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圧倒的覇者

舞う砂ぼこりが目に入りのも気にせず乱入者を観察する。


現れたのは、大柄なおそらく男。そしてそれに抱えられて飛んできたと思われる黒ずくめの二名。

その全身が黒い装束に覆われた二人には気配に覚えがあった。


どこかとは分からないが、記憶にあるので味方のはずだ。だが…


ちらりと大柄の方を見やる。

一目で高級と分かるような豪華に装飾されたマント。それに光に反射して輝く、漆が塗られたように黒い長髪。背中に竜特有の翼があることから、竜系統の種族であることは間違いない。

竜人族だろうか?存在はするとは学んだが、人間の状態で一部を竜化なんてのは聞いたことがない。

しかも私の知り合いにいない。つまり、敵か味方か完全に判断が付かない。


一体この人は何者…?


「あなたは一体…」

「「マリー様!」」


!?


「え、リュウ様のとこに行かせた二人!?」

「「はい!」」


顔を見るとすぐにわかった。あの朝早くににも上ってもいない時間に私を起こして、その腹いs――なんでもない。兎に角にもリュウ様のとこへ派遣した人たちだ。


「…ん…」


私たちの大声に、気絶していたルイが身じろぎをする。

そして、僅かに目を開けた。焦点のあっていない瞳は何を見ているのかは分からない。


「……」


一瞬でピントが合いました。


ハイライトのつき、キラキラエフェクト全開モードになったルイは、男をガン見で硬直している。

背後からまぶしいぃぃぃ!と叫ぶ声がした。きっと間近にいて目をやられたんだろう。分かる、慣れないとキツイよね、うんうん。


だけど離れた所からも聞こえるのは流石としか言いようがないや。


静かに目を覆っている二人とその他大勢様に内心合掌しつつ、どうしたのかとルイに尋ねる。


「どうしたの?」

「…いや、え、ええぇ」


答えは答えになってなかった。意外な一面にちょっと驚いたのは内緒だ。完璧超人な人でも動揺することはあるなんて思ったのは、内緒だ。


しかし、一体何がそんなに衝撃を与えるのだろうか。


これは、ルイだけじゃなくてミライも。じりじりと後退しているのが信じられなくて、思わず「誰」と呟いてしまう。


「あ、はいあの方は竜王様です」

「え?いや、今のはミライを茶化して今何て言った?」

「どこからが質問でしょうか?」


うん、そうだよね。ノンブレスで言ったからね。


……???


「…え、竜王様?」

「はい」


そこから少し長い説明が始まったのでまとめると。


曰く、竜の森に踏み入ったらいきなり転移した

曰く、転移した場所が竜王の目の前で、二人は死を覚悟した

曰く、殺されず歓迎されて、突然竜王に乗せられてここまで飛んできた


…なんじゃそれ。つっこみどころありすぎませんか?


えっと、竜王様って竜の王で、通称竜の森と言われる樹海に住んでて…階級的には神様と同等の人じゃなかったっけ。


なんでそんな偉くて凄い人がここにいるの!?


