表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSSSs  作者: 年越し蕎麦
ペリドットの義眼
23/47

またはムーンストーンの義眼

 東の太陽は、夜になるとひょいっと姿を消す。

 大体、夜の六時くらい。昼間は緑色に光り輝いている太陽が、徐々に光量を柔くして、そして突然いなくなる。代わりに、西の空に控えめな白い光を宿す月が現れて、おかげで真っ暗闇は避けられるのだけれど。ただ、その月も、ひょいっと姿を現しては、朝の六時くらいになると同じように消えてしまう。そして太陽が出てくる。

「お母さん、太陽って、一体どこから来てどこに行くのかな」

 私にとっては月より太陽の方が身近な生活をしているから、ある日、不思議に堪え切れなくなって母に訊ねてみると、

「私より、太陽に訊いた方が早いわよ」

 にべもなく返され、それもそうかと思い至る。じゃあ、太陽がいなくなる間際、あの空に向かって叫んでみよう。

 街の外れの高台に登って、六時まで待つ。どんどん緑色の輝きが弱くなってきて、空の端から本来の黒さが滲み出してくる。寒さを伴ってやってくる夜は、もうすぐだ。

 やがて、ふと、木の実がぽとりと落ちるように、太陽が黒色に飲まれて消えた。

 西に現れた月を尻目に、私はすかさず叫ぶ。

「太陽さあん! どこに帰るのーっ?」

 反響しているこの大声は、果たして、誰の耳に届いただろう。私の声が返ってこなくなった頃、駄目だったかも、と諦めながら溜め息を吐いた、ら。

 丸い形の、下半分だけ。

 鈍く弱々しい緑色の光を発する太陽が、闇の中、消える前と同じ場所に存在していた。

 あ、目が合っちゃった。

 心のどこか、頭の片隅でそう思って、半分だけなのは眠たいからなのだと何故か直感して、「ご、ごめんなさい。なんでもないの」小さく謝った。すると、とろとろと半眼が、今度こそ、夜闇の瞼に隠され消えた。

「そっか、あそこが家なのね」

 問いに対する答えは、どうやらずっとあそこにあったみたいだ。

おやすみなさい、おはよう、太陽と月にそれぞれ挨拶をして、私はすっきりした気分で、足取り軽く家路に着くのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