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SSSSs  作者: 年越し蕎麦
・無分類
9/47

カスタネット職人

 カスタネット職人の彼は今日も元気にカスタネットを作っている。

 青色と赤色、二つを合わせてカタタンカタタン。そんな彼のもとに、お客さんが一人やってきた。

「もし、カスタネット職人さん。このカスタネットは、どうしてこんなに小さいんだい」

 彼は手を止めて、お客さんに返事をした。

「子どもが叩きやすいように、小さくしているんだ。この町は、子どもが多いからね」

 お客さんはなるほどと頷いて、カスタネットをカタタンと叩く。そうして得意げな顔して小さなカスタネットをもとに戻した。

「けどね、大人もたまにはカスタネットを鳴らしたいんだよ。こんな小さくちゃあ、思う存分、鳴らせないな」


 カスタネット職人の彼は今日も元気にカスタネットを作っている。

 青色と赤色、二つを合わせてカタタンカタタン。そんな彼のもとに、お客さんが一人やってきた。

「もし、カスタネット職人さん。このカスタネットは、やけに大きいようだが」

 彼は手を止めて、お客さんに返事をした。

「大人でも思う存分叩けるように、大きくしたんだ。この町は、はしゃぎきれない大人が多いからね」

 お客さんはなるほどと頷いて、カスタネットをカタタンと叩く。そうして得意げな顔して大きなカスタネットをもとに戻した。

「しかし、これはちょっと硬すぎるんじゃないかね。力の弱いお年寄りなんかは、鳴らしづらいんじゃないか」


 カスタネット職人の彼は今日も元気にカスタネットを作っている。

 青色と赤色、二つを合わせてカタタンカタタン。そんな彼のもとに、お客さんが一人やってきた。

「もし、カスタネット職人さん。このカスタネットは、外側が柔らかいんだね」

 彼は手を止めて、お客さんに返事をした。

「お年寄りが少しの力で叩けるように、柔らかくしたんだ。この町は、か弱い人が多いからね」

 お客さんはなるほどと頷いて、カスタネットをカタタンと叩く。そうして得意げな顔して柔らかいカスタネットをもとに戻した。

「だけど、か弱い女性にこれじゃあ似合わないよ。一見派手だけど、青色と赤色だけじゃ面白みがないもの」


 カスタネット職人の彼は今日も元気にカスタネットを作っている。

 カタタンカタタン。そんな彼のもとに、お客さんが一人やってきた。

「もし、カスタネット職人さん。このカスタネットは、随分といろんな色がついているみたいだ」

 彼は手を止めて、お客さんに返事をした。

「女性が好んで持てるように、綺麗な色をつけたんだ。この町はお洒落な人が多いからね」

 お客さんはなるほどと頷いて、カスタネットをカタタンと叩く。そうして得意げな顔して綺麗なカスタネットをもとに戻した。

「けれど、最早こうなると鳴る音がつまらないな。カスタネットって、この音じゃないと駄目なのかい?」


 カスタネット職人の彼は今日も元気にカスタネットを作っている。

 そんな彼のもとに、お客さんが一人やってきた。

「もし、職人さん。これは一体、なんなんだい?」

 彼は手を止めて、お客さんに返事をした。

「それは、カスタネットだよ。きっと、カスタネットなんだ」

 お客さんはなるほどと頷いて、カスタネットを叩くこともなく、そうして得意げな顔して鼻をふんと鳴らした。

「たとえこれがカスタネットだとしても、こんなのは嫌だね。カスタネットの良さが、一つもないんだから」

 

 カスタネット職人の彼は、今日も元気にカスタネットを作っている。

 青色と赤色、二つを合わせてカタタンカタタン。そんな彼のもとに、お客さんが一人、やってくる。

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