3 ぼっち回避
「……っん!!」
私は全ての力を振り絞って生徒会長の手を振りほどいた。なんなのこの人。痴漢じゃん。セクハラじゃん。前世だと犯罪レベル。というかこんな目立つ人に関わりたくない。
「いきなり淑女に抱きつくなんて、破廉恥すぎですわ。いくら生徒会長様でも先生方に言いますよ?」
「す、すまない。……つい君に会えて嬉しくって。今度から抱きつくときは断りを入れるようにするよ」
「いや、そういうことではなく……」
もう調子狂うな!笑ってるし!
私はいたって冷静に注意したと思う。睨みもしたし。だがこの男はなにも反省の色はなく、むしろ喜んでいる。まさかドM……?いやいや、その考え方は止めよう。
学年は向こうの方が上だし、生徒会長だし、ヘタに逆らえない。どうしたものかと思っていると、
「あっ、そろそろ生徒会室に戻らなくては。名残惜しいけどまた今度」
彼はそういうと本当に名残惜しそうな、悲しい笑顔をして私が行こうとする教室と反対方向にある生徒会室へ走り出した。
名前くらい聞けば良かったかなぁ。そうすれば避けやすいのに。
でも確か入学式の挨拶で名前を言っていたような。しかし、お偉い人の話をほとんど聞き流していた私が覚えているはずもなく。……ベルに聞けば知ってそう。
とりあえず私も教室へ向かった。
■ ■ ■
HR終了後、私の作戦は始まる。まず始めに、数人だけ地味目の子と友達になる。地味目の子と。幸い、私と主人公であるローズンとは席が離れていた。派手目の子たちはローズンを囲んできゃっきゃしているグループとそれを見て蔑むように愚痴を言っているグループとに分かれた。なので、その両方に属さない、自席で大人しくしている子で私と席の近い子を狙っていく。
私の席の前の子が丁度良いだろう。茶髪でボブくらいの髪の毛の子。この学園に入学してきているからある程度の貴族だろうけどどこか庶民染みている。良い意味で。
「ごきげんよう。初めまして、私グライアス・リリアーナと申します。あなたは?」
「わわっ。ごきげんよう。サンドラ・ジェニファーです。こんな落ちこぼれの貴族にグライアス家のお嬢様が声をかけてくださるなんて……!」
サンドラ家。これはあまりよく知らない。だから侯爵家以下だと思う。帰ったらお父様に手紙で聞いておこう。
「私のことは気軽にリリィと呼んでくださいね。あと敬語もいりませんわ」
「ぜひっ。私のことはジェニーで良いです。えっと、リリィちゃんよろしくね」
「こちこそ!よろしくね、ジェニー。明日からお昼を一緒に食べてくれる?」
「もちろん!実は私、誰も友達できないんじゃないかって心配で……。お昼もひとりだと嫌だなって思ってたの。だからリリィちゃんに話しかけてもらえて本当に嬉しいっ」
素直で純粋で地味。その上可愛い。好条件すぎる。
「私も嬉しいわ。私も友達は心配で。ジェニーみたいな子と仲良くなれそうでこれからが楽しみだわ」
良い子そうで良かった。これで昼食もぼっち回避。明日から私は教室の隅の方でジェニーと生きていこう。
ジェニーも寮らしいので途中まで一緒に帰った。短い時間だったけどとても楽しかった。初めの時は少し緊張して話していたジェニーも今は慣れたようで割りと饒舌に話してくれる。友達と2人下校、とか懐かしいなぁと思いながらこれからの生活に期待を抱いていた。__しかしその期待を持ち続けるのはそう長く続かなかった。
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1日目、攻略者と主人公との接触はなし。でも謎の男との接触はあり。それと無事に陰キャ友達できました。




