6 グライアス・リリアーナ
この子の名前はグライアス・リリアーナ。
この名前が頭のなかに浮かんだ時に理解した事実がある。
それは、この世界が乙女ゲームの世界であることだ。しかも、私がお金だけ払ってプレイしていない作品の。題名は確か……『ローズcharm』
で、リリアーナはその作品の主人公__の敵役。悪役令嬢なのである。
私がこのゲームを買ったは発売してから1年くらいしてからだった。存在は知っていたが、大学受験もあり終わるまで買わずに我慢していた。ゲームができないならせめてネタバレでも……!と日々、攻略キャラからモブキャラまで公式ホームページに載っているキャラを調べに調べあげていた。各キャラの大まかなシナリオはチェックした。
だからもちろん、リリアーナのことも調査済み。
リリアーナの家は裕福な公爵家。父親は仕事ばかりして娘のことを見ず、病弱な母親はずっと寝たきり。家に居ずらかった彼女は家から少し歩いたところにある森にこっそり遊びに行っていた。そして、数年後に❬ドラゴン狩り❭の準備のため、魔女たちが視察に森に入った。特殊な研究をしている魔女が人間を、リリアーナを森で見つけると研究のためにリリアーナに呪いをかけた。かけられた呪いは人間だったころの自我が失われ、完全にドラゴンになるようになっている。そして呪いが解けると記憶が戻る。リリアーナは7歳のときに呪いかかった。グライアス家総動員でリリアーナを探したが見つからず、冷酷な父親は実の娘を死んだということにしてそれきり探すものは誰もいなかった。
シナリオによると確か呪いはリリアーナが15歳くらいのときに自然と解けるようになっていたと思う。ストーリー的に学園に入学する前に人間にさせないと悪役務まらないもんね!それを私は無理矢理14歳で、つまり1年早く解いてしまった。
そしてリリアーナは幼少期の記憶とドラゴンの記憶を2つもち、グレる。グレる、というかなんというか。親からの愛を知らずに育ってきたから誰かに愛されたかった。そして学園に入学して年上のキャラにちょっと優しくされただけで好意を持ち、こじらせちゃうヤンデレ系気質の悪役令嬢なのである。しかも取り巻きつきの。あぁ、厄介。
もちろん、ヒロインもいる。同学年にして一緒のクラスメイト。
本作品の題名の由来となっている、モルンデス・ローズン。彼女はローズ色のシルクのようなストレートの髪に笑顔が印象的な顔。元気っ子です!って感じの子だ。
私はどっちかっていうと主人公は元気っ子+天然よりも無口な不思議っ子+天然の方が好みだ。どうでもいいけどね!
ところで、攻略キャラについて。攻略キャラは4人+隠しキャラ1人の計5人。年上が3人、同い年が1人、年下1人。
私に優しくするのは1歳年上の赤毛の少し長髪な私たちが住んでいる王国の王様の息子、つまり次期国王のメードリア・ウィリアム。その他にターコイズブルーっぽいオシャンな感じの青系の1歳年上のウィリアムの親友、アライズ・ナイツハイル。新任教師のマーシャライズ・ジョーンナイト。1歳年下のロメオトス・ケイト。同い年のサイラクス・アッサムハルト。……残念ながら隠しキャラはわからない。
隠しキャラは自分で見つける!と固い決意をして一切調べてない。
わかっていることは、ローズンがウィリアムルートに行くとリリアーナは必ず死ぬ。ウィリアムズが好きすぎるリリアーナは狂いに狂って、ウィリアムと心中しようとするが失敗し、次期国王を危ない目に遭わせその上次期国王の妃に嫌がらせをして死刑。これはハッピーエンドでの結末。その他にもいろんな感じで死ぬよこの子は。
ウィリアム以外のルートでも、皆に好かれるローズンに嫉妬して嫌がらせをし、最終的に国外追放とか、牢獄入れられるとか。考えるだけでも病むな……。
つまり!私が幸せになるためには攻略キャラたちに関わらないこと。ヒロインにも。隠しキャラは厄介だなぁ。あとやりたいことは魔女への復讐。ヤンデレキャラ舐めんなよ!
そう決意して、私はオーガンに私が人間ということやドラゴンになった原因のあれやこれやを話した。
オーガンの理解は早く頷きながら『お嬢……いや、リリアーナに協力したいよ』と言ってくれ、私を街の近くの村まで飛んで送っていってくれた。
オーガンとまた会う約束をしたあと数分歩いて私は7年ぶりのグライアス家に着いた。