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王記  作者: 剛田たける
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7

暖かい日に冷たい小説

おはようございます。

心の中でそう呟きながら起きる。

火を付けたまま眠ったので火事にならないか心配だったが、ショウが消してくれていたようだ。

「今から村を通り過ぎて、王国に向かう。」

「ここからどのくらいかかるんだ?」

「男二人の旅だから1週間もかからない、とはいえ長旅になるから疲れたら言ってくれ」

林の一本道がずっと続いているのかと思っていたが、目の前は坂しかない。

山を挟んで南側にあるようで、ひたすらに坂道が続く。

「山には熊や野犬も出るから夜は進めない、ハシお前は知らんと思うが水魔のような人を喰う化け物もでる。滅多にお目にかかれないが、もし見つけたら逃げるのが一番だな。」

「あはは、冗談はよしてくれよ」

おいおい、フラグ立ててんじゃねえよ。そう思いながらも山道を歩く。

山の名前はココウ山というらしい、人々は王国に向かう時にこの道使うため所々に小さな山小屋がある。

山小屋は旅をする人が自由に使えるため寝食をともにすることもある。

最初の晩、山小屋に入ると物騒な格好の男が横になっていた。

背丈は180cmほどで左腰に剣を付けていて、男の後ろには弓とナイフが置いてあった。

真ん中には囲炉裏があり火を焚いてくれていたため入ってすぐに暖をとることができた。

「あんたらも王国に行くのかい?」

横になっている男がショウに声をかけてきていた。

「まあな」

軽くあしらうように返事をしている。

耳元でショウがささやいてきた。

「こういうところで会う人間は信用できない、あまり深く話しこまないほうが身のためだ」

「わかった」

また横になっている男が話しかけてくる。

「俺は王国が戦争するっていうから傭われにいくんだけどよ、あんたらもそんなかんじかい?」

ショウが話す。

「戦争?どこの国と戦争するんだ?俺たちは役所に用事があって王国に向かっているんだが、物騒なことにならなきゃいいが。」

「なんでもとなりの真国(しんこく)と戦争するらしい、領土の取り合いらしいが占領しちまえば戦争はそこで終わる。そこはどっちの領土でもなかったらしくてどっちの領土かで揉めてるんだとよ」

ほうほう、そういって険しい顔をする。

男の名前はジョウユウというらしい、ココウ山の近くに住んでいて戦争が起こるたびに王国に傭われに行くそうだ。

他愛もない話をしたあと火を消して全員眠りについた。

そして夜中、物音がしてショウとハシは起きた。

ジョウユウが俺たち二人の荷物をあさっていた。

ショウは小さな声で「気付いていないふりをするか、ここで起きるかどっちにする」

気付いていないふりをすれば物を盗られて何事もなく終わるだろう。

ここで起きれば言い争いになり、運が悪ければジョウユウとの殺し合いになるだろう。

「なんじゃこりゃ!」

大きな声を出したのはジョウユウだった、二人で飛び起きてその姿を見るとハシの持っていた剣を右手で掴んだジュウユウが剣を振り回していた。

よく見るとその右手は水のようなものに包まれていて、だんだんと肌の色が青ざめていく。

「つ、冷えぞ。右手の感覚がねえ!」

ショウは言う。

「水魔だ、あの剣には水魔が取り付いてたみたいだな!」

あの時、川の中に引きずり込まれて戻って拾った剣。

今思えば刀身が青く、異常な切れ味だったのも納得がいく。

ショウが飛び起きてジョウユウの腕を掴み、右手に持っている剣をその手から離そうとする。

だがかなりの力で右手が握っているようでショウには離すことができない。

ハシも手伝おうとジュウユウの持っている剣を触ると不思議なことに力を全く入れてないのにスーッと抜けた。

さっきまで握っていたジョウユウの右手からはひんやりと冷たさが感じられ、 まるで水に浸し続けていたようにしわくちゃになっていた。

「や、やめろ!くるんじゃねえ!その剣をこっちに近づけんじゃねえよ!」

ジョウユウはひどく怯えた声で飛び退くように後ずさりして壁に強くぶつかる。

ショウは驚いたようにハシの持つ剣を見つめている。

「ハシお前、なんだその剣は、お前は持っていても大丈夫なのか?」

わからない、とにかく握っていても変化はないので「うん」と頷いた。

「ときおり化け物は人に懐くというが、まさかこんなところでそれに出会うとは。お前のはなしといい珍しいことの連続だ」

懐く、特にそんな覚えはないし拾った剣だということしかわからない。

「その剣と話せたりするのか?化け物と話せるのか?」

色々と聞かれるがそんな風に話したことはないし、ただのよく切れる剣としか言えなかった。

ハシはショウに話す。

「ショウは剣と話したことがあるか?」

笑いながらショウは答えた。

「あるわけないよな」

そうして話しているとジョウユウが話しかけてきた。

「ほ、本当に悪かった。何もしないから朝まで置いてくれ」

ショウとハシは話し合った末、人の物を盗むような人間とは寝たくないという結果になる。

ハシはジョウユウに話す。

「すまないが、出て行ってくれ。盗みをする人間と同じ小屋で寝ることはできない。」

夜中、仕方なく出て行くジュウユウ。

何もしなかっただけでもありがたく思ってほしいものだと、ショウは言う。

ジョウユウの右手が随分冷えました。

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