町の名はエドネ 到着その①
周囲には、森と言うには些かまだらに生えた木々達が生え、川がチョロチョロと音を立て、頭上に昇る太陽の陽を反射させながら流れている。
真上よりも少し傾いている太陽から、今の時刻が午後の一時か二時ごろだということが分かるだろう。
ウェーガン達は、道のりを順調に進んでいた。テントで夜の平原を過ごし、そこからはほとんど休憩無しで歩いた結果である。しかし、ほとんど休憩が無かったというにも関わらず、ララ、ガンダル、ジャラックの三人は随分と余裕そうに進んでいる。流石は実力者と言ったところだろう。
ウェーガンも疲れている様子は無い。当然だろう。なんせ彼はずっと、ララの腕に抱き抱えられながら進んでいたのだから。それで疲れたと言ったのなら、それはもうララに対して失礼というものだろう。というか自分で歩くべきである。人間として最低だ。ゴミだ。死んだ方が良い。このチキンやろー。
「ん?」
「どしたの?」
「何か、今誰かにめっちゃ暴論言われた気がしたんだが…………」
そんなこんなで、彼等は進んでいた。道中何かが起きた訳でもなく、ただ順調であった。そしてそのまま歩を進めていると、
「おっ、やっと見えてきたな」
そう口にしたのはジャラックだ。彼の目線の先には、緑の草木生える平たい土地に建てられた建物がある。
「アレが目的地か?」
「そうだよ。あの町が、私達の拠点の町、【エドネ】だよ!」
ララの元気そうな声での説明が入る。
町が視界に入ったからか、ジャラックは少し早足になり、いつしか駆け出した。
「おーし、誰が一番に着くか競争だぜ!」
「ガキかお前は…………負ける気はないぞ」
「私も走るー」
ララはともかく、大の男二人が何を言っているのか、ウェーガンがゆっくりとそのことを考える暇は無く、彼を抱き抱えているララはその小さな身体で走り出す。負けじと駆け出すガンダル。しかし先に助走を付けていたジャラックの方が一歩有利で、二人と僅かな距離を作る。
「あんのヤロォ…………!」
「ジャラックさん卑怯だぞー!」
「そうだそうだー!」
ズルをするジャラックに三人がそう言うも、
「ハハハッ、勝てばよかろうなのだー!」
「………もう許さん」
ジャラックの自由奔放な態度にイラッときたガンダル、先程とは打って変わり、殺気立ってジャラックを追いかける。
「ありゃりゃ、リーダー本気になっちゃった………」
「大の大人が何やってんだよ…………」
ララはガンダルのあの姿を見るや足を止め、歩きながら冷静に言う。同時にウェーガンも、冷静にツッコミを入れた。
「待てコラァァァァァア!!!」
「ゲゲッ!?ちょっタンマタンマ!!」
文字通り、鬼のような形相のガンダルを見て、ジャラックは速度を上げて【エドネ】の方へと駆けて行った。