3
メメ!
少し周りを見渡すと、近くに少し大きな岩がありその岩肌にメメのものらしき衣服がかけてあった。
男性用の着物の袖がないような服とは違う、赤色の長い丈のスカートに着物のような上着に紐が付いていて前で結んで着るタイプだ。
王国の北端ということだけあってあまり治安が良くないため、岩影に隠れて乱暴されているのではないかと心配になり少しだけ覗いてみる。
そこには水浴びをするメメの姿があり、上半身を水面から覗かせている。
背中しか見えないが、何か細長い傷が無数に付いていて、それが大きな傷跡に見えた。
「見てるんでしょ?」
背筋がビクッとなる。
「ごめん、そういうつもりはなかったんだけど心配になっちゃって。」
「いいのいいの、すぐに出るから待っててよ。」
誰か来ないか周りを見ながらメメが着替えるのを待つ。
「待たせてごめんね。」
「水は汲んだし、戻ろうか。」
傷跡が記憶に焼きついて離れなかった。
帰り道、傷跡のことを聞こうか考えたがメメは聞いて欲しくないだろうと思って聞かなかった。
村に戻ると見慣れない男たちが数人、モンさんの家の前で待っていた。
男たちを気にかけながらメメの家の前にある大きな瓶の中に汲んできた水を入れる。
「ありがとう。また日本の話きかせてね。」
「これくらいならいつでも頼んでよ。それじゃ。」
結構な重量の水を入れ終えるとモンさんの家に戻る。
さっきまで家の前にいた男たちはいなくなっていて、いつも通り家に入り勉強を始めた。
そうして夜になり夕飯の準備をして、部屋にいるモンさんを呼びに行く。
「夕飯の準備ができましたよ。」
「わかった、すぐに行く。」
家の中央にある広間、そこに置いてある6人座れる机に向かい合って腰掛ける。
芋をふかし、胡椒をかけたポテトサラダにも似たものと魚を両面塩でまぶして焼いたものをおかずにご飯を食べ、料理が上手くなっているのを感じる。
「おいしいですね。日本ではこんな風に料理をしたことはなかったけど、こっちの世界に来て料理ができるようになりました。」
そういうと、こっちに来てできることが増えてよかったじゃないかとモンさんは笑いながら話す。
「だいぶこちらの言葉を話せるようになったし、一人でも生きていけるくらいにはなったな。」
「これも全部モンさんのおかげですよ。」
その日は珍しくお酒を飲み、気が付いたら眠っていた。
モンさんが用意してくれた高級なお酒らしく、味も確かに良い。
日本酒と同じような作り方だと聞いたが味まで似ているとは思わなくて飲みすぎたようだ。
どれくらい眠っていたのだろう。
目がさめると地面が揺れていて、蹄のような男がした。
馬車の中、木でできた牢。
昨日みたモンさんの家の前にいた見慣れない男たちが馬車を引いているのがわかる。
「こ、ここは?」
一番背の高い、185cmはあろうガタイのいい大男が口を開く。
「売られたんだよお前は。口がきけて文字も読める。お前はあっちの世界から来たようだし珍しいから高値がついてるぜ。」
何を言っているのかわからなかった。
「どういうことだよ!ここいったいどこだ!出してくれ!」
「長旅になるがお前は貴重なんだ、食事も出すし他の奴らとは別の扱いをしてやるんだから静かにしてくれ。」
そう言われてからは何を聞いても答えてくれなかった。
モンさんは自分を売るためにこうまでして育てたというのだろうか。
村の人々は優しくしてくれたのに全部嘘だったのだろうか。
大人になってから流す、初めての悲しみからくる涙かもしれない。
泣き叫ぶが誰も聞いてはくれない。
馬車はただただ進むだけだ。
もっと細かく情景をかきたい




