ゆーじ
ガンバレやーい!!
次の日、的場龍と安達健は当然の如く学校を遅刻した。
意外にも遅刻はあまりしない二人だったので、起きた時にはスゴク焦ったようだ。
そして結局学校に着いたのは昼休みであった。
「あっちぃ〜!!走りすぎたぜチクショー。」
完全に遅刻する時間だったにも関わらす、龍はいつもの癖で走ってしまい、只今自分のクラスで下敷きの団扇を扇いでいる。
誰も遅刻してきた龍に興味を示したりしない。
いや、示すことができない。
下手にかかわり合って火傷をする馬鹿なことはしないのだ。
ただ一人を除いては……だが。
「よう的場くん。」
「…………何?」
昨日龍に絡んできたあの不良が懲りずにまた龍に近寄ってきたのだ。
「何?何だって?テメェが昨日よぉぉ〜、俺にケンカ売りやがったから健に根性焼き入れられちまったじゃねェかよ。」
そう言うとヤンキーは自分の手の甲に残された痛々しい火傷の跡を見せつけた。
勘違いも甚だしい……。
自分は絡んで欲しくない、そう言う態度を取ってきたのに何故自分に絡んでくるのだ……?
龍にとって、今は友達と言えるような奴は健しかいない。
健だけでいい。
「だからちょっと付き合ってくれよ。ブン殴るからよ。」
「ヤダね。」
無表情で拒否をした。
だがヤンキーはその態度にキレて、龍の胸倉を乱暴に掴んだ。
「テメェマジで調子コイてッとブッ殺すゾ!?いいから来いやチビ!!」
「……懲りねぇな。それに付き合えだ?アホか?ここでやりゃあいいだろ。今、ここで……よ!!」
手にした下敷きを相手の顔に投げて怯んだ隙に、座ったまま相手の膝を蹴った。
「ぐッ……!!」
「飛べオラァ!!」
龍はバランスを崩した相手の顎にアッパーを叩き込む。
「ぐぼァッ!!」
血しぶきと共に砕けた奥歯が教室に飛び散った。
「あがが……が……!?」
「まだ意識あるンだ?じゃあトドメさを刺さないとだね。」
「や……やべて……」
すっと上げた足を相手の顔の上に持っていき思い切り鼻を踏み潰した。
ゴキッという鈍い音がし、ヤンキーの鼻が異様な方向へと曲がる。
「ギャアアァァァ!!」
「伊達になったなオメェよぉ。ハッハハハ!!つぅかウルセェって。」
罪の意識もない龍は鼻を押さえて転げ回る相手を笑いながら覗き込んだ。
程なくして叫び声で駆けつけてきた健とその取り巻きの数名の不良が教室の惨状を見て絶句した。
「こりゃあ……どーいう……」
「…………。」
龍と健は互いに目を合わせたまま喋らなかった。
クラスメートも事の顛末をただ見守ることしかできない。
「ぐが……鼻……はがが……」
「祐二!!おい大丈夫か!?」
健の取り巻きの一人が龍にやられたヤンキーこと祐二に気付き駆け寄る。
「おい大丈夫かよ!!……テメェクソガキャァ!!」
「ヤメロ!!」
今まさに龍に殴り掛かろうとした所を健に止められた。
「でも健、コイツは祐二をやったンだぞ!?」
「わかってる。でもなジョット、オメェが勝てる相手じゃねェ。」
確かに、ジョットが殴り掛かろうとした時、既に龍の拳はジョットの顎に叩き込まれんとしたところだったのだ。
「チッ……やってみなきゃわかンねぇぜ?」
「だからヤメロっつってンだろうが。テメェ、俺に顎砕かれてェンかヨ?」
「……わかった。でもな、お前がいくらコイツを庇っても、いつかは我慢出来なくなるぜ。」
気まずくなった空気の中、遅れてやってきた教師達が教室を見て固まった。
「こ……これは一体……!?誰だこれをやったのは!!」
教師の一人が大声で問うも、教室のクラスメートは誰一人として何も言わない。
あとの報復がみな怖いのだ。
だがそんな中、龍が無言で教師達の前に歩み出た。
「俺がやったよ。」
短く、極力教師とは話したがらない龍がたった一言だけそう告げる。
だが理由云々は関係なく、かねてから問題児である龍を連行するには教師達には十分だった。
「花村先生、怪我人を保健室までお願いします。あと的場、お前は付いて来い。」
そう指示する教師に龍はただ黙って付いていく。
だが健は知っていた。
龍が自ら手を出すことはしないと。
また祐二が龍にケンカをふっかけたか、もしくは手を出したのだろう。
龍は健と目を合わすことなく、教室から出て行った。
「あ、龍……。」
途中すれ違ったルミ姉が教師の後を不機嫌な顔で付いていく龍を見て声をかけたが、龍は目もくれることなく行ってしまった。
「さて……どういうことだ的場?最近大人しくなったと思ったらまたケンカして……」
「別に……」
「別にじゃないだろ!!何でケンカなんかした?」
