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呪いのニワトリ転生  作者: 黒服先輩
第二章 ケリティカ山攻略戦
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雪色の出会い


「………おい!皆んな無事か!?」


 辺りに響く、ガンダルの声。

 その呼び掛けに応答する、複数の声がある。


「はい、大丈夫………」


 瓦礫を掻き分けながら現れたハルムがそう応えた。

 隊員の一人が松明をつけると、暗闇で見えなかった周囲の全貌が見えてくる。

 落ちる前同様に辺りは遺跡となっており、魔石など灯りになりそうなものは無い。

 今この場に居るのは、ガンダルとハルム、そして調査隊の隊員が五名程度だった。


「こりゃあ………逸れちまったか………」

「そうみたいですね………」


 状況を悟ったガンダルとハルム。

 他の隊員達も徐々に、現状自分たちの置かれて居る状況を悟り始め、表情を暗くする。


「………ここの床とか、脆いなんて情報あったか?」


 ガンダルは違和感を抱いて居た。だからこそ、近くに居たハルムにそう問いかけた。

 ハルムは顎に手を当てて思い出そうとするも、


「………いや、そんな話聞いたことも無いよ」


 結局思い当たらずに、そう答えた。

 今度はガンダルが顎に手を当てる。


「となると、かなり急激に脆くなったってことか?何百年単位で昔の遺跡だぞ?」

「確かに、それは少しおかしい………いや、『魔力変動』が起きたのなら説明出来るか………」


 『魔力変動』とは、空気中に漂う魔素に何らかの影響が起きることで突如発生する現象。辺りに存在する様々な物質にあらゆる影響を与える。


「例えば『魔力変動』の所為で地盤が緩んいたりしたのなら、ありえない状況じゃないのかも………でも、だとすれば何で『魔力変動』が起きたんだ?いくら魔石が大量にあるとはいえ、何でまた………」

