獄だったんで…と言おうとして、望み薄なことを尋ねる。


「その【集団転移】って私でも使うことはできますか?」


多分無理だ。空間系の魔法は基本、風属性に属している。光は回復、及び結界の役割を持つのだから。

ダメもとで期待していなかったのだが、少し試案の後にゆっくりとリュウ様は頷いた。


「…修行を積めば、出来ないことは無いだろう」

「本当ですか!?」


え、本気で言ってますか?嘘じゃないですよね?やっぱ無理とか、期待させては駄目ですよ?


「ああ。転移自体は無属性だ。風属性が転移と言われるようになったのは、使っていた者の属性が風が多かったからだろう。だから、魔法自体は地道にやっていけば、十年後ぐらいにはできるようになるはずだ。基礎魔力量が多いから、神格なしでも使うことは可能。元々、魔術の衰退による処置での神格だからな。一応誰でも使うことはできるようになっている」

「へ、へぇ。そうなんですか」


適当に相槌を打ちながら、目を遠くへ向ける。


…もう、ダメだ。リュウ様の言っている事の後半が理解が出来なかった…。

え?理解する努力しろって?誰ですか、そんな無茶を言う人は。


現実逃避をして精神を立て直し、理解のできた範囲での確かめをする。


「十年もかかるんですか?」

「必要魔力量が高いからな。…まぁそこの王太子さんなら数年でできるのだろうが」


ちらりとリュウ様の視線の先を辿ると、ルイと視線が交差する。即座に逸らした。なんで一瞬であったのかもう考えない。


「…確かに出来そうですね」


色々人間離れしているルイなら。


「如何せん、魔力が5000必要だからなぁ」

「!?」


な、ん、で、す、か、その数字!?


絶句し、相槌を打つ余裕さえない。


魔力についての説明をすると、まず。

普通の貴族で、何も鍛錬しなければ大体100。下級魔法を20発ほど打てる数字。

した人。もしくは家系で元々強い人ででその三倍の約300。このあたりから中級魔法が使え、大体強い人と呼ばれる。

そして、魔導士と呼ばれる国お抱えの魔法使いが、確か500ほどだったはず。上位魔法が使えるのはその中でも10%。%で考えると少ないけど、10人で一人と考えると割と多い方だろう。国によっては一人もいないこともあるらしいし。


つまり、どんなに強い人でも500辺りが限界なのに、その10倍が必要なんだねぇ!?


それは人外だろ!いやリュウ様は人外だったな!!


一瞬宇宙を幻視していると「回復」というリュウ様の声。


「よし、魔力も回復したしマリを屋敷に送るか。王太子は家な」

「…なんだか、私の扱いに悪意を感じるのだが?」


その前に魔力回復についてツッコミませんか?


…乙女ゲームをしたことがある人ならわかると思うけど、ゲームのストーリー中に試練が発生して、必要なLOVE値的なものががあるんだよね。ちなみにこのゲームでは好感度。ありきたりですね。


それでLOVE値を溜めるにはゲーム内の体力を消費したバトルをするのだけれど、体力って基本一分で一ぐらい回復するんですよ。


そして魔法を主題にしたゲームなので、体力ではなく正確には魔力と言います。

魔力はおそらくこちらの世界の魔力と回復速度は同じなので…


「失礼でなければ、リュウ様の魔力量をうかがってもいいですか?」

「9500だ」


再び宇宙を見た。


***


「おっと…」


いきなり視界が変化したことにより、少しふらつく。隣にルイはいない。

きっと、言った通りに家へ帰したのだろう。


「…うん、しっかり公爵家」


周りを見渡し、自分の屋敷であることを確認する。

出てきた場所は応接間だった。


ところでしっかり公爵家ってなんだろう。自分で言ったのに意味が不明だ。言語不自由民ですかね?


あと、何故リュウ様はルイや私の屋敷、そして紫音(シノン)の住処について知っていたのだろう。竜王だから知っているのかな。いつも世界中を見ているのだ―…的な。


…すごい中二臭くなった。あれ、私この世界の影響受けてる?いや、そんなまさかね…。


でもヤンデレが関係ない人まで伝染してるのを考えると否み切れない…。


そんな馬鹿なことを考えていると、背後から圧を感じた。

ビクッと振り返ると、ゴゴゴゴゴゴゴという音が聞こえてきそうなぐらいの覇気を纏ったリュウ様が仁王立ちしていた。


「さて、マリは覚悟ができているかな…?」


…怖い!まって、笑顔なのに怖いのですが!


さっきまで怒って無かったですよねぇ!?あれですか、戦場から去ったのでこれから説教ですか!?


いやだぁぁぁぁ!リュウ様の説教怖いです!着々と詰められているような感じで、本当の死を錯覚するほど殺気に満ちてて怖いんですよぉぉ!


内心で絶対に口にすることのできない絶叫を盛大に上げていると、じり…とリュウ様が一歩詰めてくる。


「まずは、このことが起こった原因について考えようか?…あぁそうだ。一人で参戦した理由についても聞いておきたいな?相手の心理について知るのは大事なことだから…」


な?とこわーいこわーい笑顔で尋ねるリュウ様に私は…



取りあえず逃げた。【身体強化】も駆使した全力ダッシュだ。



なんで転生してからこんなことが多いんだろうね。本当に泣きたい。私何も悪いことしてないのに。

ツッコミは受けつけません。




ちなみに鬼ごっこは秒で捕まえられて、その後地獄を見ました。生きていることにとても感謝しました。

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