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二つの魂


私が言うと、ティーナの表情が一気に明るくなった。正直演技だと疑うレベルで。

…演技じゃないよね?


『そういってくれると信じていたのじゃ!』


あざとさに負けだ自分が憎い。だけど可愛いから仕方ない。

自分の中で謎の言い訳をしつつ、にこにこのティーナを恨めしげに見た。


『どうしたのじゃ?そんなに妾をみても何も出んぞ?』

「…なんでもない」


まさか純粋な目で見られると思ってなかった。精霊の女王なんだから歳かなりいってるはずなのに。

と思ってたらティーナの笑顔が途端に暗くなった。


…え、何。凄い怖いんだけど


『…のおマリーベルよ。今なんと思った?』


読心術でもあるんですか。


「なんも思ってないよ」

『そうか。まさか妾を歳の食ったおばさんなんてマリーベルが思うはずないなあ?』

「そんなわけないじゃないですかー」


あははほほほ


笑い声が響く。

だけど私の表情は引き攣っていたと思う。もう冷や汗かきまくり。

…女性に歳の事を聞いてはいけないというのは世界共通なんだね。心にとどめておくよ。


「…ところでティーナはいつからいたの?」

『うむ。このリンクのついている赤子にあった時じゃな。リンクの目を通してマリーベルを見つけ時は面白い魂に強い魔力に惹かれ契約を結びたかったんじゃ。それにこの頃暇じゃったしな』


最後のが本音かな?ていうか


「え、赤子って誰?」

『赤子はそこの上級精霊と契約を交わしている奴に決まっておるじゃろう』


…ルイの事だった!?

ぎょっとして振り返ると、苦笑いを浮かべていた。


「私たちより遥かに長い時を生きているからね。精霊にとっては人間全員が子供なんだよ。私のような歳なら尚更。確か歴代の王らの日記に『また精霊に小僧と呼ばれた』という愚痴が記録されている」


そんな記録も残っているのか。その王がちょっと気の毒かもしれない。

ていうかルイよく知ってるね。どこで知ったんだろう。


「私はいつも暇だからね。書庫の本をすべて読んでいたんだが、その中に日記も混じっていたんだ」


この人も読心術持ってるのかな?なんで私の疑問分かったんだろう。しかも全て読破ってやば。絶対難しい本もあったはずなのに。

いや、それはそうと…


ティーナをもう一度凝視する。眉をひそめながら口を開こうとしてーールイの方が早かった。


「光の女王様、魂が面白いとはどういうことですか?」


そこだ。見事に私が気になったことを聞いてくれた。

黙って頷く。

ティーナはきょとんとした表情になった。


『気づいていなかったのか?この者の魂は二つある』

「…っ!」


ドクンと鼓動がひときわ大きくなった気がした。

もしかして転生のことを言っているのではないか。愛梨()のことを知っているのか。


「…それはどういうことですか?魂が二つというのは一体…?」


もう一度ルイが尋ねた。リオンも不思議そうな表情で窺っている。

どうやら私以外は言っている意味が分かっていないようだ。


…よくよく考えたらそれもそうだ。転生なんて実際に起きるまで考えたこともなかったんだから。分かるはずもない。


「…よかった」


もしも転生と考えられてたら、誤魔化しやら色々と面倒になっていた。


「マリー、何か言った?」


げっ


「何も言ってないよ」

「そうか。良かったって聞こえた気がしたけど気のせいか」


地獄耳か。私誰にも気づかれないようにしたつもりだったんだけど。

病んでるから?病んでたらどんな声も逃さないってか?

自意識過剰だけど本当にそう思えてくるから怖い。


一人内心で怯えていると、ティーナも首を傾げていた。


『妾もしらんのじゃ。こんなのも見るの初めてなんでのお…何でと聞かれても分からんのじゃ』


知らないんだ。


「光の女王様でも知らないんですか…」


そうつぶやいたまま、ルイは喋らなくなった。顎に手を当てて考える姿勢を取っているから知っている限りの可能性でも出しているんだろうな。


絶対出るわけないけど。ていうか出てほしくないけど!


「ま、いいじゃん。魂が二つなだけであとは普通の人と同じなんでしょ?」

『そうじゃな。あとは普通の人よりも魔力が多いことぐらいじゃ』

「……」


魔力は多いのね。これも悪役令嬢ラスボスだからかしら。

思わず笑顔の状態で固まっていると、考えがまとまったらしいルイが顔を上げた。

だけどその表情は浮かない。


「…ごめんマリー。私の知識では分からなかった。もしかしたら父上は知っているかもしれない。一度聞いて――」

「別にいいよ。気にしてないし」


答え知ってるから。

ていうか調べないでほしい。知られていいことなんて私にはないから。


だけどルイは納得がいっていないみたいだ。


「だけど――」

「正直二つあるからって何の問題もないよ。私細かいことは気にしないから」


全然細かくないけど。問題ならすでに起こってるけど。


ツッコんでくれる人が誰もいないので自分でツッコんでしまうという悲しみ。自分が痛い人に思えてくるよ。


「…マリーがいいならいいけど」


よし、下がってくれた。心の中でガッツポーズをする。

だけど…


ルイを見る。

頬を膨らましていた。


絶対これ納得してないな。


「…ルイ。私を信用してる?」

「勿論」


即答かいな。

でもこの調子ならどうにか誤魔化せよう。ちょっと恥ずかしいけどここは腹をくくるぞ。


むっちゃ恥ずかしいけど!!


