王太子の実力
「…マリー、聞いても良いかい?」
どうも、マリーベルです。
今私は父様にすっごい目で見られてます。何が凄いかって?…疑いの目です。というかお前がやったんだろ(自分の中で解釈したので結構荒っぽい)って確信してる目をしてる。や、やんのかこら!
「何でしょう?」
「国中の病人や重傷者、負傷者が治った。原因は分かるかい?」
「存じ上げませんね。」
首を傾げて、少しばかり眉を寄せる。簡単な分からないという顔の出来上がりだ。
……そう、作り物だ。
「そうか。では戻って良いぞ。」
「失礼しました」
パタン
「…マリーベル様、本当のこと…」
「言ってないわ。というか言えるわけがないでしょう。」
溜息をすると、隣で同じように息を吐いているリオンがいる。両者考えたことは同じのようだ。
あの時私が唱えた魔法。すっかり記憶になかったので失念していたが、ヒロインが使う魔法だ。ただの属性魔法であるはずがない。
【ライト・オブ・ヒール】は広範囲…大体国一つ分の範囲内にいる者を無差別で癒す【神大魔法】だったのだ。ちなみにヒロインが使った場所は戦場です。味方を全員回復させてました。…味方全体をいやしていることから推測出来ましたね。はい、反省してます。
でも私は悪くない。むしろ国に貢献した!何も悪いことはしていないよ!
当然隣にいたリオンには私の仕業と知られた。どうして発動出来たとか、どうして知っていたのだとか色々聞かれたが、何かいう前に私は気を失ってしまった。魔力枯渇らしい(byリオン情報)
後から聞いた事によると、私はその時間は寝ていたことになっていたみたいだ。理由は、普通にベッドで寝ていたから。リオンが運んでくれたのだろう。お陰で疑われることはなかった。ナイスです!
更に幸いな事に、家族の全員が異常事態に忙しかったので、気絶した事も、私が魔法を使ったことも知られなかった。メイドにもだ。本当にリオンがナイスすぎる。
「…取り敢えず、当分は“光”属性ということは隠そう。」
「来年にはバレるけどね」
「本気で国外に逃げようかなぁぁぁ。」
もうやだ、この世界。
「それはやめて下さい。国が滅びる」
「ねぇ、なんで?何で逃亡しただけで我が国が滅びるの?」
「違うって。俺らの国だって」
俺らの国…リゾークフィル王国?
え、なんでそんな大国が滅びるんだ。
真面目な顔で聞くと、半目で見られた。解せぬ。
「いや、イグルイ様が怒り狂って八つ当たりでやっちゃうんだって。」
「八つ当たりで国を一つ沈めるってどんな力があるの」
「冒険者のランクでいうと…Sぐらいかな?」
コノヒトナニヲイッテイルノカナ?
Sランクは、冒険者の中では上から二番目。ちなみに、SS、S、A、B、C、D,Eの七段階で分けられてます。
勇者が大体そのぐらいって言われています。
「え?それって勇者レベルじゃん。新手の冗談かな?そうだよね?」
「希望を打ち砕くのは心苦しいけど、本当なんだって。お願い、現実を見よう。」
ふふっよく分かったね。私はいまとても現実逃避をしたいよ。……あのランプ綺麗だなぁ
「マリーベル様?おーい。…あっだめだ。これあかんやつ。」
「もうどうにかなれよぉ…」
「まあまあ、今回のは事故みたいな──」
「とりあえずどうにかしよう」
「切り替えはっや」
めそめそと言っていたが、立ち止まっているだけなんて性に合わない。取り敢えず…あれ?どうすれば良いんだ?
目標は庶民。というか王妃になりたくない。
「…リオン、私が婚約破棄するように動くのは不味い?」
「別に構わないよ?国が二つ三つくらい滅んでも良いなら」
「よし分かった。その考えは無しにしよう」
この世界には八つの国しかない。半分ぐらいになってしまうなんて何の天罰だ。
つまり、私は王妃にならないといけないらしいが…。
「…ルイの方から破棄してもらうように動くか」
「何でそうなった!?」
「いやだってルイから嫌われれば良い感じに纏まるでしょう?」
「でしょう?じゃないって。それ本気で実現可能って思ってる?」
「思ってる」
おいこら、なんで今こいつダメだみたいな顔をしたんだ。こちとら真面目な話、庶民になりたいんだって。その為にはルイとの関係を断たなければならない。その考えに至るのは当然だ。
「…何故そこまで王妃になりたがらないの?女性なら誰もが憧れる地位なのに」
「んー…私あまり地位とか興味ないからなぁ。ぶっちゃけると庶民になりたい」
「ぶっちゃけないでって。…えっ、庶民?」
「うん。庶民っていいよね。庶民ラブ」
「貴族の筆頭となる公爵家の令嬢だよね?なんでそうなった」
信じられないというように見てくるリオンには分かるはずがないだろう。今前世云々を言えたらどれだけ幸せなことか。まあリオンに言っても冗談だって笑われるのが関の山だろう。
ここで上手な世渡りの術。必殺!微笑む!
