10 お茶会
アライズ・ナイツハイルは攻略者の一人であり、殿下__ウィリアムの親友だ。
どうして私のことを知っているのか。彼と私が初めて会うのは私が学園に入学してからのはず。ナイツハイルは1歳年上なのであと数ヵ月で入学する予定だ。
「ナイツハイル様ごきげんよう。私のことをご存じだったのですね。改めまして、グライアス・リリアーナです。なぜ私のことをご存じで……?」
「あぁ、リリアーナ嬢のことは噂に聞いていたよ。とても会うのが楽しみだったんだ。ドラゴン、だったとかね」
やっぱりそれか。それよりこの人ずっとにこにこしてて怖いんだけど。
「……っ。そうなのですね。申し訳ありません。その話はあまりしたくないのですが……」
「まあ、そうだろうね。無理強いはしないよ。でも落ち着いたら聞かせてほしい、かな。それより、殿下に会わなくて良いの?他の娘たちは部屋に入るなりウィルと誰が話すかの争奪戦だよ?」
「あはは……。私は良いのです。ほら、お菓子も美味しそうだし。殿下がお暇になられた頃に挨拶いたしますわ。お気遣いありがとうございます」
もう少しドラゴンネタについて粘るかと思ったが、意外と諦めが早くて良かった。さすがナイツハイル。ジェントルマンなだけあって女の子が嫌がることはしたい。でもにこにこしてる。
「そうそう、僕のことはハイルでいいよ。殿下もリリアーナ嬢に会いたがってたから早めに行ってあげてね」
「はい、ではハイル様。私のことはリリィでいいです。早めに行けるように心がけますわね。では失礼します」
「じゃあね、リリィ。もう少し話したかったけど、それはまた今度にするよ」
願うことなら私は二度と話したくない。会話は最小限に抑えたから色々と大丈夫だと信じたい。
私は一礼して、今度こそ中央のテーブルに向かった。
ナイツハイルはなんというか、心が見えない。物腰は優しいが心の奥では何を考えてるのか全くわからない。しかも笑顔を絶やさない部分が怖いもん。
そろそろナイツハイルのことなんか忘れれて目の前のお菓子を食べよう!テーブルの上にはマカロン、フィナンシェ、カヌレ、タルト……などいろんな焼き菓子が並んでいた。どれも美味しそうなので1つずつ取ってお皿に入れた。
私のお目当てのザッハトルテもあり、お菓子に関しては文句なしだ。あまり人目につかないところでこれを食べよう。
そう思い、私は部屋の隅に追いやられている豪華な椅子の1つに座っお菓子と共にて至福のひとときを過ごしていた。
部屋のなかをぼーっと見渡してみるとやっぱりウィリアムに群がる女子の多いこと。ウィリアムも苦笑を浮かべていて当分は解放されないだろう。このままこの茶会が終わるまで解放されないでいてくれ。
先ほど話していたナイツハイルもウィリアムほどではないが女子に囲まれている。彼はにこやかに相手しているが、その笑顔が怖いんだよ。
あー。一瞬だけだけどナイツハイルと話して疲れた。私を癒してくれるのはこのザッハトルテだ。……んっ、うま。どの世界でもザッハトルテは美味しい。幸せ。
「…………グライアス・リリアーナ、か。やっと、……見つけた」
遠くでリリアーナのことをずっと見ていた誰かが呟いた。しかしそんなこと知るはずもない私は呑気にお菓子を頬張っていた。
私の願い通りウィリアムは終始令嬢たちから解放されず、私とウィリアムは接触のないまま茶会が終わった。
茶会から帰ってきた翌朝、グライアス家には1通の手紙が届いた。




