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呪いのニワトリ転生  作者: 黒服先輩
第二章 ケリティカ山攻略戦
50/65

少女の名前は


 皆とはぐれたウェーガンが見つけたのは、子供が通れる程度の穴の先で横になっていた、可愛らしい少女だった。


「………何故?」


 ウェーガンの頭に渦巻く疑問。

 目の前に居る少女が何者なのか、そもそも何故こんな所で寝て居るのか、考えれば余計に疑問は深くなる。

 ふと、ウェーガンは少女の横に無造作に置かれた、大きめのリュックに目をつけた。


(このリュック、旅人か何かなのか………いやでも、こんな女の子がダンジョンに居るのはおかしいだろ。ララとかのパターンはあるけど………)


 ウェーガンは予想を立てる。

 そんなこんなで居ると、


「……ん、んん〜………」


 少女が声を漏らした。

 そしてその身体を起こして、手の甲で開ききっていない瞼を擦った。


「………あれ………?」


 少女の眠気に包まれた目が、ウェーガンを捉えた。


「………ニワトリ……?」

「……あっ、どもこんにちわ………」

「………喋った………」


 ウェーガンが挨拶をすると、少女はウェーガンの不思議な姿をジト目で凝視して、


「………こんにちわ」


 と、律儀に挨拶し返した。


「おっ、おう………」

「なんでここにいるんですか?」


 自分から挨拶しておいて動揺するウェーガンに、少女は丁寧に尋ねた。


「えっ、いや俺は仲間とはぐれたからだけど………そういう君は、なんでこんな所に?」


 そう聞き返すと、少女は少し黙ってから


「………追われてるの」

「追われてる?」

「そう、追われてる。それで逃げてたら、ここに居ました」

「はっ、はあ………なるほど………」


 少女の口から出た事の経緯に、ウェーガンは訳も分からず呆気に取られるしかなかった。


「………どんくらい前から居るんだ?」

「分かりません。今が何時なんのかも………でも、多分三日くらいだと思います………」

(三日………調査隊が行方不明になったのと重ってるけど、何か関係でもあんのかな………)


 ウェーガンがそんなことを考えて居ると、唐突に少女の両手がウェーガンへと伸びてきた。


「えっ………?」

「モフモフです…………」


 少女は動揺し固まるウェーガンの身体を、ぬいぐるみのように触り始めた。


「えっ、なに………?」

「気持ち良さそうだったから………ダメですか?」

「いや、別に良いけど………」

「それじゃあ………」


 申し訳なさそうに聞く少女にウェーガンが触れる許可を出すと、少女はウェーガンを両手で持ち、自分の懐まで寄せて優しく抱き締めた。

 その光景は、周りから見ればぬいぐるみを抱く女の子そのものなのだろう。


(何で俺って、こんなに抱き締められんだろう………この身体って、そんなに良い物なのかね………でもなんか、悪くないな)


 ウェーガン自身抱き締められているその感覚は、ララに抱き締められているのとはまた違った、心地良いものだった。

 少女は目を瞑りながら、ウェーガンのフカフカな感触を堪能している。


「………あっ、そういえば、君の名前は何て言うんだ?」


 借りてきた猫のように大人しくなって抱かられて居たウェーガンが、思い出したかのように少女にそう尋ねた。

 ウェーガンに尋ねられると少女は、


「私は、『リリィ』って言います………」


 そう応えた。

 すると今度はリリィが、


「ニワトリさんは、何ていう名前ですか?」


 そうウェーガンの顔を覗き込みながら聞き返してきた。

 ウェーガンはリリィの顔を見返して、


「……俺はウェーガンだ」

「ウェーガン………それじゃあ、ウェーガンさん?」


 ウェーガンの名前を知ると、リリィは呼び方に迷ったのかそう聞いてきた。


「呼び易い呼び方で良いよ」

「じゃあ、ニワトリさん」


 リリィからのウェーガンの呼び名が、ニワトリさんに決定した瞬間であった。

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