「………まあ、今考えたって仕方ないだろう」


 ハルムが考察に勤しむのを、ガンダルの一言が中断させた。


「今は、逸れた他の奴らと合流することの方が先決だろう。案の定松明も無事だしな」

「………そうだね。そうしよう」


 現状自分たちのすることを決めると、ガンダルとハルムは落ち込んで居る様子の隊員達に呼び掛けて立ち上がらせて、その場から離れ他の面々の捜索へと向かう。



 ■□■□■□



「ッテテテ、此処は………」


 レリーシアが目を覚ますと、そこはウェーガンやガンダル達と同様、崩落した床に巻き込まれより深くに落ちた場所だった。


「おう、目ぇ覚ましたか」


 レリーシアにそう尋ねたのは、ジャラックだった。

 レリーシアがジャラックの方に振り返ると、レリーシアはジャラックの足元に、三人程度の人物が倒れて居るのが見えた。

 その三人は調査隊の隊員で、皆が顔の上に、白い布を被せられて居る。


「………えっ、何が………」

「分かってんだろ。俺たちは崩落に巻き込まれた。その結果がコレって訳だ」


 ジャラックの言葉に、レリーシアは察してしまった。

 辺りを見ると、顔を伏せて居る隊員達が四名見受けられる。


「…………他のみんなは?」


 レリーシアは震えた声で、そう尋ねた。


「俺が聞きてぇよ。逸れちまったんだ。無事だとは思うけどな…………」

「………ごめん、ね……」

「なんでお前が謝んだよ?あんな突然のこと、どうしようもねえさ。逆に、どうにか出来た方がおかしいよ」

「でも…………」


 レリーシアからは、自信という物が消えかけていた。

 今や風前の灯火となっている隊長としての自信。ジャラックはそれを察しながら、なんとか励まそうとしているようだ。


「………ったく、お前はそういうタイプじゃないだろ。顔上げろ。死んだ仲間のことでいつまでもクヨクヨしてちゃ、あの世で笑われちまうぞ」

「…………そう、よね………」

「おう。分かったらさっさと――

「おやおや、誰ですかいアンタらは?」


 突然と、暗闇の向こう側からそんな声が届いた。

 隊員の一人がそちらに松明を向けると、暗闇の中から一人の男性が現れた。

 黒のトレンチコートを身に纏った、黒髪の中年風の男性だ。ソイツが真っ直ぐと、こちらに向かってくる。


「誰ですかいとは、こちらのセリフだな。アンタは何者だ?」


 そう返したのは、ジャラックだった。

 ジャラックの言葉を聞くと男性は首を傾げて、


「あっ、ワシですかい?ワシは『シュッツ』と申す者でさぁ」


 男性は何の戸惑いも無く、そう名乗った。


「おや、いまいち見えませんでしたが、アンタらは調査隊ですかい?となると、この前の人らの捜索ですかな?」


 そう尋ねるシュッツと名乗る男性。

 男性の言葉に、ジャラックとレリーシアは引っかかりを感じた。


「……ねぇ。アナタ今、この前の人達って言ったわよね?」

「ええ、言いましたけど………」


 尋ね返すレリーシアに、シュッツはそう応えた。

 レリーシアは唾を飲み込んで、


「………だったら、その人達が何処に居るのか、知ってるの?」

「知ってるも何も、あの人ら殺したのワシですから」


 レリーシアの問いかけに、何とも軽く放たれたシュッツの発言。それが、辺りの空気をより重く変えた。


「……今、何て………」

「いやだから、その人らの殺したのワシですよ。ワシ実はここで人探しをしてましてね、あの人ら邪魔だったんですよ。ですから、殺しちゃいました」


 未だ現実を受け入れられずに居るレリーシアに、非情な言葉を掛けていくシュッツ。

 レリーシアは自分のすぐ横に転がる剣の柄に手を当てて居る。


「あっ、死体なら向こうにありますけど、見ます?」

「………ッッ!」


 その言葉が、レリーシアの怒りを爆発させた。

 シュッツを足を更に一歩前に出した、その瞬間レリーシアは鬼のような形相をしてシュッツに斬りかかった。

 あっという間に詰められた間合い。そこから繰り出された斬撃を、シュッツは紙一重で回避した。


「はははっ、当たりませんよ――」

「これでもか?」

「うおっ!?」


 避けたシュッツの肩を、レリーシアの背後から放たれたジャラックの弾丸が貫いた。

 シュッツは数歩、その場から後ずさる。


「レリーシア!怒りに身を任すな」

「ジャラック………」

「なに、やることは変わらんさ」


 ジャラックはそう言って、手に持った銃のその銃口をシュッツへと向けた。怒りに身を任すなと言ってはいるが、彼もかなりの怒りを抱いているようだ。

 レリーシアの横に並んで、ジャラックは、

 

「殺すぞ。コイツを」

「ええ、分かってる………」


 二人から発せられる、明確な殺意。


「ありゃりゃ、怒り買っちゃったかな………」



 ■□■□■□



「ん〜、どうしたもんか…………」


 ウェーガンは唯一ただ一人で、魔石を光源とする遺跡をピョコピョコと進んでいた。

 当然その一歩は小さく、他の面々と出会うまではまだ時間がかかりそうだ。


(………てか、良く考えたらあまり動かねえ方が良いのかもな。今は居ないけど、いつ魔物と出会うかも分からないし………丁度そこに座れる場所もあるし、一旦休むとしよう………)


 瓦礫が丁度良い高さに転がっているのを見つけて、ウェーガンはそこに腰掛けた。


「ふぅ………ん?」


 ウェーガンはふと、今自分の腰掛けている瓦礫の裏手に目をやると、そこには子供一人が通れる程度の大きさの穴が開いて居た。

 穴の向こうからは、僅かに光が漏れている。その光は魔石などの青色ではなく、火などの温かみのある色合いだった。


(誰か居るのか………?)


 ウェーガンはそう思って、その穴を潜った。

 穴を潜ると、そこには小さめの空間があり、一つのランタンが置かれて空間内を照らしていた。


「………えっ?」


 ウェーガンはそんな声を挙げた。

 最初にウェーガンの視線を集めたのは、ランタンなどでもなければ、柔らかそうなリュックでもなかった。

 空間内には、一人の少女が横になって寝て居たのだ。真っ白い髪を二つに結び、フードを被って居たのだった。


「………なに、この状況?」


 事態が飲み込めずにいるウェーガン。

 これが、ウェーガンと一人の少女との出会いだった。

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