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多めに更新するかも
牢の中で気がついたのが昼頃。
何を話しかけても一切の返事がないのは、無駄な情報を与えないためだろうか。
マイル川がみえ、川にかかった橋を渡る手前、見慣れた光景にメメと水汲みに行ったことを思い出し再び涙がこみ上げる。
「泣いているのかい?」
妙に甲高い不気味な声が聞こえてくる。
誰もいない牢の中、ふいに目を横にやるとぼんやりと水面に人影のようなものが見えてこちらに話しかけているのがわかった。
200mほどの橋を渡るよこをついてきているのに誰も気が付いている様子がない。
幻覚を見ているんだろう、疲れ果て、泣きじゃくった大人の目には太陽がしみる。
「つれねえなぁ旦那ぁ、どうしたのさ?」
「ついに幻覚が見えはじめた、そう思ったらどうでもよくなってさ」
「おれぁ幻覚なんかじゃねえヨォ?」
そういうと不気味に幻覚の下にある水面がブクブクと泡立ちはじめた。
ふいに一番背の高い男が話しかけてきた。
「誰と話してる」
独り言だよ、そういって水面に浮かぶ影の方に目をやるとまた話しかけてきた。
「どこからきたぁ?みたことねえ顔だぁ」
「日本からきた、あっちの世界の豊かな国で、仕事に疲れて、ぶっ倒れたらこっちに来ててさ」
「働いて、疲れて、倒れて、豊かな国ぃ?兄さん、面白いねぇ」
確かに面白い、幻覚の言う通り、疲れて倒れる国の何が平和なのか。
奴隷のそれ、社畜とはよく言ったものだ。
飼い慣らされてそれに平和を感じ死ぬまで働く。
「本当は全然豊かじゃなかったのかもしれない」
「そりゃ豊かでもなんでもないねぇ、戦争中の国だって働きすぎて倒れることはないよぉ?殺されちゃうかもしれないけどねぇ」
泡だつ水面の上に浮かぶぼんやりとした幻覚はゆらゆらと揺れながら、フヒヒと不気味に笑った。
「アイネ村のモンという男に売られてさ、一ヶ月もの間色々教えてくれたけどまさかこんなことになるとはね」
「あはっ!お兄さん、そんな風に人を信じちゃいけねえよぉ?結局自分のためなんだからさぁ」
幻覚のくせに自分の心にある後悔、そして憎いという気持ちをわかっているかのように話しかけてくる。
あのメメという女の子も自分がこうなることをわかっていたのだろうか。
モンさんが独断でやったのではなく、村ぐるみでやっていたのだろうか。
確かに村の外は危険だという割には村が安全だった、それにそこまで貧しくないのは人を売っていたからなのだろうか。
人を売ってまでも暮らしを手に入れたい、そんな非情な人間だらけだと思ったら憤怒がこみ上げてくる。
こみ上げる憤怒と一緒に水面の泡が大きくなっていく。
「あんた面白いから助ケてヤるヨォ!」
奇声とも思えるほどの声の高さと大きさに耳を塞いだ、すると周りの男たちの足を掴むように川の水がゆっくりとまとわりつき引っ張られていく。
一番背の大きなおとこが自分に向かって叫ぶ。
「独り言だと思ったら、貴様妙な術を使ったな!殺してやる!」
耳を塞いでいても聞こえる男の声に顔を上げる。
牢の中に剣を突きたてようとした大男が川の中にゆっくりと引きずられていく。
剣を捨て、木で出来た橋に爪を立てて、必死に逃げようとしている。
これは報いなのだ、人を売る手助けをした報い。
受けるべき罰のうちの一つ。
死んでしまえ。
こみ上げてくる笑い。
これでいいのだ。
周りの男たちの気配が消えて、牢がひとりでにガチャガチャと音を立て開く。
まるで神にでもなった気分だ。
静まり返っている橋の上に牢から出て足をつける。
馬車を引いていた馬も引きずられていったようで、動くもものは何もなかった。
水面以外は。
水面が盛り上がり男たちを引きずるように自分の足を掴むようにまとわりついてくる。
「ひっ、ひぃぃいい!!」
妙な感覚が足にまとわりつき、引っ張られていく。
もがいても意味がないと悟った。
結局は過労で倒れて見た夢、そうじゃないのならこれは死んでほしいと願い、それを叶えてくれた神からの罰なのだ。
橋から落ちる。
溺死していった男たちの影はなく、ブクブクと赤い水が川の底から湧き出ている。
赤色の水に包まれて意識が遠くなっていく。
苦しい、顔が熱くなるような感覚。
また、目の前が明るい。
気がつくと近くの川辺に打ち上げられていた。
橋に戻り水面をみわたすが泡立ってはいないし、赤くもない。
橋の上には男たちが残した剣があり、すこしの通貨が入ったふくろも落ちていた。
それを拾うと村に戻ろうと歩み始める。
殺しに行くのではない、罪を問いに行くのだ。
自分がどうして売られたのか、村全体でやったのか。
剣を皮で出来た鞘から引き抜くとやけに青くツヤのある刀身に違和感を覚えたが、近くの枝に振ってよく斬れるのを確認したのち鞘におさめ、腰にかける。
長い物語になりそうです




