町の名はエドネ 初日①
短い話を連続で投稿していきます。本編に支障はありません。
時刻はただいま夕刻。陽が傾き、空の青色が燃えるように赤くなり、浮かぶ雲が焼いたマショマロみたくなっている。
【エドネ】の住民達は時刻が進むにつれて、その行動を変えていく。外を走り回る小さな子供たちは、空が暗くなっていくにつれて家へと小走りで帰宅していく。井戸端会議をする主婦たちは家へと戻り夕食の準備をし、男は仕事から戻る者も数人居る。
冒険者ギルドの中は変わらない。むしろ酒を飲みに来る者や依頼を受けに来る者達が増え、店長は他の従業員達と食事を作ったりと大忙しだ。
さて、そんな中ウェーガンたちは何をして居るのかというと、
「これが掲示板。ここにいっぱい貼ってある紙が依頼で、皆んな好きにそれを取っていくんだよ」
「へー、色々あるなぁ」
ララはウェーガンを片手で抱きながらもう片方の手の指で掲示板を指して説明している。
掲示板の前には何人かの冒険者が集まり、様々な表情を浮かべていた。良い依頼を見つけ笑顔を浮かべる者も居れば、自分に見合った依頼が見つからずに落胆する者も居た。
二人はどちらでもない。そもそも何故、ララがウェーガンに掲示板についてを語っているのか?当然、ウェーガンが教えて欲しいと口にしたからである。
(俺は今何も知らないからな………でも手に入る情報は限られてるってなら、とりあえず片っ端から手に入れることが一番だろ)
何とも雑な考えだ。だが、手掛かりの少ない現段階では、この手に限る。知ることに損は無く、全てが特になるからだ。
「どんな依頼でも受けられるのか?」
ウェーガンはララに質問を続ける。
「うーん、ちょっと違うんだ。冒険者にはランクがあってね、依頼の難易度が高いと低ランクの冒険者はその依頼を受けれないんだ」
「はーん、なるほどなぁ…………そのランクってのは、どうなってんだ?」
ウェーガンにそう聞かれると、何故だかララは得意げな表情を浮かべて語り出す。
「冒険者のランクは下から、D、C、B、A、Sに分かれてるの。そして私は、なんと驚きのAランクなんだ〜」
胸を張りそう言うララに、ウェーガンは若干の驚きを感じていた。しかしそれは、ララの自信に溢れた表情に対してではない。
「意外だな。いっそSランクぐらいあるのかと思ったんだが…………」
「まっさかぁ〜、Sランクの冒険者なんて、世界中でも百人も居ないし、そもそもほとんどが魔族とかだし、全員が怪物って呼ばれるくらいに強いもん。だから、基本Aランクあれば実力者ってことになるよ。
ちなみに、リーダーとジャラックさんもAランクだよ」
「ほお、ってことは俺の周りは実力者揃いだったって訳か…………」
ここに来てガンダルとジャラック、そしてララがかなりの実力者であったことを知る。確かに、明らかに凶暴であったバジリスクを相手にしてもなんとも無かった彼等が、二流冒険者だとは思えないだろう。