10 忘れてた行事
「階段から落ちたって聞いて……リリィちゃん大丈夫なのっ!?」
翌朝、いつも通りベルと一緒に登校し、学校に着くと開口一番にジェニーが言った。誰から聞いたのかと初めは驚いたが、彼女は保健委員であるので保健の先生から聞いたらしい。あの時は先生は不在で誰にも知られないだろうと思っていたが、保健室を利用するにあたって、先生が不在のときには後から報告しなくてはならない。おそらく、ウィリアムがやってくれたのだろう。
「だ、大丈夫よ。私、おっちょこちょいだから……」
「今度から手すりを持って降りよう!そうしたらつまずいても大丈夫だよ!」
「あはは……そうね。心配してくれてありがとう」
ジェニーは本気で私のことを心配してくれるのは有り難いし、嬉しい。でも、毎回手すりを持って降りるのは恥ずかしくない?年寄りみたいだし。少し天然なジェニーは嫌みじゃなくて大真面目に言うから否定するのに気が引けてしまう。でも、嬉しいのには変わりないからいいか。
「そうそう!そういえば、もうすぐで新入生歓迎パーティーだね!リリィちゃんはどんな衣装着ていくの?」
新入生歓迎パーティー。わ、す、れ、て、た。そう、このパーティーは名前のごとく、新入生である1年生を歓迎して他学年との親睦を深める会である。主役である1年生は強制的に全員参加。他の学年は基本的に参加自由なのだか、9割の生徒が参加する。その目的は、委員会の仕事や部活勧誘、将来を見据えて有力な貴族との交友作り、また単に雰囲気を楽しむなど様々である。
絶対来年以降は参加しないでおこう。人脈が広がるのは悪いことではないが、私的に良いことではない。あ、でも来年はテラクトが入学するから……参加せざるを得ないかも。あの子に心配をさせたくないし。
とはいえ、パーティーに着ていく衣装か……。派手すぎず、地味すぎず。周りに馴染む感じのドレスかな。派手すぎると目立つし、逆に地味すぎずと引かれてしまう。うーん、難しい。いつもドレスを着るときはお母様がとびきり良いものを選んでくれていたからなぁ。
「悩むわね。うーん、あまり派手すぎないものを着ていこうかしら」
「そうだね。私もそうする!派手なドレスは持ってないし……。リリィちゃんはどんなものを着ても素敵だろうなぁ~」
ジェニーは笑顔でそう答えた。おそらく少しきらびやかなドレスに憧れている。でも、私はそれに付き合うことができない。なぜなら目立つから。ジェニーには申し訳ないけど……。そうだ、今度の長期休暇に家に呼んで思いっきりおしゃれしてお出掛けしようかしら。学内でなく外でなら、目立っても問題はないし。家にはジェニーの喜びそうなドレスはたくさんあると思うし。
「ジェニーも何着たって似合うわよ。今度の休み、おしゃれしてお出かけしましょ。ドレスは貸すから思いっきりおしゃれして、ね?」
「やったあ!楽しみにしてるね!」
満面の笑みでジェニーは私に抱きついてきた。本当に嬉しかったのだろう。
うん、可愛い。癒される。
「なになにー?楽しそうなことしてるね?ふたりでなーにしてるの?」
くっそ。アッサムハルトか。
「あ、今度ある新入生歓迎パーティーの話をしてるんだよ。アッサムくんはどんな衣装着てくるの?」
「なるほど、そういうことか。俺はねー、ものすっごくかっこいい衣装かな?2人の衣装すごく楽しみにしてるね。リリィちゃんのドレス似合うだろうなぁー」
「パーティーの時に絶対話しかけて来ないでくださいね。ってこの人に言って」
「だって~、アッサムくん!」
「うん、すぐ隣にいるから聞こえてるよ?相変わらずだなこの頑固なお嬢様は。俺のかっこいい衣装を見て見とれちゃうよー?」
アッサムハルトのチャラいテンションにはいつもイライラする。しかも、攻略者っていうこともあってさらにイライラする。そろそろアッサムハルトの対応にも慣れてきたジェニーは私に無視されているアッサムハルトを宥めている。これももう見慣れた光景だ。
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そうこうしているうちに日にちはあっという間にすぎ、明日が新入生歓迎パーティーの日になった。




