16 はめられました
そしてそれから暫くして舞踏会は終わり、新入生歓迎パーティーはつつがなく終わった。
ウィリアムとローズンは無事に踊れただろうか。どんな感じでウィリアムはローズンを誘ったのか。
ゲームをプレイしてないからイベントの詳細までは知らない私は色々と想像を膨らませながらにやけた。
だって、この世界は乙女ゲームなのだから。私と関わるウィリアムは嫌いでもローズンと関わるウィリアムは好きだ。これはこのゲームのプレイヤーのほとんどがそうなのだ。だからウィリアムがリリアーナと踊るなんて誰が望むのか。
パーティーの翌日。
今でも余韻が抜けていない生徒が少なくない。そのせいか学園はふわふわした雰囲気に包まれている。
私はいつも通りジェニーと食堂へ向かう途中、ローズンとウィリアムが話しているのを見た。美男美女で絵になる。
「おぉ!」と歓喜の声を漏らしてしまった。ジェニーは私の方を不思議そうに見たけど笑って誤魔化した。
この2人を生で見れるなんてなかなかない!というか見れたとしてもこの私だけかもしれない。このゲームが好きで転生した子は他にいないと思うし。
ちょっと興奮してがっついた見方になったが彼女らの邪魔をするなんて邪道だ。悪役はそそくさと退場しよう。
するとローズンは私に気づいたのか満面の笑みでこちらに一礼した。つられてウィリアムも私の方を見た。ウィリアムは私に何か言いたげな顔をしていたが、2人の逢い引きの邪魔をするつもりはないので礼を返したあとジェニーと食堂へ向かった。
■ ■ ■
放課後。そういえばロイアウトに私と彼との関係を知りたいなら、生徒会室に来いと言われていたなと思い出す。もしかすると、彼も転生だったりして__とも一瞬思ったが、過去に男の人と交友関係もなく兄や弟もいなかったことを思い出して違うとすぐに悟った。
だとすれば彼はなんだ?
幼なじみと言っていたが、過去の私に異性の幼なじみはいない。もちろん、今の私にも。だって、幼なじみどころか小さい頃に一緒にいたのはドラゴンたちだから。
あれこれ考えている間に生徒会室の前まで来てしまった。別に生徒会室へ行こうとしたのではなく、足が勝手に動いたのだ。断じて私の意思で行ったのではない、と心の中で言い聞かせた。
__扉の前に立つこと数分。生徒会室の前を通る生徒は私のことを不審な目で見ながら通っていく。
生徒会室へ来たのは良いものの本当に入って良いのかわからない。……それに生徒会室には攻略者たちがいるし。
「……アーナ様、リリアーナ様」
「はいっ!?」
考え込んでいる最中に突然声をかけられたからなかなか気づくことができなかった。呼ばれた方を向くと、そこには見たことがあるようなないような女子生徒2人がいた。
「えっと、生徒会長様がリリアーナ様に用具準備室に来いと伝えてほしいと言われたので」
「あ、えぇ。わかりましたわ。ありがとうございます」
どうして生徒会室ではなく用具準備室に場所を変えた意図はわからないが、どうせロイアウトに会わなければならないと思い、私は用具準備室へ向かうことにした。
そして彼女らは顔を見合わせてとても嬉しそうにしながら私とは逆の方へ走っていってしまった。
廊下は走ってはいけませんよ、と子供の頃に習わなかったのか。全く、彼女らもどこぞのご令嬢なのに。
■ ■ ■
彼女たちの伝言通り、私は用具準備室に着いた。そこは電気はついていないものの扉の鍵は開いていた。
「会長……さま?いらっしゃいますか」
しかし呼び掛けても返事がない。……これは明らかにおかしい。ロイアウトが私との約束をドタキャンしそうにもないし、私を待たすはずがないと思う。根拠はないが、なぜか彼はそうしないと思った。
じゃあこれはもしかして__と思ったのが遅かった。
どんっ。と入り口辺りに立っていた私を用具準備室の中へと押した。そして、すぐさま扉を閉めてガチャっと施錠をする音がした。
これはヤバい。と私は今、顔が、真っ青だと思う。
「ウィリアム様と会長様に気に入られたからっていい気になるなよ!この尻軽女っ!」
罵声とともに「きゃははは」という笑い声が聞こえた。それは先ほど私に話しかけた女子生徒2人に似ていた。
しくったーー!!明らかに罠だったーー!!
私はこれからどうすれば良いのだろう。この世界にスマートフォンという画期的なものが存在しないことを恨んだ。




