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呪いのニワトリ転生  作者: 黒服先輩
第二章 ケリティカ山攻略戦
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ケリティカ山の激闘


 立ちはだかるのはシュッツと名乗る不気味な男性。


「私がアイツを殺る。アンタは援護よろしく」

「了解……!」


 レリーシアとジャラックが呼吸を合わせている。

 目の前の男の所為か、額から垂れる大量の汗。このダンジョンの温度は大して高くはないのに、まるでこの場だけ他と隔離されたかのようだ。

 レリーシアは一歩、剣を構えながら踏み出すと、


「いくよ………!」


 そう口にした瞬間、シュッツに向けて放たれる渾身の一閃。先ほどシュッツに向けて放ったのとは明らかに違う初速の速度だ。

 シュッツはナイフを取り出した。

 ナイフを逆手に持ち、


「はあっ!!」

「甘いっ!」


 レリーシアは声を込めて放った一閃を、シュッツはナイフで軽くいなした。流石に、調査隊を全滅させたと言うだけはあるようだ。

 レリーシアは自分の攻撃が無力化されたと悟ると、


「ふんっ!!」


 即座に剣を再び振りかぶって、シュッツ目掛け斬撃を放つ。威力で言えば、先程の一閃以上だろう。

 しかし、シュッツはそれすら無効化した。

 正確に言えば、避けたのだ。まるでそこに斬撃が飛んでくることが分かっていたかのような、無駄の無い動きで。


「おや、こんなもので?」

「舐めるんじゃないよ………!」


 煽り気味のシュッツを、レリーシアは鋭い眼光で睨みつける。それはまるで、獲物を狩る猛獣が如くだ。


「はあぁぁぁぁ!!」


 そこからレリーシアは幾度となく斬撃を放った。

 重い一撃、素早い一閃、上下左右から縦横無尽に飛ぶ斬撃達を、シュッツはナイフでいなし、見て避け、無効化していった。

 実力差を感じさせるシュッツの不気味な笑顔は絶えない。しかし、


 スパッ

「むっ……?」


 突然と、シュッツの動きが鈍くなった。

 シュッツは何かに気がついて、一度バックステップしてレリーシアから距離を取った。

 レリーシアの剣の射程外に入った所で、シュッツは自分の顔に触れてみる。

 触れるその手には、血がべったりと付いてた。


「これは………」


 シュッツは気がつく。自分の片耳が斬り落とされていた。先程の斬撃の中で、いつの間にか切られていたのだろう。

 シュッツは自分の手からレリーシアへと再び視線を戻して、


「ははっ、なるほどね。伊達にも彼等の隊長か……」


 そう、笑ってみせた。


「オーケーオーケー、そんじゃこっちも本気出すよ。負けちゃったら元も子もない――――」

「悪いけど、アンタの出番はもう無いわよ」


 シュッツの言葉をレリーシアが遮った直後、レリーシアが身体を横にそらしたのと同時に、後方から放たれた一発の弾丸。

 弾丸を撃った主はジャラックだ。

 弾丸は真っ直ぐにシュッツへと向かい、そしてそのままシュッツの右肩を貫いた。


「グオッ!?」

「それと、アンタを生かすつもりも無いよ」


 よろめくシュッツの耳に、レリーシアの低い声が届いた。

 シュッツがレリーシアへと再び視線を戻した時、レリーシアは既に攻撃範囲に入っていた。


(狙うのは左腕!さっきの狙撃で右腕の動きは鈍くなっているはず。だったらここでもう片腕を奪って、攻撃の手段を絶たす!)

「なんて、思ってんだろ?」

「!?」


 レリーシアが脳内で組み立てていた作戦を、シュッツは予測していた。

 飛び込むレリーシアに向けて、シュッツは左脚からの回し蹴りを放つ。


(さぁて、先ずは一人目………)


 シュッツは間違いなくレリーシアを倒した。そう思われかけた時だった。


 グサッ

「痛っ!?」


 突如シュッツの左脚に轟く激痛。

 シュッツの足には、一本の剣が刺さり、シュッツの身動きを奪っている。

 剣はレリーシアのものではない。その剣は、仲間達の死に身体を震わせていた調査隊の隊員だった。レリーシアがシュッツに辿り着くギリギリの所で、間に合っていた。


(………ははっ、こいつは一本取られたなぁ……)


 と、シュッツが思ったのと同時に、レリーシアの振った剣がシュッツの左腕を叩き切った。

 辺りに撒き散らされる鮮血。そこに、シュッツはクタッと膝を付いた。


「いやぁ……見事だよ。いくら儂が本気でないとはいえ、こうまで綺麗に倒されてしまうとわね」

「私だって驚いているよ。あんたみたいなのにうちの隊員が殺られたなんて、ひょっとして冗談かい?」

「いやいや、冗談なものか。嘘なんて必要ない。ただ彼らは、弱かったってだけで――」

「ああ、もういいよ」


 レリーシアはそう言い捨てて、スパッとシュッツの首を切り落とした。

 シュッツは頭はゴロリと転がり、残された胴体はそのまま動かなくなった。


「………けっ、反吐が出るよ。こんな奴に、うちの隊員が負ける筈が無いよ」

「それは俺も知ってる………もしかして、他に味方でも居るのか?」


 ジャラックはシュッツについての予想を立てている。


「だとすると、はぐれた皆んなの方も危ないかもな」

「なら、さっさと向かった方が良いね。皆んな、ここから移動するよ」

「「「はい!!」」」


 一行は、その場から移動することを決めた。

 隊員達はレリーシアの横で、レリーシアの掛け声にたくましく応える。


「いやぁ、まだ移動しないでほしいんだけどなぁ〜」


 突然と、背後から声が聞こえた。

 声は正しく、シュッツのもの。それに全員が目を向けると、そこには腹部を背後から手刀で貫かれた隊員が、口から血を零して立っていた。


「グッ、グフォ………」

「なに!?」


 驚く一行。

 隊員の腹部から腕が抜かれると、隊員は腹部から多量の血を吹き出してうつ伏せに倒れ込み、背後に立っていたシュッツが姿を現した。

 シュッツの身体に、一行は目を奪われる。シュッツの両腕は何事も無かったのように生えており、切られた筈の首もまた何事も無く生え、あの不気味な笑顔があった。


「なんで………首はしっかりと………」

「落ち着けレリーシア!首も両手も、さっき切ったはずだろ。それでもあるってことは、再生したってことだろ!」


 狼狽するレリーシアをジャラックの怒号が静した。

 言っているジャラックも、目の前のシュッツに訳が分からずいた。


(なんだ………こいつ、何者なんだ………!?)


 ジャラックはそう思いながら、シュッツを睨みつける。


「………ふっ、そう慌てるな。しっかりと後で殺してやるよ。こっちの本気、『獄化』でな!!」


 シュッツが口調を変えてそう言い放つと、辺りの空気が変わる。

 重くのしかかる重圧の中で、戦闘は続くのだった。

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