表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSSSs  作者: 年越し蕎麦
・お題制
21/47

(お題:他人を書く)

「笑顔がかわいい」

「それで?」

「本人にとったら腐るほど言われてきた使い古され迷惑な言葉かもしれないけれど、名前もかわいい」

「それだけ?」

「ばっかお前、名前がかわいい人間なんてこの世にごまんといるだろうけど彼女の場合は違うんだ、聞けよ、苗字もかわいいんだ」

「ふうん」

「柔らかいんだよな、音が。漢字もだけど。ふわふわしてる感じ。漢字だけに。俺みたいな古風な名前してる奴からすると、めちゃくちゃに素敵に思えるよ」

「ふうん」

「芋羊羹とパフェだな」

「あたし杏仁豆腐」

「お前のことはどうでもいいよ、荒削りされた鰹節みたいな声しやがって。いいか、彼女は声も素敵なんだ。とても落ち着く声をしていると思わないか? カフェオレみたいだ。抹茶か、ココアでもいい。とにかくホッとするんだな。そしてハッとする。彼女、意見がハッキリしてるんだ。きっと大人しいだけじゃない」

「チーズフォンデュね」

「チョコレートフォンデュだよ! 髪の毛見たら分かるだろ、さらっさらの黒髪! 知ってるだろ?」

「知らない。あなたさっきから外見ばかりね。中身は?」

「優しい」

「うん」

「明るい」

「うん」

「絵がうまい」

「うん?」

「俺には到底できない物事の見方を持ってる」

「それはあらゆる他人にも言えることだわ」

「じゃあ何を言ったらいいんだ、俺と彼女は他人だぞ。身内にしか分からないこと言ったら怖いだろーが」

「あなたそれでいいの?」

「ああもちろん。ただ俺は、真正面から彼女の笑顔を見たことがある。それだけで充分だと思わないか? かわいい笑顔だった。カフェオレみたいな声をして、チョコレートフォンデュみたいな髪が後ろに流れてて、クッキーみたいなはきっとした笑顔で俺と少し言葉を交わした。そんなのは、彼女をもとから知らないあらゆる他人からしたら、とても大きなことだ。そうだろ?」

「あなたって、割れてない生卵と同じ」

「うるさい、お前なんか不躾なフォークだ」

「あたしお腹が空いたわ」

「ふん。パスタでも食ってろよ。ずるずる食ってろ」

「そうするわ」


 ずるずる、ずるるっ。ずる。ずるり。

 ごくん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