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一日空いてしまいました
椅子が二つ、机が一つおいてあった。
壁じゅうに設置してある蝋燭のおかげで部屋は明るいが、窓が一切なく少しじめっとした部屋だ。
「椅子に腰かけて少々お待ちを」
そう兵士が言うとスタスタと部屋の外へと出て行った。
誰もいない部屋、机の上にも蝋燭がおいてありその火がゆっくりと左右に揺れ始めた。
声が聞こえてくる、いつかみた幻影と同じ声。
「今からひどい拷問でもされるんだろうなぁ、窓もないし助けも呼べないなぁ」
うるさい、この声の言う通りに動いていたらどれだけ命があっても足りない。
「ほぉ、ひどいこというねぇ。助けてやったのを覚えてないのかぁ?」
心の中を読んでくる。だが助けてもらった覚えは何一つない。
「気付いてないのかぁ?賊どもからお前を助けてやったじゃねえかぁ。川の中でグチャグチャにしてやった、おいしかったなぁ」
「お前、水魔か…化け物のいうことなんてますます信用できないな!」
へぇ、と言ってそれから声がだんだん小さくなり何も聞こえなくなった。
ガタッ。
木製の扉がゆっくりと開き、中から朱色の着物を身にまとった男が現れた。
「君が日本から来たというハシ君だね、待たせてしまってすまない。私は王国で文官長をさせてもらっているレンレイという。」
端正な顔立ちで女性に間違われそうな男だ。
「私は日本から来たハシです、日本では橋本と呼ばれていましたがこちらの世界でお会いした方にハシという名前のほうがいいといわれハシという名前で生活しています。」
ゆっくりと頷くと椅子に腰かけた。
「ではハシ、国札を渡す前に本当に日本からきた人間という証明をしてほしい。例えば日本の持ち物があるとか。」
「すいません、仕事の最中だったもので一切持ち物がなくて。」
ふと思い出す、そういえば戸締りして電気消してるところだった、情報漏えい禁止のために社内に携帯電話なんかも持ち込むことはできない。
だから一切なかった。
「そうか、ならば日本の言葉は話せるかい?少し話してごらんなさい」
そう言われたのでさっきと同じ自己紹介を日本語で話した。
それをレンレイは持ってきた紙に筆でスラスラと書き留めている。
「ふむ、君は確かに日本という国から来たようだ。昔この国に日本の人間が来てね。今はモンという名前で生活しているらしいが国札を渡したら出て行ってしまってね。」
あぁ、あの人も日本から来たと言っていた。
「そのときにモンという男から日本の言葉を少々学ばせてもらった。」
「じゃあ僕はもう日本から来たってことがわかりましたよね?」
「もちろん、日本から来たと理解した。でも国札を簡単に渡すことはできない。」
そういうとレンレイが腰につけている剣を指さした。
「その剣で人を殺めたことは?あるかい?」
「いえ、今まで剣を引き抜いて人に向けることはあっても斬ったことはありません。」
「今は戦争中でね、この国で生きていけるように国札を渡す代わりに兵として働いてほしい。この戦争が終わったら君を解放してあげよう。」
「せ、戦争なんて勘弁してくれ!なんで、どうしてそんなものに参加しなくちゃならない!日本から来てまだ1か月と半分くらいだ!そんなのおかしいだろ!」
レンレイの右手が自分の頬を力強く叩く。
「戦争で生き残れば、国民になれる。参加しないとなれば君はこの国では生きていけない、敵国民とみなしてここで死刑にすることだってできる。立場をわきまえなさい。」
これで国民として生きていけると思った、水魔のいうように殺されはしなかったが似たようなものだ。
戦ったことなんてない人間が戦争に行くのは間違っている、死ねといわれているようなものだ。
剣やら槍で殺しあうのか、グチャグチャに汚れて、お互いの体を傷つけあって、戦争が終わるまでそれを繰り返すのかと思うと涙がこみ上げてくる。
日本にいるとき、おじいちゃん言っていた。
戦争は悲劇だった、でも死んでいく仲間を止めることができなかった。それは国のためでもあり自分のためだったからだ。そう言っていたのを思い出す。
戦うしかないなら、戦う。死ぬよりはいい、戦った結果死んだのなら仕方がないことなのだ。
そう言って涙を拭う。
「参加します」
「よく言った、君の国札を渡そう。それともし国札をもって逃げようとしても無駄だ。君のことはこの国の兵士全員に伝えてある。」
「な、なんでそこまでするんだ。」
「戦争なんでね、人手不足だからだよ。」
それだけの理由で戦争に出されるのか、人手不足だからいって来い、死んで来いというわけだ。
レンレイはそう伝えると部屋を後にした。
彼の剣には魔が潜んでいる、きっと役に立つはずだ。
そう、レンレイは見抜いていたのだ。剣の状態を。
毎日書こうと思っていたのですが、無理な日もありますね(; ・`д・´)




