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コノヨノハトハ  作者: 藤咲き 真崎
2/2

黒い猫

キーンコーンカーンコーン……



「よし、いいか? せーの!」


ドンッと机を遠慮なく叩く音が教室内に響く。

その音がした辺りいた生徒は、「ちょ、うるせぇよ」とか「きゃっ。……んもうっ」とかその音を鳴らした男子生徒四人に不満を言ったが、男子生徒四人は気にせず話を続ける。

この四人は完全に自分達の世界に入り込んでいた。



男子生徒四人は机の上に置かれている四枚の紙を見比べながら、「はい勝ったー」とか「はぁ? この教科は俺が勝ってるしー」とか「総合は俺が勝ってんじゃん」とか「マジ萎えるわー」とかふざけあいながら笑ったりしてはしゃいでいた。



ーーどいつもこいつもうるさい。



そんな教室の風景を見ながら一人の男子高校生、樋里口蓮磨ひりぐちれんまは思った。


十月八日の金曜日、この日はテスト休みの次の日で当然テスト返却が行われていた。

テストを返された生徒は他者多様の反応を見せながらもこの日は無事に終了の鐘を鳴らしていた。



今は終礼の直前で教師が来るまで先程みたいにテストの結果を見せ合っているのを所々に見られた。


蓮磨はその輪に入ろうとも勧誘もされずにただひたすら帰る為の準備をしていた。



今日がテスト返却の日ということもあり準備は二分足らずで終わってしまった。

蓮磨は何をしようかと悩んでいると、いつの間にかぼうっと外の風景を眺めていた。


時刻が夕方なので雲一つもない茜色をした空には餌場から塒へ帰ろうとする鳥達が群を成してグルグルグルグルと同じ所を飛び続けていた。その中には大群から一歩二歩遅れて頑張って追いつこうと懸命に空を翔ける鳥が数匹いた。

多分あの鳥達は鬼の形相で大群に追いつこうとしているが、それが叶わないでいるのだろう。



ーーあの鳥達は『鳥の才能』が無かったのだろうか。



「終礼始めるぞー。席つけー」



教室のドアを開けながら入って来た担任の教師は少々大きめの声を上げながら生徒に着席するよう促した。


蓮磨は黒板の右上に付いている時計を見やる。

針が刺している時刻は四時二五分。

何をしてたんだと蓮磨は担任の教師の所為で早く帰れない事に心の中で悪態を付いていると、

「ドンッ」と何かと何かがぶつかる音が耳に入る。

音の方へ目をやると蓮磨の机が反時計周りの方向に三十度程度回転しながら少し前へと動いていた。

一人の男子生徒が蓮磨の机の右上角辺りに当たったのだ。


機嫌が悪かった蓮磨は視線をその生徒に移すと恨めしそうに睨んでやった。

だが、その生徒はそんな蓮磨を一度一瞥したが、何も無かったように通り過ぎて行く。

そして謝りもせずに自分の席へ戻っていった。


そんな態度を取られた蓮磨は心底イラつきながら顔には出すものの何も不満を言うこと無く机を元に直した。


担任の教師はその一連の出来事を気づかずに終礼を始める。


「テストが終わって浮かれていると思うがくれぐれも指導に掛かることはしないように」と、どうでもいい話がヅラヅラと続いて、終わったのが四時三十五分。


終礼が終わると、「終礼長いわ」と不満を口にしながら今から何処で遊ぶだとかで賑わっていた。



蓮磨は終礼が終わったがすぐ教室を出て行った。

廊下も教室と同様、円を作りそんな感じの話で盛り上がっていた。

蓮磨は輪の邪魔にならない様にスルスルと横を通り抜けて行き、一階にある下駄箱を目指す。

一つ一つの輪の幅が結構狭いのではっきり言って大変邪魔だ。

しかし、テストが終わるといつもの事でなので下駄箱に付くのはそんなに遅くは無かった。


上靴から外靴に履き替え颯爽に校門を目指して歩き出す。


終礼が終わるのが少し遅かったのもあり、グラウンドには部活の人以外にも下校中の人が沢山いた。

そこでも今日遊ぶのが楽しみとか言う話をして花を咲かしていた。



正直聞き飽きたたし、ぶっちゃけうざい。点数が悪くて落ち込んでいたのに終わったら遊ぶことで一杯のようだ。めでたい頭のようだ。落ち込むぐらいなら一目散に家へ帰ってテスト直しぐらいしたらいいのに。