「……。」
「何その胡散臭い笑顔」
あれ、可笑しいな。前世は全てこれで乗り越えられたのに。主に失敗した時とか。他人に擦りつけるときとか。……私最低か。
ちょっと今世では良いことをしようと思った。
「吹っ飛ばすよ、ガキ。」
とりあえず罵倒してうやむやにしちゃえ☆
今さっきあれこれ言ったけどリオンは別だ。ここ重要。
というかこの会話前にもあったような…?
「ねえ俺の方が明らかに年上だよ?それにもう十三歳だし!」
あっ、あれだ。初めてあった問いにあった会話だ。あの時もガキって言い合ってた。
…っていうか十三歳ってまだまだ子供じゃん。
「いやまだまだ子供だよ。イキリキッズか。」
「ごめん、言っていることが理解できない。」
「理解する努力をしなさい。」
「なんで俺が責められないといけないの。あとさ、マリーベル様って六歳なんだよね?考え方とか色々、年より上な気がする。」
「そんな…ソンナコトナイヨ?ワタシ、六歳♡」
ぶりっ子ポーズをしてみた。可愛い可愛い美少女だから問題ない…と思う。リオンが微妙に引き攣った顔をして後ずさったのはまぐれだ。そう、たまたま相手が悪かっただけで…。
嘘です。少し自分でもキモいと思いました。
「って今はそんなことを話している場合じゃなくて。」
「そうでした。聞きたいことが。何故魔法を使えたのですか?あと、あんな大規模な回復魔法ってどこで知ったのですか?」
あーそうだった。…本当に面倒。どうやって言い訳しよう。
乙女ゲームって事をリオンに言うか?でもそしたらルイに伝わるだろうし…。
「ええと、書物で読んだことがあって…」
「魔法の常識も知らなかったのに?」
「うぐっ」
痛いところを突きやがった。ほんとそういう無駄に鋭いの求めてないから。
「……ちょっと夢を見たんですよ。」
「ほお?」
「一人の女の子が手を組んで、お祈りをするように、【ライト・オブ・ヒール】って言ったんですよね。そこで夢は終わりです。だから一つだけ知っていたんですよ」
「嘘だね」
……断言された!?えっ、そんなに私分かりやすい?確かにリアナにも嘘はすぐバレるけど、仮面は得意としてる方なんですが。
あと既視感を感じる。あれだよ、リアナの時の流れと殆ど一緒。
「え?なんでそう思ったの?」
「だってそれが本当なら最初からいえばいいのに。言わなかったってことは今考えたんでしょ?それに見ただけで魔法を初見で発動できるとかありえないよ。コツを知っていたから出来たんだよね?」
名探偵だ。名探偵がここにいる。
多分引きつった笑顔になっている私に追い打ちをかけるようにリオンは笑う。
「それに敬語だったし」
「私の馬鹿ぁぁぁあ!」
なんで通常口調で話さなかった!
ほんっとうにどうしよう。まさかの前世話す人第二号?いや、そんなの一人だけで十分だよ。
こうなったら秘密で突き通してやる!
「言いません。人には言えないので言えません。」
「どうしても?」
「どうしても。言っても絶対に信じないし、頭を心配されるから」
「大丈夫、元々マリーベル様の頭は心配してるから」
「おい、どういう意味だこら」
とことん失礼な奴だな。様付けで呼んでくれてるけど、絶対に内心では敬ってないよね。私を何だと思ってるんだ。
咳払いをして、仕切り直す。
「…取り敢えず、誰にも…いえ、リアナには話したけど、公に出来ない事情があるの。勿論父様にも内緒。知ったらショックを受けちゃうから。いい?」
「…そこまでいうんだったら深くは追求しないよ。だけど、イグルイ様も今回の件について結構気になってるから九割の確率でマリーベル様に聞きに来ると思う。」
「何で?」
「マリーがやったんだって確信してる」
「ねぇ、なんで私だって思うの?アリバイだってあったのに」
いや、実際に私がやったんだけどさ。だけどどうして私に矛先が向くのか理解が出来ない。
…思い出したんだけどさ、“マリーベル”って闇属性だった。今回の流れで、完璧に使える魔法まで思い出しました。
え?病み属性の間違いだって?ほっとけ。だけどどう考えてもおかしい。“私”が転生したことによって、何か変わってしまったのだろうか。




