町への道筋 その⑤
バジリスクの顔から捲き上る爆風。その爆風の発生地であるバジリスクの顔面、左眼付近へのダメージは大きく、バジリスクは両目をやられ悶絶している。そんなジャラックは、自らの撃った弾丸による爆風に身を任せ、バジリスクの顔面から離れる。
「よーし、それじゃあ仕上げといきますかぁ!」
その声と共にバジリスクの顔面付近の高さから地べたまで落ちていくジャラックは、腰元から、今手に持っているのとは別の銃を取り出す。ライフル状のとは全く異なる、リボルバー式の銃だ。既に弾は込められており、ジャラックは地べたへと落ちながらその銃口をバジリスクの胴体へと向ける。
「タップリと味わいな!」
一つ掛け声を挙げて、ジャラックは引き金を引く。同時に、銃口から放たれる弾丸。
弾丸は、バジリスクの胴体へと真っ直ぐ飛んでいた。しかし、ライフルよりも威力の弱い弾丸でバジリスクの硬い鱗を砕くことなど出来るはずはなく、弾丸はバジリスクの鱗に当たった途端粉々に砕かれる。しかしジャラックはそれを踏まえた上で、残った五発の弾丸をバジリスクへと撃ち込む。
全ての弾丸がバジリスクの鱗に命中した。するとここで、空に浮かぶ太陽の光が、バジリスクの身体を反射していることが分かる。キラキラと、バジリスクの身体はテカっていた。よく見てみれば、その長い身体は油まみれになっていた。
地べたにシュタッと着地したジャラックはバジリスクの方に向かって、
「名付けて、オイルバレット。ダメージを与えるんじゃなく、油を大量にばら撒く為の物さ。さあ、出番だぜララちゃん!!」
「言われなくても………!」
そう返すララは、バジリスクを見上げる位置に立ち、ウェーガンを手から下ろして小さめの岩の上に置き、
「『フランメ』『ボーゲン』『エントヴィッケル』」
そう、単語を言い並べていった。すると何も無かった筈のララの手元には、炎に燃え盛る弓と矢が生成される。メラメラと静かに燃え盛るソレは、ウェーガンにはまるで芸術品のように見えただろう。
「いっくよー………」
そう言って、ララは矢を持つ手を離す。すると矢は導かれるように真っ直ぐ飛んで、バジリスクへと向かっていく。
矢を撃つと、ララが手元に生み出した弓は小さな火なって消え去った。しかし当然、矢は燃え盛ったままバジリスクの硬く多量な鱗に当たる。
「てかっ、そんな簡単に燃えるわけ…………」
横でウェーガンがそんなことを言うのを気にも留めぬように、バジリスクの巨体はみるみる内に燃え盛っていく。
「グギャャャァァァァア!!??」
声を挙げ悶絶するバジリスク、一度空へと伸ばした身体を再び縮め、蛇の身体を唸らせて地べたに擦り付けている。明らかにダメージを負っているようだ。
「やっぱり、こういう硬い魔物にはこういう手が効くんだよねぇ〜」
「これから毎日バジリスクを焼こうぜ!」
「何か言った?」
「いや、独り言」
緊張感のないやり取りを交わすウェーガンとララ。それにより、一度バジリスクから目が離れる。そこに、
「おい!気をつけろ!!」
ガンダルの低い声が二人の耳に届く。その言葉に釣られ、バジリスクの方へと再び視線を送る。するとバジリスクは、硬い鱗などを無視し燃え盛る身体を無理矢理に動かし、死に物狂いで二人に襲いかかる。
「グギャャャァァァァア!!!!」
何度も聞いてきたバジリスクの雄叫びも、今は全くの別のものに聞こえる。より殺意のこもった、獲物を確実に仕留めようという雄叫びだ。その雄叫びと共に、ジロリとした眼球が二人を舐め回すように睨みながら向かってくる。
「ギャァァァ、キタァァァァァ!!!」
「うわっ、ニワトリさんうるさい!!」
文字通り鬼のような形相で向かってくるバジリスクを見て叫び声を挙げるウェーガンに、ララが叱りながら走って向かう。ウェーガンを再び抱き抱える為だ。
二人に荒々しく向かうバジリスクに、ジャラックは咄嗟に高台に登り銃口をバジリスクに向ける。ガンダルも同様に、二人の居る方向に走り出せ。
(こりゃ不味いっ!)
(間に合うか…………っ!?)
咄嗟に反応するジャラックとガンダルを気にも留めることなく、バジリスクはウェーガンとララに向かっていく。
ウェーガンを抱き抱えようとしていたララだったが、その寸での所で、
「『ナァス』『エントヴィッケル』ッ!!」
バジリスクの方にに振り返り、掌を広げバジリスクへと向けて単語を唱えていく。言い終わったその直後、ララの手元には水の塊が浮いて現れる。ララはその水を、身体を燃え盛らせているバジリスク目掛けて投げ飛ばす。
ララの手から投げられた水は宙で破裂し多量の水がバジリスク目掛け飛び散る。見た目に反して膨大な量の水はバジリスクの身体にかかり、同時にバジリスクの燃えた身体と反応を起こし、あたり一面を濃い水蒸気が包み込んだ




