4 弟も入学しました
数日後、ついに我が義弟の入学式の日が来た。
1年前は私も新しい制服に身に纏って__陰キャを目指そうとしたな……。無理だったけど。嗚呼、戻れるなら1年前に戻っていろいろとやり直したい!そして平穏な学園生活を送りたい!
と、まあ現実逃避をしても仕方がないのでテラクトの晴れ姿でも拝もう。この日はお父様、お母様共に来ていて先ほど涙の再会レベルの挨拶を交わした。もうお父様はぎゃん泣き。
「お姉様!僕はこの日を物凄く待っていました!やっとお姉様と毎日会えます」
「うふふ。テラクトおめでとう。そうね、私もテラクトが近くにいるようになることはとても嬉しいわ」
「ぞうだぞ。……でらぐと、リリィをじっかり守るのだぞ……ぞしで手紙はわずれるなっ!」
「はい。お父様。お姉様のことは私にお任せください。報告も忘れません!」
「あらあら。ルイ様ったら泣きすぎて何を言われているか分かりづらいわよ?それにテラクトもお手紙にはリリィちゃんのことだけじゃなくてあなたのことも書いてね?残される私たちはとても寂しいのだからね」
「わ、わかっています!僕もお母様とお父様と離れるのは寂しい……です」
さっきまで溌剌としていたテラクトがお母様に優しく頭を撫でられていて、子犬のようにしゅんとなっている。成長しても本当に私の弟は可愛い。萌え。
「テラクト、生徒代表の挨拶はあなたらしいわね。私はあなたの姉で本当に誇らしいわ。すごいじゃない!」
そう。テラクトは成績トップで来た見目も麗しい特待生。ここまで頭が良いとは思わなくてほんとにビックリした。私だって結構頑張ったけど代表まではいかなかったし、カスリもしなかった。テラクトに学力を負けないように頑張らねば。
「お姉様に褒められるなんて、僕、頑張った甲斐がありました!ちゃんと見ていてくださいねっ」
見るーーー!!この世界にビデオカメラがあったらガッツリ撮ってたわ。あっぶねぇー、痛い姉になってた。良かったここが異世界で!ビデオカメラがないからしっかり目に焼きつけよう!
■ ■ ■
数時間後、入学式は筒がなく終わりを迎え、テラクトの新入生代表挨拶も目に焼きつけた。もちろん最高でしたよ。脳内で永久保存した。
入学式といえば生徒会の仕事も多く、目が回るような1日だった。そして一段落着いた今、私は生徒会室にいる。室内には2名。私と、あとは__
「リリィ様の義弟様は立派でしたわね!お姉様の立場からすれば本当に誇らしいでしょう?」
「えぇ。まあ……弟の成長はとても喜ばしいですわ」
新学期になった途端により一層ローズが私に話しかけてくる。何かにつけて私と共に行動をしたがったり、先程のように話しかけたり。
ロイアウトやウィリアムはまだローズの警戒を続けているので、助け船をくれる。助け船と言って良いのかわからないほど雑いときもあるけど。ロイアウトは特にベタベタと……婚約者なら致し方ないと思いつつローズに苦笑いを向けながら逃れるのが常である。
「確か、義弟さんと同じく新入生のご友人?あの子も皆様の注目の的だったのですよ。確か名前は……」
ふふふと嬉しそうにローズは笑いながら私があまり聞きたくない名前が聞こえてきた。たぶん、聞き間違いよ。私最近耳が悪いもの。もしかしたらローズが私に話しかけていること事態私の空耳だったりしないかな。
「ロメオトス・ケイト様、だったかしら。入学式前に少しお話いたしましたのよ。ふふっ」
……いや、これは正規ルートなのでは?主人公とケイトの出会いって入学式前にケイトがローズに一目惚れして初々しく話しかけて__だったはず。これはシナリオと合ってる!
もうローズはケイトルートを辿れば良いのでは?だってウィリアムと話しているときとローズ端から見たら可哀想だもん。ウィリアムは「あぁ」「そうか」「また後で」のローテーション。それにめげないローズもさすが主人公だとは思うけど。
私があまり話に乗り気ではないことを見かねたローズは少し黙った後、私の顔をぼうっと見つめた。……ん?いやいやいや。私にそんな趣味はないけども。ローズなら可愛いからどこかの誰かとワンチャンあり得るけども。そんなに見つめてどうしたのさ。3秒目が合うと恋が始まるらしいけども。
いち、にい、さん。……はい、始まりません。ローズさん、そろそろ何か言いなよ。これって話しかけられ待ち?
「あの……私の顔に何か?」
「へっ!?あ、申し訳ありません。……少し考え事をっ」
「そうですか……。やはり今日は疲れましたわよね。夜はゆっくり休みましょう」
無難イズ無難。この返答はなかなか良くないではないか。相手を警戒しつつも、気遣いは忘れない対応。ウィリアムに見習ってほしいな。というかローズもウィリアムとパンケーキを食べれば打ち解けれるのではないだろうか。今度提案してみよう。
「……リリィ様って何でそんなに優しいのかしら」
「僕の婚約者だからねぇ。君の優しいところは好きだよ」
「ロイアウト様っ!び、びっくり致しましたわ」
「いやあ、リリィの匂いがしたからね。ふたりとも今日はご苦労様」
匂いって、犬かよ。いや、ドラゴンだったか。いつの間にか部屋に入っていたロイアウト。こわっ。それにこういう助け船は半分腹立たしくて半分恥ずかしい。毎度毎度あまーい言葉が尽きないのがロイアウトの良いところでもあり悪いとことでもあるのだろうか。
「ローズは少し怖い顔になっていたよ?今日はもう帰っても良いから早く休みなさい」
「はい……ありがとうございます」
ローズは少しうなだれて荷物をまとめた。時折彼女は今のように悲しそうでどこか諦めたような顔をする。いつもにこにこしているローズからは想像できないような。もし、一緒に生徒会に入っていなければこの表情は見なかっただろう。