そう思う蓮磨の気持ちを尻目にその話題は尽きることなく、続けられていた。

早く校門を出たくなった蓮磨は自然と早足になり集団をズンドゴズンドコ追い抜かしていってすぐに校門を出た。


校門を出て左折すると、急な下り坂になっておりそこを下りきるとT字路の交差点に出る。


右折して数分歩けば駅に着くのだが、蓮磨の帰宅路はこのT字路を左折するのだ。蓮磨の家はこの学校の近くにあり、登下校は徒歩十分程度。


蓮磨はそのT字路を左に曲がり少々複雑な住宅地に入ったが、迷う事なく進んで行く。

家以外は本当に何にも無く、帰り道の途中で寄り道なんてことはこの住宅地に来た時点で考えない方がいい。強いて言えば所々に自動販売機があるぐらいでジュースを買ったところで寄り道にはならないだろう。


後三分ぐらいで家に着くところまで来た蓮磨はいつも通りに最後の曲がり角を右折しようとした。すると、


「ーーニャオーン」


左側から猫の鳴き声が聞こえ咄嗟に振り返る。

当たり前だがちゃんと猫はいた。その家で飼われている猫なのかは不明だが、その家の灰色の煉瓦で積まれた塀にお座りをしていてじいっと蓮磨を見ていた。


その猫はとても愛らしく、夕日の日射しで黒色の毛並みがキラキラと輝いていてとても綺麗だった。



蓮磨はその猫に目を離せないで猫同様にじいっと見つめていた。


決して猫に見惚れていた訳では無い。


……いなかったのだ。蓮磨が曲がり角を右折する前には。ただ灰色の塀しか無かったのだ。

それが忽然と姿を現したのだ。まるで魔法でも使ったかのように。

そんな光景を目の当たりにしたが何も感情が湧いてこなかった。不思議と冷静だった。これが異常な光景だと頭が理解していても心は冷静だった。



ただ目が離せないでいた。



ーー目を離してはいけない、そんな気がしていた。



蓮磨は猫を見ていたせいで曲がった先の道を全然見ていない。 それにより蓮磨はその曲がり角から人が近づいている事なんて蓮磨は気付けなかった。



右腹辺りに突如何かに衝突する。


「ひやっ!」


甲高い音を聞きながら蓮磨は左向きに倒れていく。

猫のせいでからっしき注意を逸らされていたので突然のことで自分が何かとぶつかったと気付くには少し遅かった。


気付いた時には自分の体は斜め四五度左側に傾いていた。


蓮磨は咄嗟の判断により左腕から地面に倒れそうな形から背中を地面向けて倒れるように調整し頭を少し上げて、そのまま地面にぶつかった。


背中に衝撃が伝わりそこから鈍い痛覚がドーンと襲いかかる。



これが結構痛かった。 背中がジンジンする。



蓮磨は背中をさすりながら上体を起こした。後ろを見るとすぐそこに塀があった。

この距離からすると後数センチで頭を打っていただろう。

それなりの勢いで倒れたからもし当たっていたなら大惨事になっていたかも知れない。


そう思うと身体がブルッと震えた。

これこそ不幸中の幸いと言ったところだろう。


しかし蓮磨と衝突した何かは不幸中の不幸とでしか言えない、非常に大変なことが起こっている。

ちなみに衝突した何かは言うまでもなく人だった。制服を着ていて、その制服は妹が行っている公立の中学校の女子制服なので女子中学生ということが分かった。



その女子中学生は左足を溝の中に入れたまま倒れてしまっている。あの溝は中々深く、膝ぐらいの高さまであったはずだ。衝突した勢いであの溝に落ちたのだから、足をぐねっていてもおかしくはないだろう。


