12 ヒロイン登場
ついにこのときが来たか……。ヒロインとのご対面。できるなら今にでも逃げたい。しかしローズンはしっかり私をロックオンしており、笑顔でこちらに向かってきている。逃げれるはずがない。正直、マッシュポテトを喉に詰まらせている場合ではなかった。
「ご、ごきげんよう。ローズン様。騒がしかったようで申し訳ありませんわ」
「ごきげんよう、リリアーナ様。いいえ、今日は騒がしくする日ですもの。全く気にしてませんわ。私、ずっとあなたとお話したかったの!いつも話す機会を伺っていたのだけどなかなかなくてっ」
「そうなのですね……。それは光栄です。私のようなものにローズン様がお話ししたいと思っていたとは驚きですわ」
私は一生話したくなかったよ。あなたの邪魔をするつもりはないからもう私を解放してくれ……。ジェニーとアッサムハルトの方をちらりと伺ったが、2人ともローズンらに一礼をして向こうの方のローストビーフを取りに行っていた。……私もローストビーフ食べたいし!
「そうだ!私のことはローズで良いのよ。あなたのことは……リリィ様って呼んでもよろしいかしら?」
「ええ。わかりましたわ、ローズ様。私ごときがローズ様と呼ぶのは気が引けますが」
「そんな!私、リリィ様の家ほどの身分は高くないから、堅苦しい態度を私にとらなくても良いのよ?もっと、こう__偉そうに……あっ、これは言葉の綾ですっ。フレンドリーに、ということでっ」
ローズンは突然焦り出している。何を必死になっているのかわからないが、とりあえず逃げたい。
「よくわかりませんが、気軽に接してほしいということですね。心がけますわ。……えっと、では私はこれで。友人たちがご馳走につられて向こうにいるので。それに私もローストビーフをたくさん食べたいですし」
「__えっ?あ、ご友人たちはあちらに行かれましたものね。では、また今度ゆっくりお話ししましょうね!」
またもやローズンは若干動揺して驚いたように見えた。……これは私の食欲に関しての驚きだろうか。交友より飯が好き、的な。適当に理由をつけてその場から立ち去りたかっただけなのに。なんだか、大食いキャラ認識されたかもしれないと思うと恥ずかしい。
■ ■ ■
そうして私は無事にローストビーフを迎えにいくことができて満足した。
やはりお金持ち学園なだけあって、すっっごく美味しい。あぁ、幸せ。
「こちらのステーキはいかがです?さっき出来上がったばかりですよ?」
「あっ、頂きますわ。ありがとうございま……す」
不意にステーキを勧められる声がしたので、シェフか学園の使用人さんかと思って普通にステーキをもらおうとした。しかし、私にステーキを勧めてきたのは予想していた人達ではなく、過去に1回だけ会ったことがある、私の苦手な人だった。__アーライズ・ナイツハイル。ウィリアムの親友で2年前の茶会で私にちょっかいをかけてきた。
相変わらずの登場の仕方に私は無意識に顔が歪んだ。だって、この人は__私の過去を知っているから。
今からまたドラゴンとか言い出すのだろうか。そうだとしたらデジャヴな感じがする。前も私が料理を食べている時に話しかけられたっけ。
「リリィ、久しいね。前よりも綺麗になったね。ウィルも君に会えて喜んでいたよ」
「お久しぶりですわ。ハイル様はお世辞がお上手ですわね」
「お世辞なんて言っていないよ。……僕のことは嫌いかい?」
なんて直球の質問をするんだ。もう少しオブラートに包んでくれた方が答えやすいのに。
でも確かにそんな質問をされるような顔をさっき私はしたなぁ。ごめんよ。
「いえっ!そんなことは思っていませんわ。ただ私のことをどこまでご存じなのかが不思議で……」
「とりあえず嫌われてないみたいでよかったよ。あぁ、そのことか。うーんとね、秘密」
なんてこった。この人は答える気ないようだ。
かすかに笑いながら人差し指を口に当てて「秘密」と言われてもなぁ。怖いだけじゃん。
私が困ったような顔をしているとナイツハイルは続けて言った。
「リリィが生徒会に入ってくれれば教えようかな」
私はステーキを口の前まで持ってきていた手を止めて絶句した。
生徒会?いや、どうか私の聞き間違いであってくれ。