龍の目の前にいるハゲがかかった教師……何かと龍を目の敵にしているが、大方学年主任を任されたから問題を起こす人種が嫌いなのだろう。
自分の利益だけを考える汚ぇゴミみてぇな教師……龍が一番嫌いなタイプの教師だった。
「じゃあ逆に訊くけど何でケンカしちゃダメなンだよ?」
「……ダメなものはダメだからだ。」
答えになっていない答え……
龍はあからさまな態度でハァッと溜め息を吐いて深く腰掛けた。
「わかンねぇなら生徒に教えンなよ……」
「的場……先生に向かってその態度は何だッ!?」
「先生、先生って……先に生まれただけだろ。それとも何か?アンタは俺に何でも教えれるくらいにもの修めたンか?」
飛んできた唾を拭き取り大胆不敵な態度を取り続ける。
「田川先生、もうそれくらいでいいじゃないですか。」
突然、龍と田川先生二人だけの教室に女性の声がした。
二人が目をやるとそこには長い黒髪をひとまとめにした誰がどうみても美人な女教諭が立っている。
「井崎先生……」
「田川先生、頭ごなしに叱っても意味がありませんよ?」
「しかしですね、」
「私が何とか説得しますから。」
井崎先生は田川先生を部屋から追い出し、龍の向かい側の椅子に座る。
「さて、やっちゃったのか龍は?」
「……。」
友好的な……否、むしろ友達的なノリで話しかけてきたこの教師。
名は井崎泉で、珍しく生徒の目線から生徒と触れ合う教師で生徒のみんなから人気を博している。
そして唯一龍が心を開いている教師でもある。
「まぁこれも青春だわね。」
「……向こうから先にケンカ売ってきたンだからな。」
「でも君は怪我をしていない。なんにせよ、手加減はしなきゃ。」
優しく諭すように言うが相変わらずむくれたままの龍はなかなか井崎先生の言うことに耳を貸そうとはしない。
「やるからには……全力でトバす。」
「全く……そんなことばっかり言って……そろそろ生き方変えなきゃ。まだまだ子供なのにそんな生き方して可愛くないよ?」
「可愛くなくていいよ。もういいだろ?俺がやったンだし、怪我させたのも俺。話すことはもう何もないし、俺は帰るぞ。」
井崎先生などお構いなしといった態度で龍は扉を開けて出ていってしまった。
「ふふ……子供扱いしたら怒っちゃった。まだまだ子供ねやっぱり。」
一人残された井崎先生は龍に聞こえない程度に呟いた。
「ンァ……ルミ姉……?」
龍が廊下を歩いているとルミ姉とカチ合った。
今は授業中の筈だが優等生であるルミ姉がこんな所で何をしているのか?
訝しながらも、話しかけることなく脇を通り過ぎようとしたら不意にルミ姉から声をかけてきた。
「また……ケンカしたンだね……。」
「……それがルミ姉に関係あンのかよ?」
龍は振り向かずに答える。
「もう……やめなよ。こんな事続けても意味ないじゃない!!」
「意味がない……確かにな。だけどさ、俺は全てがメンドイから今の状態になったンだ……今の状態から変わりたくないね……メンドクサい。」
「龍!!いつまでもそんなガキみたいなこと言ってないで、変わろうとする努力をしなさいよ!!」
ルミ姉が一喝し終わるのと、龍がルミ姉を壁に押し付けたのはほぼ同時であった。
ルミ姉は龍に押さえられたまま壁に叩き付けられ、手出しができない状態に持ち込まれる。
その距離はキスがすぐ出きるような距離で、端から見れば今にも龍がルミ姉に迫ろうとする様に見える。
「ルミ姉よ……俺に意見すンなら……俺を変えたいなら力ずくで変えるしかねェよ。」
「イヤ……よ……!!そんなの結局龍と同じじゃない!!」
「俺らみたいな奴等はな……言ってもわかンねェからケンカすンだぜ……?ルミ姉、本気で俺を変えたいと思うなら……俺を潰せ……。」
それだけ言うと手を離し去っていく。
一人廊下に取り残されたルミ姉は壁にもたれ掛かったままズルズルと腰を落としストンと尻餅を突く。
「なんで……あの頃に……戻りたいよ……。」
ルミ姉の目からは涙がこぼれ、頬を伝う一筋の涙となって静かに床に落ちていった…………
『みぃとサリーの後書き無駄使いコーナー』
み「二日連続更新ってすげぇ」
サ「まぁ書き貯めしてるからね」
み「関係ないから」
サ「関係あるから」
み「さてルドラでの立ち位置が明らかになってきました」
サ「ただのヤンキーじゃないですか」
み「ヤンキー小説だし」
サ「つぅことは私達の出番ははいですな」
み「果てしなく皆無ですな」
サ「猫ミミ幼女に需要はないでしょ。むしろ邪魔?」
み「犬ミミ貞子に出番はない。遠吠えしてなさい合成獣」
サ「合体なめるな。あなたと合体したい」
み「無限パンチ!!」