9 嬉しくないお誘い
それからというもの、お母様はラジオ体操やお散歩といった軽めの運動を私と一緒にし、食事もきちんと食べたおかげで次第に顔色もよくなり健康的になってきた。
お父様はというと、たまにひとりで出掛けることも多いが毎日朝と晩はみんなで食事を食べれるように予定を調節してくれている。
あるときの夕食中、お父様は顔を歪ませて私に話を切り出した。
「リリィにとっては良い話だか、私にとっては悪い話だ。……次期国王であるメードリア家のご長男、ウィリアム様の茶会に招待されている」
ウィリアムきたーーー!この人には絶対に関わってはいけない。この人に関わると私は死ぬかもしれないのだから。絶対に行きたくない。死にたくない。
「まあ!なんて光栄なことでしょう!リリィちゃん楽しみね!」
「そうですわね。……でもどうして私なのです?」
「リリィが帰ってきたことはそこら辺の子爵家、侯爵家ではちょっと話題でね。それが国王家の耳に入って、人目見ようと定期的に開いている茶会に呼んだらしい」
「それって、断るとどうなりますの?」
「私はすごく喜ぶのだが……国王家の誘いを断るとすると、ちょっとこれからお父様が大変だな。国王家でなければ全力で止めるのだが……」
まじですか。お父様は今にも泣き出しそうなくらい心配そうな顔をしている。泣きたいのは私だ。死活問題なのに。それとは裏腹にお母様のテンションは上がっていく。
「またとない次期国王との社交の場よ!リリィちゃんが可愛いからって婚約してください~とか言われないかしらっ。ルイ様もリリィちゃんもなに辛気くさい顔してるのよ!茶会に行くと決まればお洋服とかお化粧とか、私、いろいろ張り切っちゃう!」
「リリィ……文字通りお茶だけ飲んで帰ってきなさい」
お父様は私にだけ聞こえるような声でそっと呟き、私は頷いた。もちろんだともパピー。国王家主宰のパーティーとかお菓子が美味しそうとしか思わない。ザッハトルテあるかなぁ。
■ ■ ■ ■
そうして1週間後。早朝からお母様と侍女たちに囲まれて盛大に用意して疲れきったあと、私は馬車に乗ってメードリア家に向かった。
帰りたい。社交辞令としてウィリアムに挨拶を済ませたら絶対に2度と彼の前に行かないでおこう。ヘンに印象付けられないためにも。車内であれこれ考えているうちに馬車は止まり、ご到着致しました。と御者が教えてくれた。
足が重い……。お茶だけ飲んでくるだけ、ザッハトルテ食べてくるだけ。そう呪文のように唱えながら屋敷のなかに執事に案内されるままに入った。
案内された部屋は真ん中に大きなテーブルが数個あり、前世で私が通っていた体育館くらい広かった。テーブルにはいろんな種類のお菓子が芸術作品のように並んでいた。
招待されたいたのは私と同い年くらいの女の子が多い。もちろん、男の子もいたが人数の比率は圧倒的に女の子の方が多い。だいたい全員で40~50人くらいだろうか。女の子のほとんどはこれでもかと言うほど派手なドレスを着ていて装飾品も豪華であった。その上、虎が獲物を捕まえるときのような目付きでいる。この中のほとんどはおそらくウィリアムに見初められようという魂胆があるらしい。
私もお母様のおかげで多少はきらびやかな服装はしているものの彼女たちとは比べ物にならない。もう、気合いがすごい。怖い、怖い。
さてと、私はお菓子を物色しよう!ザッハトルテも期待できそうだし。
私がさっそく中央のテーブルへ行こうとした。その時。
「ふふ、あなたは殿下よりお菓子の方が良いのかい?」
不意に声をかけられた私は振り返ると、ターコイズブルーの髪の毛の端正な顔の持ち主がそこにはいた。
お、お前は____アライズ・ナイツハイル!?




