12 決意は固まりました
次の日から私はテラクトと一緒に庭の花を見に行った。ほぼ毎日のように行っていたおかげかテラクトはだんだん私に対して心を開いてくれるようになったと思う。初対面の頃よりもずっと笑顔が増えてとても嬉しい。
そして今も私たちはいつものように庭でおやつの時間を過ごしている。もちろん、お菓子は私の好物のザッハトルテ。
「お姉さまは来年学園に入学するのですよね?」
「あぁ、そうだったわね。正直行きたくないのだけれど……行かないと行けないのよね」
学園に入学をすることは私の死活問題に関わるかもしれなくなってくる。攻略キャラや主人公との接触が増えるあの場所へ喜んで行けるはずがない。だが、世間一般的に私くらいの公爵家の子は学園に入学しなければ白い目で見られる。だから家族のためにもそれは避けたい。
「大丈夫です。お姉さまはお優しいし、一緒にいて楽しいお方なのでお友達もたっくさんできますよ」
あぁ、むり、可愛い。友達ができるかが不安だと勘違いしてるテラクト可愛すぎ。私を心配してくれるなんて良い子だ。可愛い。テラクトのために取り巻きじゃなくて友達いっぱい作って生きて帰ってくると誓うわ……!
「それに、お姉さまが入学した1年後には僕も入学できるらしいので。とても楽しみです!」
「そうなの!私も楽しみ!寮に入るからテラクト不足になって死なないか心配だったよ~。1年辛抱すれば良いだけね!」
「あははは……」
苦笑するテラクトをよそに私はテンションが上がっていた。
とは言うものの、テラクトが入学するまで私は平穏を保ちたい。いや、入学してからもずっと平穏でいたい。そのためにどうすれば良いか。
今年はウィリアムとナイツハイルが入学する。教師のジョーンナイト、同級生のアッサムハルトと主人公は私と同じく来年。ほぼほぼ主要メンバーは来年には揃う。
入学後の1年が一番肝心。それは前世での学校も同じだった。入学後、大まかに2つのグループに分かれる。1つは陽キャいわゆる生徒カーストが高いグループ。キラキラしてて目立つ。その上、クラスの主導権は彼らが持つ。もう1つは陰キャ、生徒カーストが低いグループ。地味で目立たない。
陽キャになるか陰キャになるかの要因は何個かある。例えば、オタクは陰。真面目っ子も陰。可愛い子、イケメンは陽。フレンドリーな子は陽。
前世の私は乙女ゲームにハマるくらいなのでもちろん陰。なので大して高校までで甘酸っぱい青春だのなんだのは未経験。全力で趣味に走ってました、はい。
陰キャだった私はクラスにいてもいなくてもどうでも良い存在だった。友達もいたけど、類は友を呼ぶということは本当で、私の友達も陰キャ。それはそれで楽しい学校生活だった。なんか懐かしいなぁ。
……ちょっと待てよ。__陰キャ。これはいける。
私が来年学園に入学して平穏を保つ方法。私が行き続ける方法。それは学園で陰キャのポジションにつくことだ。そうすれば、主人公に嫌がらせをすることも殿下に恋をすることも死ぬこともない。私は天才か。ナイス、前世の自分。
「私は幸せになってみせるわっ!」
良い案を思い付いた嬉しさの勢いで思わず本音が口からでた。テラクトは予想通り不思議そうな顔をしている。ごめんよ義弟、姉は感情が制御できないんだ。
「僕もお姉さまには幸せになってほしい、です!僕にできることがあれば何でも言ってくださいね」
「ありがとう!そうね、ハグしてほしいところだけど……今は気持ちだけ頂くわね」
〝ハグ〞と言った瞬間、テラクトの顔が真っ赤になったのは見逃さなかった。これで私がハグしてしまうとテラクトが可愛すぎて抑えられないと思うからここは自主規制……。
それとテラクトに陰キャになる!とは言えるはずない。まず陰キャって何ですか?って聞かれそう。
とりあえず来年、陰キャを極めます。




