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陰キャを極める悪役令嬢、とは。  作者: 佐納
1年生
32/44

17 狙われているらしいです

用具準備室、そこはあまり使われない教室。だから時間が経てば誰が来るということはまずない。


はい、詰んだ。私の人生は用具準備室で終わるのか。と一瞬だけ思った。


ドンドンドン。一瞬落ち込んだあと私は必死に扉を叩いて自分の存在を主張した。あわよくば、この扉が壊れれば良いのにと思いながら。


しかしお金持ちがいく学校なのでそんな柔な扉ではない。私の手の方が限界が来るのが早いらしい。


飛び降りるにしてもここは3階。ただでさえ高所恐怖症の私が飛び降りれるはずがない。


ならば叫ぶか、と思い、ご令嬢らしからぬ声をあげたが誰も来なかった。


かれこれ1時間は過ぎただろうか。1時間でやれるだけのことはやった。それにそろそろ空の色も暗くなってきて誰も学校にいなくなるだろう。


腹をくくって今日はここで寝るか。私は教室の机と椅子を使い、良い感じのベッドを作り始めたときだった。


ガラガラと扉が開く音がした。いつの間に人が来たのか、ベッドに夢中で全然気づかなかった。



「リリアーナ嬢は本当にご令嬢なのかい?」



私の救世主__ロイアウトは椅子を積み上げる私を見て苦笑しながらそう言った。



「え、本当に用具準備室に呼び出したのですか?」



もしや、彼女たちは事実を私に教えてくれたのかと今さらながら思ってしまう。だって、誰もこんなところに来るはずないのだから。お礼を飛ばして第一声がこれだ。我ながら恥ずかしいと後で気づいた。



「僕は用具準備室には呼び出してないよ。それに呼び出したとしてもリリアーナ嬢を待たすはずがない」



「あっ、助けていただきありがとうございます……じゃあ、どうして……?」


色々と不思議だ。この人はエスパーなのか。心の声までも聞こえていたのか。



「ひとまず場所を変えよう。生徒会室まで行こうか」



■          ■          ■



生徒会室には誰もおらず、私とロイアウトの2人きりだった。彼は慣れた手つきで紅茶を淹れてくれた。普段から自分で紅茶を淹れるのだろう。物凄くこだわりがありそうだ。あくまで偏見だが。



「で、どうして私を助けられたのですか?昨日、生徒会室へのお誘いはありましたがもしかすると私は生徒会室へ行かず帰ったかもしれません。そうなると私が学校にいるとはわからないはずです」



私はロイアウトの方をじっと見つめて尋ねた。もし閉じ込められていると知っていたとしても、この広い学園ではなかなか見つけることができない。


彼がどうやって私が閉じ込められているのを知り、見つけたのかがとても不思議だ。それに恐ろしくも思う。



「制服のジャケットの右のポケットをよく見てみて」



ロイアウトはその方向を指差した。私は言われた通りポケットの中を注意深く見たり、手を入れて探ったりした。すると、小指の爪くらいの大きさの黒くて薄い円盤形の物体が出てきた。



「僕が作った盗聴器だよ。まあ、そんな不審そうな顔をされても仕方ない。でも、これは君のためのものなんだよ」



ストーカー!?今まで私のことを運命の人とかなんだか言って抱きついてきたり変人だとは思ってたけど、ここまで酷いとは。彼を軽蔑の目以外で見ることができない。



「あの、自首するなら今のうちですわ。私から通報してもよろしくってよ?」



「……リリアーナ嬢、あなたは誰かに狙われていると気づいているよね」



私の言葉をスルーして彼は真剣な表情で言った。どうやら茶番は要らないらしい。



「狙われている?何のことかしら」



「以前、階段から突き落とされたことは僕も知っている。それに今回の件も」



どうしてロイアウトが階段の件を知っているのか。あの事を知っているのは誰もいないはず。それに助けてくれたウィリアムも私が突き落とされたとは上手く誤魔化したから知らないはずなのに。


私は動揺を隠しきれず、言葉が出なかった。するとロイアウトは淡々と言葉を繋げた。



「階段から落ちたときに助けたのは僕だ。そのときに少し心配になって盗聴器を仕掛けさせてもらったよ。次の被害を防ぐために。すると、予想は的中して今に至るわけだ」



確かに。盗聴器で会話を聞いていれば私の居場所がわかるのも頷ける。……ん?会話が聞こえていたということは、私の叫び声も聞こえてたということだろうか。



「……もしかして用具準備室での私の声も聞こえてましたか?」



「あぁ、あのたくましい声のことかい?リリアーナ嬢の意外な一面が知れてさらに惚れ直したよ」



いや、ぐって親指を立てられても。これを褒められて喜ぶ女子がどこにいるだろうか。本当に恥ずかしい。うわぁ……ロイアウトに聞かれてたのか……用具準備室に一生閉じ込められて飢え死にしたかった。



「こほん。で、階段でのことは助けていただきありがとうございます。……仮に私が狙われているとして、犯人は知っているのですか」



突き落とされたことや閉じ込められたこともあり誰が私を嫌っているのだなとは思っていた。狙っているとは少し大袈裟だとは思うけど。しかしそれが誰の仕業なのかはわからない。


今回はあの女子生徒2人で間違いないとは思うが、私は彼女たちと特に接点はないと思う。


それに普段私は大人しくしているから他人に害を与えたことはないと思う。


しかし、心当たりがあるとすれば昨日。舞踏会でこの学園の人気ナンバーワンを争う人たちと踊ってしまったこと。


それに嫉妬する子がいてもおかしくないと思う。なんの取り柄もない陰キャ女子が踊ってんじゃねーよとかは思われる覚悟はしていたし。


でも、嫌がらせが始まったのは新入生歓迎パーティーより前だ。つまり大半の女子生徒の嫉妬を買う前。まだ私が地味を貫いていた頃だ。


そんな私を誰が狙うっていうのだ。



「確信はないが、大体の目星はついている。だから、1人の女性に気をつけて欲しいんだ。まだ犯人かはわからないけど__ローズン嬢に」




__どうして?私は信じられなかった。だって、あの子は私と仲良くなりたいと無邪気な顔で言っていたのに。あんな純粋な子を疑うなんて私にはできない。



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