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呪いのニワトリ転生  作者: 黒服先輩
第二章 ケリティカ山攻略戦
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宿娘捜索 ③


「なるほど、よく分かった………」

「あっ、ああそうだ。なあ、全部答えたんだから、見逃してくれるだろ?」


 立ち上がるガンダルに、ライアにうつ伏せに押さえつけられている男が必死に尋ねる。


「ああ、そうだな」


 ガンダルはそう答えて、男の顔を右手で殴った。

 綺麗な一発が入り、男は気を失い、人から人形に変わったかのように倒れ込んだ。


「暴力的ですね」

「うるせー」


 男が気絶したのを確認すると、ガンダルとライアは立ち上がる。


「ですがまあ、予想通りですね」

「ああ、『奴隷商』、その下っ端組織か」

「そしてやはり、彼等の仲間が娘さんを攫っていましたね」

「ああ…………ちっ」


 事態を知り、ガンダルは不機嫌そうに舌打ちをする。


「お嫌いですか?」

「当然だ、胸糞悪い。そもそもこの国は奴隷禁止のはずだろ」

「いつの時代だって、法を破りたがる者は居るということですね」

「…………クソッタレ」


 苛立ちを隠せずいるガンダル。重い足取りで、自身の身体をドアの前へと運ぶ。

 ドアの前に立つその姿が、ウェーガンには悪魔のように見えたのかもしれない。ウェーガンは冷や汗をかいたいた。


「………アンタ、どれくらい戦える?」


 ドアを睨みつけながら、ライアにそう尋ねた。


「今、私の足元に倒れているこの男を一分で四人作れるくらい………って感じかな」

「はっ、上等だ………」


 ライアの言葉にガンダルは納得し、ドアをゆっくりと押し開ける。音の立たぬように、ゆっくりと。

 開けたドアの先は、今一行が居る路地裏よりも薄暗く、目が慣れるまではあまり良く見えない。


「………ウェーガン、お前はソイツと行け」

「えっ?」

「俺は敵を殲滅する。お前たちは娘さんと、他に捉えられてる人らを頼む」

「はい。任されました」


 ガンダルの命令にも似た言葉に対し、ライアは何も変わらず、薄気味悪い笑みを浮かべながら、ウェーガンを持ち上げる。


「では、行きましょうか。悪者退治に」

「悪者退治じゃねえ。完膚なきまでの叩き潰しだ」

「それはそれは………ああそうだ、これを」


 ライアはそう言って、先程拾ったナイフを投げ渡す。

 しっかりとそのナイフをガンダルは受け取ると、ライアに目線を向ける。


「どうせ何も武器無いんでしょう?私には別のがありますので、お使い下さい」

「………助かる」


 ガンダルは素っ気ない態度でライアに礼を言うと、建物内の暗闇の中に消えて行く。


「………さて、私たちも行きましょう」

「おっ、おう………」

「怖いですか?」


 緊張の所為か、先程のガンダルの所為か、冷や汗を垂らしているウェーガンに、ライアがそう尋ねた。


「当たり前だろ。俺はつい数日前までは…………いや、何でもない」


 途中まで口にして、そこで止める。

 自分が言おうとしていたことが、黒服にしてはいけないと言われた言葉だったからだ。


(俺が異世界転生してるって言ったら、ダメらしいからな………)

「…………まあ、大丈夫ですよ。私、強いですから」


 そう言うライアの口調からは、底の見えない自信があるように思えた。

 二人はガンダルの後を追うようにゆっくりと、同じようにその建物の闇の中へと消えて行ったのだった。


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