「何で!?」

「私たちも聞きたいのですが!?」


ポンと…名前…えと…ク……(あ、思い出した)クロスが、女の人の肩に手を載せた。その表情はとってもにこやかな笑顔。


「…姐さんだから」

「…そうですね」


悟りを開いた人の顔ってこんなんなんだろうなって感じた。

さりげなく失礼なことを言われた気がするのだが…多分気のせいだ、うん。


ていうか、竜王って…


「え、リュウ様?」

『は?』


敵味方問わず疑問の声が響いた。ちょっと何言ってるか分からないです、的な感じの声。

気持ちはねー凄く分かるよー竜王様を『様』を抜かして言ったら不敬罪もんで極刑だよねー


私も最初は凄い衝撃を受けたものだよ、あはは。


そんな絶句している私たちに気付かないで、リュウ様は振り向いて多分今まで見た中でもトップクラスの笑顔を浮かべた。


「…久しぶりだな」

「あ、はい。お久しぶりでございます……じゃないですよね!?え、なんでここにいるんですか!?というか竜人族なんですか!?」

「おお…思ってた通り質問がたくさんある…」


細い目が僅かに見開かれる。それだけでも、昔を思い出したようで、嬉しくて涙が出そうになった。だけど、今は戦場。そして先ほど二度と油断しないと決めたのだ。

泣かないまいと、ぐっと堪える。


リュウ様は、それを察したのか分からないけど、なんだか少し困ったように眉を下げた。


「…本当に、変わったんだな」

「え?」


小さな声は、あたりが静寂していたのにかかわらず私に届かなかった。

反射的に聞き返すが、帰ってきたのは無言の笑み。そして、マントを翻しミライと再び相対した。


「…さて、よくもマリーに手を出してくれたな。覚悟はできているだろうな…」

「…っ」


威圧的な声。自分に向けられたわけではないと分かっていながらも、背筋が凍る。

どうやったらこんな温厚な人をここまで怒らせることができるのだろう。どんな失敗をしても、少し説教したら次への注意とアドバイスをして終わりな人を。


周りを見渡すと、ほかの人たちも血の気の引いた顔をしている。

グリム、ウサ耳執事も青ざめさせ、だけど臨時戦闘態勢を…とっていない?


愕然とした。


如何なる場合でも戦闘態勢は取っていなければならない。

それは誰であろうと、戦うことに縁があるものであるのなら当然の事。

常識とかそれ以前の問題だ。


それほどまでにリュウ様は強いのか。いや、確かに竜王だからおおよそ()()が簡単に倒せるものではない。


うさ耳執事さんは髪の隙間に手を忍ばせ、時折うなずいてグリムとアイコンタクトを取っていた。


逃げようとしているのだと気づいた。

たった一者の介入でここまで戦況が覆った。


先程とは反対の構図。だけど、素直にうれしいとは思えなかった。

悔しいとは似て異なる感情が、なんとなく心の中にある…感じ。


多分だが、私は自分自身を不甲斐ないと感じている。また誰かを頼らないと生きていけないのか。私はまだ、力が足りないの――いや。これ以上考えるのはやめよう。


また思考が変になりそうだ。自分自身の制御さえできなくなる前に、思考を切らなければ。


そんな風に考えていたら、チッという舌打ち音とともに炎柱が立った。


「!?」


急いで口元を抑えようとして、全く熱くないことに気付く。

熱風であるはずなのに肌が焼ける感じもなければ、息苦しさもない。私の知識と、全てが当てはまらない。


…これは、魔法で生み出した熱ではないのか?


どういうことかと状況把握をする前に、ミライたちは去った。

同時に、幻影のような炎も消えた。


理解不能な現象に呆然としていると、ルイがすくっと立ち上がりリュウ様に詰め寄った。

そして胸ぐらをガッと掴んだ。


「!?」


な、何をやっているのかなぁ!?あの皇太子は!


私の絶叫知らず。ルイは殺人をするかのような目でリュウ様を睨む。


「る、ルイ!リュウ様になんてこと――」

「貴様、マリーとどういう関係だ?何故知っている」


最早敬語さえも使っていない。

え、ルイは一応王子だから竜王については知っているよね?なんで自分の首を絞めるようなことをしているのかな?


少しジト目で見守りつつも、おそらく戯れだろう。剣を抜きそうな気配はあるけど、リュウ様が相手なら心配する必要性は何もない。


だからと言って許すわけにはいかないので。


「はいー。ルイストップねー」

「…マリー」


そんな子犬のような目で見てもダメです。

ルイは私が止めたのが解せないのか、今度は私に噛み付く。


「マリー、竜王とはどういう関係なんだ!?姿を見せず、住処には虫一匹も寄り付かせない相手と、どうして親しげなんだ!?」


そんなこと言われても…


小さくため息を吐き、軽くリュウ様について説明をする。


「リュウ様は下町の方で一度会ったことがあって――」


しかし、する必要な無いというようにリュウ様は手で制した。

更にむくれるルイさん。


「説明は後ででいい。今は戻るのが先だろう。ほかの者の手当てが最優先だ」

「わかりました」

「……」


不服な様子のルイだが、言っていることは最もであるので渋々という感じで頷く。


「では、私は怪我をしているひとの回復をしてきますね」

「いや、その必要はない」


は?


