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道場やぶり





的場龍はいわゆるケンカ無敗で通ってきた。


小さい頃に父親を無くし、仕事で忙しい母親から十分な愛情を注いで貰えなかった彼は、次第に心が荒んでいきケンカに明け暮れたのは致し方ない末路と言える。

中学に上がってからは更に凶暴性に拍車がかかっていった。

多分彼はどうしょうもないイライラなどをケンカで晴らしていたのだろう。

だが彼は中学一年の時、同じ中学の怪物東堂とケンカをして敗北、それからは次第に心を閉ざすようになっていった。



同じくケンカ無敗の安達健は家も安定していた。


何が彼の心を変えたのか、それは未だに分からないが一つ言える事は、龍も健も自然と不良となっていったのは確かである。


幼馴染みであり、不良。

組めば間違いなく頂点(てっぺん)を取れたであろう二人が何故組まなかったのか……

同じ不良と言えど、境遇の違いが違うタイプの不良として二人を育てたのだ。


片やなるべくしてなった不良、片や自らの家庭の境遇でなった不良。



だが彼女は信じて疑わなかった。



まだ彼等は引き返せると、元に戻れると。


綾川ルミネは信じて疑わなかった。




「ただいま。」


龍が帰宅したのは午後4時のことだった。

あの後学校に居ても意味がないと思った龍は漫喫で時間を潰し、家へと帰ってきたのだ。


「誰もいねェンか?」


龍はリビングの方に顔を出す。


「あ、おかえり。」


「ンだよ居ンじゃんよ。」


リビングには美羽がテレビを見ていた。


よほど夢中になっていたのか、龍の帰宅に気付いていなかったようだ。


「母さんは?」


「寝てるよ。今日も仕事あるから。」



龍は冷蔵庫にあった牛乳をラッパ飲みし、元に戻す。



龍の母親はキャバ嬢で、龍はいわゆるできちゃった結婚で産まれた子である。

若くして龍を産んだ母親は、父親が死んだ後せっせと働いている。


「そうか。俺ちょっと出掛けてくるからヨ。メシはいるって言っといて。」


「また出掛けるの……?」


少し寂しい顔で美羽は龍を見る。


美羽はまだ小学六年生だ。

父親もいない、崩れかけた家庭にいる中、ただでさえ少ない家族が居なくなるのが不安なのだろう。

むしろ美羽もよくグレなかったなと、龍は思う。


「ちゃんと帰ってくるから心配すンな。お前は絶対……俺みたいになンなよ……。」



龍は制服のまま家を出てとある場所まで向かった。



そこは一つの道場。


小さいころに龍が通っていた道場で、今は行っていないがちょくちょく顔を出すようにはしている。


「チワッス。」


道場の戸を開け一礼し、中へと入る。

道場にはたくさんの門下生と師範らしき人、それとその横に一人の少女が座っていた。


「おう的場くん。よく来たな。」


そう声をかけてきたのはここの道場の師範である芹沢京平。

実戦格闘技の師範にして俺のかつての師だ。


「あ、いらっしゃ〜い!!」


そしてその横に座っていた少女が龍に飛び付いていく。

少女の名は芹沢椎茄(せりさわしいな)


