閑話 養子になった子
僕はグライアス家の養子となった。別に何もその家に期待はしていなかった。僕はするべきことをすれば良いのだから。だから家族の愛情とか絆とかはあまり興味がなかった。__しかし、
「リリアーナ、です。よろしくお願いいたしますわ」
彼女はにっこりと興味津々に僕の方を見た。そこから僕は彼女に振り回される生活を送った。別段、嫌ではなかった。むしろ楽しかった。
彼女は初めに花がたくさんある園庭に連れていってくれた。花が美しく咲き誇る中、彼女の笑顔が一番綺麗だった。そして、園庭に行くのは日課になった。
あるときは屋根裏部屋に行き、貧乏姉弟という設定のごっこ遊びをした。あまり世界観がわかっていない僕は彼女からダメ出しを多く食らった。女の子の遊びはめんどくさいって思った。
またあるときは屋敷で追いかけっこをした。これは僕にも分かりやすい遊びだった。しかし、使用人たちに屋敷の中を走り回るな、と注意を受けたのであまりできなかった。少しの間追いかけっこをしたが、彼女は割りと運動神経が良い方だと思った。
こうして彼女ら家族と過ごしていると、初めの頃と比べて気持ちの持ちようが変わったのかなと思う。家族ってこんな感じなのかな。
と、まあ僕には呆けてる時間はない。僕が住み始めてから、つまり茶会が終わってから彼女は何度かお見合いの話が来た。お見合いの話ならまだ良いものの、個人的な手紙が送られてきたこともある。ここからが僕の本領発揮。そういう手紙を破棄する。だから僕は郵便受けを取りに行く雑用を自ら名乗り出た。初めは義母も義父も良い顔をしなかった。こんなこと、使用人たちにやらせれば良いのに、と。だが、僕は養子となってこの家にお世話になっているのだから少しくらいこの家のために何かしたい、とこう言えばなにも反対できない。
それに見合いを阻止するのには義父も協力してくれた。さすがの溺愛ぶりだなと思った。見合いが上手くいきそうなときは、見合いの相手にこの娘は×××様の許嫁だ、と脅迫文みたいなものを匿名で送ると必ず成功した。
そして僕は日々、お見合いの話が来ると宛名を見て破棄するものと彼女に渡すものを分けていた。破棄するものはとりあえず断りの返事を書いて送ったていた。これで何も問題はない。だがある時、この国の国王の子というやつから手紙が送られてきた。もちろん、これは彼女に渡すはずはない。内容だけ見てみるか、と思い開封した。
内容は簡潔にまとめると、前の茶会で親友が無礼なことをした謝罪と今回は話せなかったから殿下の入学前に会って話したい、と言うものだった。
彼女と殿下との接触はどうしても避けたい。そう思い、僕は返事を書くこともなく、この手紙を燃やした。
そうこうして僕の努力もあり、彼女にはへんな虫もついていない状態で入学を迎えることになった。1年差で僕も入学するが、この1年ももどかしい。同い年だったらよかったのに。まあでも、学校にはあの人がいるから大丈夫だろう。僕よりも彼女を囲いそうだが。
入学するのが待ち遠しい。僕も早く行きますからね、待っていてください。