「ならルイ私を信じて。二つあっても私は私だって。もしも調べるんだったら私を信じてないって思ってもーー」

「そんなわけがない!何もしないと約束しよう!」

「お、おう」


食い気味のルイに引いていると、ティーナのにやにや顔が視界に入った。


「…ティーナ、何でにやけてんの」

『青春じゃなあと。若いとはいいもんじゃ』

「……」


これ、私もルイのことが好きって勘違いしているのかな。だとしたらルイがいないときに説明しよう。今はややこしくなる。

というかルイが確実に堕ちる。ルイがラスボス化する。


「…ところでリオンには精霊がいないの?」

「いませんよ。多分知らないので説明いしますが、精霊と契約を交わせるのは稀です。精霊がその人の事を気に入ったら結んでくれるんです。精霊と契約をしたら魔力が倍以上になるのですぐわかりますよ。精霊の階級にもよりますが」

「全員に精霊がいるわけじゃないんだ。ありがとう」


ご丁寧にも解説までしてくれた。危うく勘違いするところだったので、非常にナイスである。

ところで…


「なんでリオンは今敬語なの?いつもは毒舌タメ口なのに」


その瞬間、空気がピシッと固まった気がした。

…私なんか不味った?


そんな私の予想があっていたのか、不穏な雰囲気が隣から伝わってきた。ルイだ。


「…ほお?リオン、ちょっと話し合おうじゃないか」


更に頭上からも。


『ふむ…。妾のマリーベルにタメ口じゃと?いくら魔眼もちでも許せんのう…』


迫ってくる二人(?)にリオンもたじたじだ。一歩一歩と下がっている。


「いや、そんなことは…」

「そうか。でも私は君よりもマリーを信頼しているのでね。きっとリオンは本当に無礼を働いたんじゃないかな?」

『そういうことじゃ。なんじゃ小僧とは気が合いそうじゃの』

「光栄です。ではともにこのリオンを締めませんか?」

『乗ろう』

「ちょ、待ってください!?なんか膨大な魔力が見えるのですが!本気で殺しにかかってますよね!?」


二人は何も言っていない。

徐々に遠ざかっていく三人を見ながらこっそり手を合わせておいた。


「君の犠牲は忘れない」

「そんなこと言ってないで助けてくださいよ!…あ、この魔力量本気で死んだ。というかこの二人に攻撃対象にされている時点で終わってんだよな」


そんな呟きの直後、リオンの悲鳴が響き渡った。


***


「…本気で死ぬと思った」


ぶすっとした様子のリオンが腕をさすりながらそう言う。

だが笑顔の御二方が精神を折にいく。


「殺すつもりだったから」

『滅するつもりじゃったからな』

「……」


リオンが引き攣った笑顔になった。うん、私はなんとなく感じていたぞ。

そんな彼らを、私は机に突っ伏した状態で見ていた。そして先ほどの出来事を思い出した。


リオンが追い詰められていたあの時。冗談だと思って笑っていたのだが、なんだか嫌な予感がしたので、二人が魔法を撃つと同時に回復魔法を当てた。別に何もないなら私の魔力を消費するだけだから特に問題もないからね。


だけどあの二人本気マジで撃ったんだよ。信じられないよね?だけど本当なんだよ。

私の回復魔法と即死の攻撃を食らったリオンは瀕死の状態で生き延びることに成功したからセーフなんだけど。


ともかく、すぐにまた回復させてリオンの意識が戻ったんだが…いや、本当に危なかった。

また浮かんだ冷や汗に体を震わせ、未遂で終わったことに安堵の息を吐いた。


あ――こんな体験もう二度としたくない。


ぐでーとしていると、ルイがやってきた。


「マリー大丈夫?」

「あーうん、一応…」

「魔力の使い過ぎかな?【ハイヒール】連発だったよね」


頷く。


「多分そう…」


実は私、【ハイヒール】を使えるようになりました。日ごろから練習してきた甲斐がでたのです!

そんなわけで使ったのだが…普通にぶっ倒れた。魔力は大量にあるのだが、疲労とはまた別だ。頭がぐわんぐわんする。


それと、これとは別に一つ理由がある。


「心労かなぁ」


これしかないね。今回の事件は精神を削られる案件だった。笑えない冗談を止めるってどんな罰ゲームなの。

だけど肝心の本人に私の苦労は伝わらなかったらしい。


「…疲れているのなら癒そうか?」


うん、知ってた。こういうのって大体本人には伝わらないよね。

取りあえずすぐに医者を呼ぼうとするルイを止め、再び攻撃されそうになったリオンを庇ったりとそのあとも色々大変だった。



…だれか普通の感性の人きてよ

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