06 俺の欲のレーダーは、本物だ
あの女の事が忘れられなかった。あの無表情で生気の抜けた、あの顔が。
俺はあの女の生気を全部一つ残らず吸い抜きたい。
そしたら、一体どうなってしまうのだろう?
考えただけでも心臓が飛び出るくらい動悸した。
俺は、麻里子とのデートの時間を削って、あの女と遭遇した場所をくまなく探した。
この場所にいたら多分会える、俺は妙に自信があった。俺の欲のレーダーがそう割り出していた。
時間もピッタリ合っている。まさに、この時間だ。
ホラ来た!!
あの渦のように、とぐろを巻いた黒雲を引き連れて周りに暗さを与えている。
俺は、あの女の方に歩いて向かい手に持っていたハンカチを手放した、
そのハンカチは、その女のスグ足の手前に落ちた。その女は何も気にせずに下をうつむいていて
歩いてそのハンカチを置き去りにした。
俺と言う人間存在をまるで否定されているような気持になった。これは
予測できた事だ。
・・・・何!?この男うつむいている私の顔に無理矢理顔を近づけてきた。
「今からどこ行くの?」
と男が私に問いかけてきた。ナンパ?
こういう事は、私には初めての経験だった。こんな私でもこういう事されるんだ。
私は、顔の一部も変わらず無の境地で、その男を退けた。
二週間後、病院の帰り道、又、全く同じシュチュエーションでその男と出会った
「また会ったね。」
男はそう言うと私にずっとくっついてきた。これは、収拾つかないな駅まで歩いていたら、もう諦めるだろう。でも、この道は、駅から一直線で遠回りできないから、こう二週間後も四週間後に又出会い続けるのは、苦痛だ。
私はこの男とちゃんと向き合わないと後々面倒だ。
「もう、こういうのは止めてもらえないですか。」
私は表情を変えずに素っ気なく返事をした。
男の方は巧みに技量を駆使しながら言葉の魔術を行っているようだった。
私たち2人は、電車に乗っていた、この男にチョット付き合ってやるかな、それにしても何故私の様な女にこんなにも好意を寄せるのだろう?
その男の顔のレベルと身長ならばいくらでもカワイくて、美人な人は、ついて来るだろう。私のこの薄暗い顔好きな物好きな人なのか、それともただの遊び人なのか、どっちかだろう。
「私に関わるだけ時間の無駄だよ。」
「そんな事ないよ何故そう言うの?」
私はその男の言葉を呆然とただ心のない人形のような、おももちで聞いていた。
「今度どっか一緒に行こうよ!!」
どっか行こうって言われても。
私は自分の病気の事をこの男に話せば、この男は、私から離れて行くに違いないと思っていた。
展開は、あまりにも早かった・・・もう、こんな場所だ。
私とその男はピンク色のムードがある一角の大きな2人用のベットがある一つの部屋にいた。私は、この男がどういう反応をするのか正直見て見たかった。
「ねえ私、病気があるの」
「どんな病気?」
「人に、うつる病気」
「・・・性病とか・・・?」
男は言いにくそうに言葉を返した。私への気遣いを考えたのだろう
「そういうのじゃなくて・・・もっと別なもの。」
「う~~ん・・・何だろうな。まさか!?恋の病とか!?」
な~~んちゃって。そういう顔で男は受け応えした、
「真面目に聞いてる?」
「ゴメン・・・・でも何の病気?」
「一生治らない病気」
私は軽い口調でその言葉を発した
「一生治らない?・・・・もしかして。あの病気?」
男は、ようやく何か察したようだ、これでこの男は、私から離れていくに違いない、私は、この呪縛から離れられないのだ、だから私と一緒に火の海に落ちるリスクをこの男が持っているとは思えない私は、この自分の病気のせいで恋をするのを拒んでいた、絶対私の病気の事を知ったら男たちは私から急いで逃げ出してしまうだろう。
だけどこの男は軽々しい口調で言った。
「ゴム着けりゃあ大丈夫じゃね?」
この男は私が嘘をついていると思っているのだろうか!?
私は直、必死にこう繰り返した
「本当だよ!!私はそういう病気なんだよ!!」
男はそれでも動じづに、こう話した
「あの通りで君を見て本当にカワイイと思った。正直、一目ぼれした。だから何て言うのかな、好きになったから形がどうあれ、良いんじゃないかなと俺は思うけど・・・」
正気で言っているのだろうか?ただのバカなのだろうか?私は、この男が何を考えているのか分からなかった、そして私達は自然の流れのまま一つになった。