蓮磨は未だ動かない女子中学生を念の為助けるため、立ち上がり様子を見に行った。歩いている最中に先程の塀を見たが、もう猫の姿は何処にも見渡たら無かった。


今思うとあの猫はとても不気味だった。


忽然と現れていつの間にか消えていた。


「何だったんだよ一体……」


蓮磨はそうつぶやきを残してこのことを一旦置いて路上で倒れている女子中学生を助けに行った。


「おーい」


蓮磨は女子中学生に意識があるかの確認の為に声を掛けてみたが、


……反応無し。


「おーい、起きろー」


肩を叩いてみたが一切反応がない。


「いつまでもそうしてるとスカートの中の真っ白なやつがおじさんとかに見られんぞ」


「何で私の下着の色知ってるの!?」


蓮磨は上体を起こした際に見えた下着の色を言うと女子中学生はさっきまで気を失っていなかったような反応を見せた。


上体がもう完全に上がっている。


「もしかしてずっと起きてた?」

「違う、昇天してた」

「いや昇天ってなんだよ」


蓮磨は頭を打っておかしくなったのかと思った。


女子中学生は周り見渡しながら、


「あれ? さっきまで何してたっけ。ええっと確か……」と言った。


この反応を見る限り昇天してたというのはあながち間違えではないのだろうか。本当に起きていたならば少しひっぱたいてやろうと思っていたが。


女子中学生はしばらくブツブツ言っていると、突然思い出したかのようにポンっと左手のひらに拳型の右手を軽く叩いていた。


「あ、そうだ! 猫に気を取られていたら前から人が来ておもいっきりぶつかったんだ!」


女子中学生は先程自分が何をしていたかを確認するように大声を出した。


「いきなり大きい声出すな。びっくりするだろ」


女子中学生は蓮磨を見て、衝突した相手と理解してのか顔を真っ赤にした。


「すみません! 私が余所見していたばかりに……いてっ」


謝りながら立とうしていたが、脚を怪我をしていたらしく膝を屈していた。


「おい大丈夫か?」

「は、はい。大丈夫です」


口では大丈夫と言いつつも立とうとしないのは大丈夫ではないのだろう。


「大丈夫じゃないだろそれ。立てるか? ほら、肩貸すから」


蓮磨は女子中学生の左腕を取り自分の左肩まで腕を回して、右手で女子中学生の左横腹を支えた。


「よし立つぞ。せーのッ」

「え、ちょ、ちょっと、ちょっと待って!」


蓮磨はその状態で立ち上がった。

女子中学生は蓮磨に左腕を首に回されていたことにより自然と右足に体重がかかる。


「痛い、痛いから! 離して! 右足もぐねってるから!」

「お前、右足もぐねってるのかよ。 ちょっと待て。 すぐおんぶするから」


蓮磨は一旦先の状態に戻してから女子中学生の両腕を自分の胸ぐらいの位置に持って行き、しゃがんで女子中学生の膝の関節を持った。


「じゃあ行くぞー。せーのッ」

「ちょ、待って。ほんと待って!」


蓮磨はその状態で立ち上がった。


「何だ、まだどっか痛いのか?」

「違う! む、胸、当たってるじゃん! 別に私の腕を肩に置いたらよかったじゃん!」

「……? 別に中学生ぐらいの胸が当たったぐらいで健全の高校生は興奮しないぞ?」

「そういう問題じゃないわ! てかちょっとは興奮しろよ!」

「じゃあもうちょっと大きくしろ」

「殺す!」


蓮磨は自分の頭をわしゃわしゃしている女子中学生をギリギリ女子中学生の足が着地するぐらいまで腰を下げ手で支えている両脚を離してやった。


「ふぎぁぁぁぁぁぁぁ!!」



こんにちは。

藤咲き 真崎です。


プロローグから一話を投稿するまで一日もかかってしまいました。笑


先に申し上げるのを忘れていましたが、投稿は遅いペースでなると思います。


ではまた……



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