端正な顔立ちにセミロングをひとまとめにしたポニーテールが特徴的で、龍の一つ下にも関わらず身長は龍を抜いている。

彼女自身もそれはコンプレックスと感じているため、門下生の誰もがその事には触れない事にしている。


一応今の門下生の中では一番強い。


「おぅおぅ久しぶりだな椎茄。元気してたか?」


「んもぉ超元気ですよ!!しかも先輩に会えたから更に元気です!!」


絵に描いたような明るく元気な娘の椎茄は龍から離れる気配はない。


道場の門下生はそれを殺意の目を以て眺めていた。


「わかったわかった、いいから離れ。」

「ンむぅ……!!」


龍が椎茄の頭を押して離すよう促したため渋々椎茄は龍から離れた。


「相変わらず椎茄は龍くんが好きだな。どうだ?いつか籍を入れてみンか?」


「考えときますよ。」


「マジっすか先輩!?」


師範の冗談に冗談で返したはずなのに、完全に椎茄は勘違いを果たしていた。


龍はそんな椎茄を放っておいて師範との話を進める。


「実はちょっと闘いたくて……暇そうな人は居ませんかね?」


「闘いたい……か。生憎君と張り合える位の奴は……」


「私が行きますよ?」


背後から椎茄の声がし、龍にもたれ掛かって話に割り込んできた。


「……じゃあやるか。」


「オス!!」


上着を脱いで道場の中央に行く龍と椎茄。

練習中だった門下生は急いで道場の端に避け、二人の闘いを見守った。


「時間は無制限一本勝負。」


審判は師範が務める。


「手加減なしでこいよ?」


「手加減出来るほど強くないので。」


「始め!!」


師範の合図と共に椎茄が動いた。

一見ゆっくりとした動きだが、見た目ほど遅くはなく仕掛けにくい。

急に椎茄が体を捻り跳び後ろ蹴りを放った。

蹴り技では最強の威力を持つ蹴りは龍の鼻先を掠めた。


「危ねッ!!」


着地をした椎茄に龍はすかさず攻撃を仕掛ける。

椎茄も着地と同時に道場の床を蹴り、龍との距離を取った。


「シッ!!」


だが龍が逃がすわけがない。

すかさず跳び蹴りが炸裂し、椎茄を追撃するが椎茄は龍を掴んで床に叩きつけた。


「カフッ……」


「だ、大丈夫ですか!?」


「大丈夫だ……続けるぞ。」



背筋を使い、足を上げた反動で立ち上がる。


「強くなったな椎茄。」


「一応ですが。毎日訓練してるんで!!」


近くなった距離。

龍よりも腕の長い椎茄は牽制の為のしょう掌を繰り出す。


一瞬の出来事だった。


腕の長さは確かにし椎茄の方が長い。


だが龍はそれに勝る足の長さを使い椎茄の膝を攻撃、体勢の崩れた所に最低限の力を使った合わせざまのフックを顎に入れて椎茄の脳を揺らした。


「ナ〜ックダゥ〜ン。」


龍が呟くと椎茄は力無く倒れ、龍はその体を片手で支える。


「勝負あり!!」



五分の闘いとは言い難い、明らかに龍の方が勝っていた。


「すいません。参ったと言わせる手が思い付かなかったンで眠らせました。」


「構わん。しかし相変わらず強いな。秘めたる才能は……計り知れん。」


師範の誉め言葉に龍はペコリと頭を下げる。


「もう一度入門しないか?」


「結構っす。今の俺は……何もかもやる気起きないンで……。」




上着を着ながらそう答えた龍は椎茄が目を覚ますのを待っていた。




意識の飛んだ椎茄が目を覚ましたのは闘い終わってから五分後のことで、闘ったときの記憶は綺麗さっぱり飛んでいた。


「あ……あれ?」


「おぅ起きたか。」


「私……何やってたの?」


「……大丈夫か?」


流石の龍もこの事態には心配する。

だが椎茄は問題ないといった様子で立ち上がった。


「大丈夫です先輩。所で闘いますか?」


「いや、いいワ。」


龍は笑いながらそう言って、師範に一礼をし道場を後にした。


「…………。」


まだ確かな感覚を覚えた右手を握り締め、龍は家路を歩き出した。




『みぃとサリーの後書き無駄使いコーナー』



み「だからお願い〜そばにおいてね〜」


サ「今はあなたしか愛せない〜」


み「テレサ・テンでこんにちわ」


サ「なんでこう作者は無駄に知ってるかね古い歌。前は天城越えとかあったし」


み「まぁそんなことより梅雨ですよ梅雨。ばいうです、ジメジメした季節はイヤですよねホントマジで」


サ「華麗に私はスルーですかそうですか。梅雨はイヤですよね」


み「早く夏になってほしいです」


サ「夏はもっと嫌いです」


み「意外に夏とかって遊びに行く気失せるんだよねミーは」

サ「井戸の中はひんやり気持ちいいです」


み「まぁ……後書きに書くことあまりないし」


サ「したら私たちの出番は」


み「果てしなく皆無になります」


サ「見捨てないでくださいね」


み「ガルハン本編もよろしく」

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