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呪いのニワトリ転生  作者: 黒服先輩
第一章 ニワトリ転生
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安眠と疑心


 一同は食事を終え、気がつけばかなりの眠気が襲ってくる時間帯となっていた。その為テントで就寝を取ろうとしていたのだが、


「えっ、二人は寝ないのか?」

「寝ない訳じゃねぇよ。交代交代で外を見張るんだ」


 ララがウェーガンを引き連れてテントの中で寝ようとしている中、ジャラックとガンダルは外で見張ると言い張っていた。


「別におかしいことじゃねえし、何よりテントも狭いからよぉ。女の子も居るってのに、俺らオッサンがテントで寝んのも無粋だろうよ」

「そりゃそうだろうけどよぉ…………何か悪いなぁ………」

「遠慮すんなって。お前ら二人は仲良く寝てな」


 申し訳なさそうなウェーガンにジャラックは男らしくそう言う。ウェーガンとララはそれ以上は言うまいと、言われた通りにテントの中へと入っていった。考えてみればテントはそれ程大きくないため、大人二人が入るのはギリギリといったところだろう。

 テントの中には、数枚の毛布で作られた布団が置かれており、ララはウェーガンを抱いたままその布団に潜り込む。


「いやぁ〜今日は疲れたね〜」

「まあ、俺はほとんど歩いてないけどな…………」


 布団に入ったララは、ウェーガンをギュッと抱き枕のように抱き締めている。まだまだ体力が有り余っているようにも見えるが、実際はだいぶ眠たいご様子だ。


「明日も早いし、早く寝ようて寝ようねぇ…………」

「ああ、そうだな」


 その言葉を最後に、ララは子供らしい見た目通りにさっさと眠りにつく。布団に潜り込んで直ぐのことだ。有り余る体力を抑え、グッスリと眠りについている。

 気持ち良さげに眠るララの顔を見ながらウェーガンは、


(………やっぱり、まだ子供なんだな。あれだけ強くて、あれだけ元気でも、やっぱり、ただの女の子なんだな…………)


 この世界に来て最初に出会った存在であるララの子供らしい一面。それを見て、ウェーガンは今日一日の出来事を思い返す。


(思えば今日一日だけで、いろんなことが起きた。まず最初に、デカイトカゲが出て来た。あれがこの世界のヤバさを決定付けたな。なにより、そんな奴を難なく倒した、ララもかなりヤバイけどなぁ………)


 ララの顔を見ながら、そう思う。


(そういえば、魔法とか使ってたな。この世界では誰でも使えるものなのだろうか…………?明日聞いてみるか。

 しかし、今日特に驚いたものってったら、間違いなくバジリスクだなぁ。ああゆう『ザッ化け物』って感じの奴、ゲームの中でとかしか見たことなかったからなぁ〜。て言うか、ララで霞んで忘れてたが、あの二人も結構ヤバイよなぁ…………)


 テントの外へと目線を移してそう思う。テントの入り口は軽く閉まっている為外を覗くことは出来ないが、それでも二人の存在は感じることが出来た。


(冒険者とか言ってたけど、二人とも多分その中でも結構強い方なんだろうな…………)


 実力者に守られている。そう考えていると、安心感が身体を包み込む。


(………つーか、この状況ってどうなんだろ?一応俺中身オッサンだぞ。オッサンと女の子がテントの中で二人って、前の世界でなら逮捕だな)


 現状を改めてみれば、確かに危うい状況だ。想像してみてほしい。女の子がオッサンを抱き枕にして寝ている光景を。親子や親戚ならまだしも、これが今日知り合った二人なら大分マズイ。


(…………でもあれだな。なんだか知らんが、とっても落ち着く…………)


 まるで母親に抱かれる赤ん坊だ。

 少女の身体よりも小さな身体に溜まった疲れが、外へと漏れていく感覚。軽くなり、心は落ち着き、そしてしばらくして、ウェーガンは眠りについた。ララと同じく、子供のように。



 ■□■□■□



「二人とも、もう寝たかね」

「寝ただろ。ウェーガンはどうか知らないが、ララちゃんは子供だぞ」


 外では、火も消え月と無数の星々だけが灯りとなった夜空の下で、ジャラックとガンダルがテントの前に座っていた。

 お互い肩の力を抜いて落ち着いているが、それでも目を凝らすことは辞めてはいない。しっかりと、見張りの役目を全うしているようだ。


「…………なあ、いいか?」


 唐突に、ガンダルが聞いてくる。


「なんだ?」

「俺たちがバジリスクに襲われた時、一番にあの二人を襲ってきただろ?」

「おお、そうだな」

「偶然だと思うか?」


 深妙な趣で、ガンダルは問いかける。


「どうだろうな。ララちゃんが狙われるのは分からないでもないが………」

「そういえば俺たちは、ララちゃんの用事を詳しく聞いてなかったな」

「…………ウェーガンが怪しいってのか?」


 僅かなやり取りで、ジャラックはガンダルの思う所を察する。


「確かにアイツは良く分かんねえな。記憶は無いし、何より高度な呪いもかけられてる」

「もしかしたらバジリスクは、アイツ(ウェーガン)を狙ったのかもしれない。そしてそれは、アイツに何かぎあることを意味している」

「かもな。でもま、別にいいだろ」


 少し重要そうに話すガンダルに対して、ジャラックは軽い気持ちで返す。


「ララちゃんの用事ってのがウェーガンで、ウェーガンは魔物を呼び寄せるのかもしれない。そしてそれは、何か危険な香りがする。でも、俺ら冒険者風情にはそれまでの話さ。危険な出来事にはなってから対象すれば良いだけのこと。それまであの二人は、ただの仲間ってことだよ」

「………ああ、その通りだな。なるようになれってことで、俺たちには十分か」

「でもまあ、魔物を呼び寄せるってのは確定かもな」


 そう口にするジャラックの目線には、夜の平原に蠢く、赤い瞳たち。その数は十数体ほど居て、明らかにテントへと進路を取っている。


「ゴブリンの群れ、恐らくウェーガンに導かれたんだろ。そうでないと、俺らみたいな実力者の前に顔出さねよ」

「まったくだな。だがまあ、丁度何もなくて暇してたところだ」


 二人はそう口にしながら、ガンダルは剣を、ジャラックら銃を手に取り、ゴブリンの群れと向かい合う。


「子供とニワトリには、安らかな眠りを。むさいオッサン二人は、その眠りを脅かす悪い人らにお叱りを」

「さあ、仕事開始だ」


 そう口にして二人は、襲いかかる群れに立ち向かう。少女とニワトリの安眠を護る為に。

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