「えっと、最優先なんでしょう?ならすぐに…」

「マリーはそろそろ帰らないとまずいだろう?」


あ…


さああぁぁ…と血の気が引いていく音がした。勿論私だ。


しっかりと正面から行ってきたが、かなりの時間がたっている。何か言っていても、間違いなく怒られるだろう。しかも内容はリアナからお父様たちに伝わるに違いない。


と、そこへ何やら足音が聞こえてきた。急いでいるような慌てているような…


ものすっごい嫌な予感がするのですが。


いや、もしかしたら違う人かもしれないし。1チャン言い訳して罰を逃れられるかもしれないし。


「マリー様!」


あ、終わった。


やって来たのは息を切らした、予想通りリアナだった。

完全に詰んだと、絶望で目を遠くに向ける。


違う人だったらいいなとか思っていた。そしたらどうにかなったかもしれないから。

だけどリアナが来たらダメだ。諦めよう。うん、無理だ。


諦めて目線を合わせる。驚愕やら様々な感情が混じった色。

目を限界まで開け


「リアナ…」

「はぁぁぁぁぁ!?なんでここに竜王様がいるんですかぁぁぁぁぁ!?」


まぁそうだよねぇぇぇ!そっちに先目が行くよねぇぇぇぇぇ!


だけど説明を求めるように見ないで!私だって知らないから!


ブンブンと首を振り、知りませんアピールを全力でする。

リアナは額に手を当てて何やらぶつぶつつぶやいた。


「いや、マリー様だから。今までもよくわからないことがたくさんあったじゃない。私は赤い悪魔と呼ばれて女なのよ。これぐらいで動揺しちゃダメ…」


言葉は聞き取れなかったけれど呆れているのは分かる。

地味にイラっと来たが、私は大人な対応ができるので笑顔で隠し通す。


「はっ!それよりマリー様、何故何も言わず行かれたのですか。おまけにお召し物も汚れて…!先程まで響いていた爆音も気になります!一体何はがあったんですか!?」


ど、怒涛の質問だー。

折角出した笑顔が引き攣るのが分かる。

更にリアナは言おうと口を開き――リュウ様に止められた。


「そこら辺でやめてやれ。マリーは仲間を守ろうとしていただけだ。説教をする時間も惜しい」

「分かりました」


素直に頷いた。しかも即答だ。ねぇ、私の時は絶対にそうはいかないよね。


「あれ、そういえばどうやってリアナはここまで来たの?場所が場所で分かりづらいだろうに…」


私の疑問に、なんてことないとリアナは首を傾げた。


「普通に案内人を用意しましたが」

「いや、そんな人いなかったでしょ?どうやって…」

「そこにいますよ」


は?


指された方を見ると、確かに人はいる。血まみれで蹲って見るからに瀕死状態だ。

それにしてもどこかで見たことがあるような顔だな…。血だるまなのにそう感じるのはきっと、前見た時も多分こんな感じだったからなのでは…


…まさか


「リアナが以前血まみれにした人!?」

「間違ってはませんが語弊しかないですね」


どこが。語弊もクソもないだろう。そのまんまの意味だ!


「この人を拷問しながら(に尋ねながら)ここまで辿り着きました。此奴(コイツ)初めて役に立ってくれました」


一言一言が余計過ぎません?君


「それはともかくも。説明は屋敷に帰ったら、しっかりさせてもらいますからね。まったく本当に、次から次へと問題を…」


リアナの私に対する態度が段々雑になっている気がする…


「では撤収作業はギーアたちに任せて…って、あ」


気絶してるじゃん。


「あー…どうしたものか…」


名ばかりの組長の私は何も出来ないんだよなぁ~…

少しは勉強しておこうと思いながら、一番適任な人物を振り返る。


「リュウさ――」

「【集団転移】…なんだ?」

「…」


え?

あの、は?ええと…


目を向けたよね、私。リュウ様に頼もうとそっちに視線を行かせたんだよね。


だけどなぜ


紫音(シノン)の方々が消えてるんですか?

バレンタインは…17日に投稿予定です。

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