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陰キャを極める悪役令嬢、とは。  作者: 佐納
2年生
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3.5 レッツゴー・パンケーキ

一応ロイアウトのお許し(?)も出たことなのでウィリアムと街角のパンケーキ人気ナンバーワン店へむかった。



とりあえず一番気になるとこは、ウィリアムがそわそわしすぎていることだ。そんなにパンケーキが食べたかったのか。しかし国王殿下がパンケーキを食べたいとご所望なら一流シェフがお屋敷で作ってくれそうだけれども。こんな庶民的なところに足を運びたいほどのパンケーキマニアとは。



「こちらがたっぷりイチゴの乙女パンケーキと柔らかスフレパンケーキになります」



「……!!これがぱんけーきと言うものなのか」



「ええ、そのようですね。ウィリアム様にこんなに可愛らしいがあるなんて驚きです」



さりげなく私の目の前に置かれたたっぷりイチゴの乙女パンケーキをウィリアムの前にあるものと取り替えた。もちろん、彼こそが乙女パンケーキなるものを頼んだのだからだ。私のさりげない行動にウィリアムは恥ずかしかったのか少し顔が火照っていた。……最近ギャップが多い男子多くない?



「い、いや別に……。ちょっと噂に聞いていてな。リリアーナ嬢もこういうスイーツが好きかと思ってな」


「ふふ。私よりウィリアム様方が好きだと思いますよ」



だって目きらきらさせ過ぎ。それに彼なりにすごくテンションが上がっている。もしかしたらウィリアムより私の方がここに馴染んでいないかもしれない。男に女子力負けるってどうなのよ。頑張れ私。



「私は少し甘いものが好きでな。……本当に今日付き合ってくれてありがとう。会長には何も言われなかっただろうか?」



「ええっと。ダイジョウブデシタワ!」




目が泳ぐのは許してほしい。私の夢だったキスマーク初体験が心霊体験くらい怖かったたのだから。きゅんではなくひやっとした恐怖体験だったわ。 



「そ、そうか!良かった。今日は会長の代わりに私がリリアーナ嬢の安全を守らせてくれ。会長に敵わないかもしれないが全力を尽くそう」



「ウィリアム様の手を煩わせるほどではないのでお気になさらず!心遣いは感謝いたしますわ」



「それと……少し気になっていたことがあってな……」



ウィリアムは話しづらそうに乙女パンケーキを口に入れるのを止める。私も空気を読みスフレパンケーキを飲み込み、手を止めた。美味しかった。



「君を守るために会長が動いているのは承知している。しかし、しかしだ。その、守り方は婚約者ではないといけないのだろうか……?」



「それはどういう……」



「私にもリリアーナ嬢の手助けはできないだろうか。会長と婚約者という法螺を吹いていると、大体の家は怯えてこの先良い縁談が来るかわからない。会長も責任を取るのかもわからない。……だからもっと違う方法で守れないだろうか」



ウィリアムはこの上なく真剣だった。たぶん、乙女パンケーキさえなければ私も真剣モードになれたのだと思う。何でだろう、ウィリアムと乙女パンケーキという相性が悪すぎて__どこかふざけてしまいそうな私がいるのよ。



「……あいにく今の環境で不便はないので満足しています。そんな、私を守るなんて大層なことではないのであの変態会長様で十分です。確かに縁談はほとんど来ないと思いますが……そのときはそのときです!」



変態会長って単語を彼はどう感じるだろうか。ロイアウト様と言えなかったとは申し訳ないと少し思う。



「リリアーナ嬢は楽天的だな。そこも良いのだが。……では困ったことがあったらいつでも力になる。私のことをも忘れないでくれれば有難い」



「そこまで言われると、お言葉に甘えさせていただきます。しかしなぜ私にそこまで親切に?」



これはただの疑問だ。なんで?ウィリアムが優しくすべきなのはローズだよ。まさか__私がローズに見えたとか!?そんなわけないと思うけど。



「……ふっ。なんとなくだ」



っ!!美男子からのきらめきの微笑み。気を抜きすぎた……。私にそこまで耐性はついてない!画面越しなら大丈夫だけど!




「そ、そうですかっ。パンケーキ早く食べましょ!」



■      ■      ■



「……だからもっと違う方法で守れないだろうか」



自分でも一体何を考えているのかわからない。わかることと言えば、彼女が会長の婚約者であることが囁かれるのが堪らなく不愉快だということ。



先日まで私も彼女たちがそうだと信じていた。どこか胸の辺りのざわつきが収まらなかったのも確かだった。しかし、それは嘘だということを聞かされたとたんスッと胸のつっかえが取れた気がした。



〝私が彼女を守る〞その考えが邪道ではなくなった。私にだってその権利がある。ならば何も遠慮することなどない。



しかし彼女は首を横に振る。彼女はどこまでも彼女らしく前向きだ。だか、もしものことがあったら?このまま婚約者のフリを続けて会長が本気になったら?……心配は尽きない。どうしてだ。



なぜか彼女のことになると冷静に物事を考えることができない。茶会での詫びの手紙を送ってみたが返事は来ず、悩まされた日々を思い出す。保健室の時でも嫌われているのか不安で仕方がなかった。今日の誘いも断られるか不安ではあった。




「なぜ私にそこまで親切に?」




なぜだろう。彼女といると心が落ち着く。彼女はそこらの令嬢と違い私に媚びを売らない。素直で飾らない。だから彼女にどんどん引かれる。……そうか。依然ハイルが私にからかってきたことは当たっているかもしれない。自分がまさかな、とは思い、我ながら笑ってしまう。




「……ふっ。なんとなくだ」




そうか、これが__恋というものなのか。



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