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呪いのニワトリ転生  作者: 黒服先輩
第二章 ケリティカ山攻略戦
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迷宮街ケリティカ


 朝日が昇る空の下、【エドネ】同様広範囲の壁に囲まれた、ケリティカ山に沿って造られた街、【迷宮街ケリティカ】にウェーガン達一行は辿り着いた。

 街を囲む壁は十数メートル程の高さがあるが、一見してそのどこにも劣化した様子は見受けられない。それどころか、建てられて長く経つであろうその壁からは、侵入者を寄せ付けな威圧感を放ち、壁の役割をしっかりとこなしているようだ。

 ウェーガン達一行を乗せた馬車は、軽く揺らしながら真っ直ぐと壁にある門へと向かっていく。


「んん………もう着いた………?」


 馬車の中では、揺れの所為か到着を間近にしたからか、先程までウェーガンを抱き枕にして壁に寄りかかって寝ていたララが、目を右手でこすりながら眠そうに目を覚ます。


「おう、着いたぞ」

「さっさと目ぇ覚ませー」

「んん、ふわぁあい…………」


 ウェーガンとジャラックがそう言いかけると、ララは寝ぼけてるようなフニャけた声でそう応える。

 馬車の中でそんな他愛のないやり取りが終わりを迎えた時には、馬車は門の下まで来ていた。そして遂に、一行を乗せた馬車は門をくぐり、街の中へと入る。


「わお………」


 馬車の窓から身体を乗り出し、進行方向に目線を向けていたウェーガンの口から、不意に驚きの声が漏れる。

 門をくぐると、そこには同じ国の領土の中であっても、【エドネ】とはまた違った風景が広がっていた。

 門から真っ直ぐと伸びた大通り。その両端に沿って幾多も張られたテントや屋台。他にも幾つも古めかしい建物や最近建てられたと思われる建物が入り混じって建てられている。

 街にはウェーガンが馬車から見ただけでも、様々な人物の姿が見受けられた。迷宮街とあって、老若男女、若手やベテラン問わず、数多くの冒険者の姿がある。複数に集まって迷宮の探索の算段を練る者達も居るし、店でアイテムなどを仕入れる者も多い。それによりこの街は、活気に満ち溢れている。


「凄えな、ここにいる奴らのほとんどが迷宮目的か」

「ああ、今日はいつもよりも数が多いが、いつだって活気に溢れた奴らばかりさ」


 広がる光景に目を輝かせるウェーガンに、ジャラックが嬉しそうにそう語る。

 馬車は門をくぐってから直ぐの所にある馬車宿まで来てから停止した。辺りには、様々な色合いの馬と、幾多もの装飾の施された十数台の馬車が見受けられる。

 馬車からゆっくりと降りる一行。ガンダルやジャラックは何事も無いように降りるが、ウェーガンは段差のある馬車から飛び降りるようにして下車した。最後に、片手で目を擦らせるなんとも眠そうなララが、足元をフラつかせて馬車から下車する。段差で躓きそうになっていた。


「おいおい、大丈夫か………?」

「んん、だいじょーぶ、だいじょーぶだよー………」


 ウェーガンは覚束ない足取りのララを心配し声をかけるも、ララは大きなあくびをしながら依然眠そうにしている。


「はあ、ほらリーダー、おんぶして差し上げろよ」

「あっ?何で俺が?」


 ジャラックがガンダルにそう提案した。ガンダルはそれを、なんとも嫌そうな表情を浮かべて反応する。するとジャラックは、


「だって、リーダーだろ?」


 と、何を当然のことをと言わんばかりの表情を浮かべながら言う。ジャラックはそれを聞くと大きくため息を吐く。


「はあ、分あったよ。おぶりゃあいいんだろおぶりゃあ!」

「「さっすがリーダー!」」


 仕方なく思ったのか、吹っ切れたのか、何にせよララをおんぶすることを了承するガンダルを、ウェーガンとジャラックが若干からかい気味に言うと、ガンダルは腰にかけた大剣に手をかけて、


「………切るぞ?」

「「遠慮しときます」」


 声を低くして小さく呟くガンダルの声が、何故だか非常に大きく耳に届く。二人は息を合わせ、謝罪紛いの言葉を口にして目線を合わせまいと逸らす。


「たくっ、ほら来い」

「んん、はーい」


 膝を曲げ姿勢を低くして、背中をララに向ける。ララはガンダルにそう言われ、首に手を回し身体の体重を全てかけてガンダルの背中に乗っかる。

 ララが乗ったのを確認して立ち上がると、ウェーガンとジャラックが再び、


「親子みたい」

「俺も同じこと思った」


 からかいじみた言葉を口にする。

 ガンダルは二人に呆れながらもララをしっかりとおぶって、


「おい、行くぞ」


 二人にそう言い聞かせ、自分の荷物もしっかり持って歩き出す。


「あいよ。んじゃ、ニワトリ君は俺が持つか?」


 ガンダルに返事をしてから、ジャラックは視線をウェーガンへと移し問いかける。するとウェーガンはあるか無いかも分からぬ首を横に振って、


「いや、いいよ。俺もこの身体にもっと慣れなきゃだし、誰かに抱き抱えられてじゃないと移動出来ないんじゃ、迷惑だしな」

「はー、良い心がけだねぇ。そんじゃまっ、行こうか」

「おう」


 そんなやり取りを何頭身分もの体格差のある二人はこなして、ガンダルの後を追い、馬車を後にする。

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