僕はギャグアニメになりたい
ギャグアニメになりたくて二年五組、三階の窓から飛び降りてみた。
ただ飛び降りたんじゃなくて、僕はギャグアニメになりたい、とエコーがつくくらい叫びながらそれはもう物凄い勢いで窓枠から飛び出した。お昼の掃除時間に流れる陽気な歌は僕が宙から落ちてくときも陽気だった。
途中まで大人しく掃き掃除をしていた僕の唐突な行動に、いつもは箒でチャンバラごっこをしている友人まで呆然と窓を見ていた気がする。約十七年の人生で人間が自ら落下していく様なんて、見たことがないに違いなかった。
そして、その時の友人たちの表情は伺い知れなかったけど、これだけは言える。僕だけが笑っていた。あの場で、僕だけが、たぶん世界中の幸福を抱き締めたみたいな笑みを浮かべて落ちて行った。
それで、地面に激突するまでの僅かな時間で、これだけは叫んでおこうと思った。
「ギャグアニメになりたぁああああい!」
トチ狂った話だと思う。自分で言うのもなんだけど、凄く可笑しな話なんだ。
でもさ、そう思うってことは、つまり。
僕は確実に、正真正銘、ギャグアニメになれたと思うんだ!
病院の個室で包帯にがんじがらめにされた僕が無事だった顔を笑顔にしてそう言い切った時、友人たちは持ってきた花束をぐしゃりとさせた。
「俺たちにとったらシリアスアニメだったよ、クソ野郎」