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王記  作者: 剛田たける
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もっとたくさんの人に読んでいただきたい。

老人は村のものを集めた、つたえなければいけないことがあるからだ。

「ハシは旅に出た、この世界のことを色々と知りたいと言っていた。最後に挨拶だけでもと言ったが朝早くに旅に出ていった。」

モンはそう伝えて村の広場を去り、家に戻った。

日本から来たハシに色々と教えたのは他でもない、モン自身だ。

なんの情もないわけではない、この村を守るため、モンを売るしかなかった。

誰にもそれを言えない。

言えば村人全員の信頼を失うことになってしまうし、今のこの村の経済状況やおかれている立場を誰かに知られれば村人が出て行きかねない。

そう、この村には(ぞく)の類が一切でない。

モンが定期的にみつぎものをしているからこそ出ないのだ。

王国に収める税がある、村全体で納めなければいけないものがあるが、それ以上に全員から集金している。

もちろんモンがくすねているのではない、近くに住む賊に渡していた。

ハシが自立し、税を納めれるまでは面倒を見るつもりだった。

だがちょうどそこを賊の一部にみつかってしまい、あっちの世界の若い住人、それもこちらの世界の言葉を話せる人間は王国に高く売れると言われ渡すしかなかったのだ。

近隣の安全のためだった、決して自分が私服を肥やすためではない。

仲良くしていた村人は気を落としていたが、これも一ヶ月もしたら忘れる。

自分が色々教えて、日本のことも話せたハシを渡すのは辛かった。

まわりが忘れても私は忘れられないだろう、一生かけて悔いていくのだ。

一人部屋に閉じこもり、老人はポロポロと涙を流していたのだった。

昼食をすませ、村をまわっていると服がところどころ赤く染まった若い男が村に入ってくるのが見えた。

髪の毛をボサボサにして剣を腰にぶら下げたハシの姿だった。

モンは驚きのあまり声が出ない。

近くにいた村の住人たちも旅に出たはずのハシがボロボロで戻ってきて驚いていた。

「ねえモンさん、ハシが帰ってきたけど本当に旅に出ていたの?すごい形相をしているわ」

メメが疑いの目をモンに向けた。

ハシは村に入るとすぐに剣を鞘から引き抜き、青く揺らめく刀身をモンに向ける。

まわりの村人はあまりの出来事に身動きが出来なくなっていた。

メメは勇気を持ってハシに向かって話しかけた。

「なにが、あったの?」

モンにとっては全てを疑うことしかできなかった。

「静かにしてくれ、まずモンさん、あなたに幾つか聞きたいことがある」

「すまなかった、しかたがなかったんだ」

「そんな言葉は聞きたくない、あんたが俺を売ったのか、それとも全員知っていたのか」

「私が勝手にやったことだ、賊に言われてしかたがなかった。お前を売ればこの村の住人を襲うようなことはしないと言われたんだ。」

怒りでまともな考えを持てない、村のために一ヶ月ともに過ごしてきた息子のような存在を売れるのか。

モンさんが勝手にやったことだと言われても信用ができない、村人全員が嘘をついているようでしかたがない。

なんと言われても、 許せないしこの先また同じようなことが起きないとも限らない。

「悪いが信用できない、助けていただいたお礼はできないけど一緒に暮らすこともできない」

メメは慌ててきき返す。

「え、どういうこと?出て行くの?」

「食料と替えの服を持ってきてくれ、このままだとモンさんだけじゃなくてメメまで傷つけてしまいそうだ」

そういうとモンさんは走って家の奥に行くと大きな包みを持ってきた。

「 中には食料と替えの服がいくつか入っている、本当にすまなかった。村のためだった」

包みを手に取ると怒りをころして村の外に向かって走る。

メメが追いかけてくるのがわかるが、無視して走り続けるといつしか足音も聞こえなくなっていた。

ふぅ、と一息つき、木の陰で服を着替える。

捕まっていたのは昼だったがいつしか日が落ちようとしていた。

あてもなく出てきてしまったが、ここからそう遠くはないミネ村に向かうことにした。

川の手前、橋の手前の木陰で袋を枕にして眠る。

疲れていたのかスーッと眠ってしまった。

夢をみる。

川を覗き込む自分、橋の近くでみたぼやっとした幻影が水面に浮かび声をかけてくる。

「なんで殺さなかったんだぁ?あの老人を憎んでたんだろぅ?」

やめてくれ。

「今頃あいつら、賊に話して追手が来てるかもしれねえぞぉ?殺しておくべきだったよなぁ?」

そうかもしれない、水の中に引きずられていった賊が全てとは思えないし追手が来てるかもしれない。

トドメを、さすべきだったかも。

全員殺してしまえば追手がくることもないし、村の食料などもより多く手に入っただろう。

突然背後からドタドタと足音が聞こえる。

人の影が大人数で武器を持って走ってくるのだ。

「お前を差し出せば金が入るんだ、おとなしくしろ」

賊が襲ってくる。

足がもつれて転んでしまう。

そして足を刺されると鈍痛が走る、汗が吹きでる。

刺した相手の顔を覗き込むとメメだった。

あまりの驚きに声にならない叫びを出し、川に飛び込む。

川の底から血のような赤色が湧き出ると意識を失った。

それと同時に目がさめる、目の前は明るくなっていて最初にこっちの世界に来た時を思い出す。

とにかく進もう、ミネ村まで。


色々と考えたんですけど、こういう流れになりました。

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