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01 通い慣れた病院

私は、鉄製の横の長いイスに座っていた。

それには、快よい触感の固・柔らかなマットが敷かれている。

手を軽く握って、力強くそのマットを指圧する、徐々に埋め込まれていく私の手、さらに腕全体に、力いっぱいの体重をかける。

何故かそうしたくなる・・・・人間って、いっつもこうなのかな?・・・いや、私だけがそうなのかな?

「もうギブ。」

軽く心から声が漏れたと同時に絡みついたマットを退けた。

段々と、跡形も無くなっていく手形をそっと元の方に戻っていった。

 私は、この動作に慣れていた、そしてこの病院に通っている。

昔は、あとどのくらい、この病院に通えばいいのか なって思う事もあったけど今は、何の希望もない、これが自分の日常だって思える。

その時優しい声で「美保ちゃん!!」って言う私を呼ぶ看護婦の声がした。

「美保ちゃん!!来てたんだ~。」

「あっ・・・うん。」

「今日、診察?」

「・・・うん・・・。」

と私は、いつも素っ気ない返事だけをする。

「この前。新宿の特急ナンズでね、美保ちゃんのお母さんに会ったんだけど何かね手芸のだっけ?何か探している見たいだったけど・・・」

「・・・ふーん・・・」

「久しぶりに美保ちゃんのお母さんに会ったからチョット緊張しちゃった。」

「・・・・」

「前は、いつも美保ちゃんとお母さん一緒に病院に来てたからさ~。」

「景子お姉ちゃん・・・私・・・もう大人だよ・・・」

 私はこの看護師さんの事を幼い頃から知っている。

あの頃は、もっと光に満ちていて「景子お姉ちゃん!!景子お姉ちゃん!!」と希望を持った声で発していたと思う。だから、病院に行くのも嫌な時があったけど、景子お姉ちゃんに会えるからそれで、我慢できたし嬉しかった。だから病院に景子お姉ちゃんがいない時なんか本当に嫌で、泣いた時もあったけ、・・・多分。今は逆で、いないほうが良い・・・。

もう飽きた。


「そうだよね~~もう美保ちゃん大人だもんね~~21になったんだよね?」

「・・・・」

 景子お姉ちゃんと今でも呼んでるけど今は、オバサンと呼んだ方が似合ってるかもしれない。

幼い頃は、もっと目がギラッとして、くっきりと二重まぶたで白衣姿のライン何かもっとスラーっと引き締まって、おしりの曲線もキレイに決まっていたのに、今は、まぶたは少したれ下がって、目尻の小ジワも木の年輪の様に姿を表してしまった。

その年輪も現在進行中である。哀れだ・・・そして、もっと哀れな事がある、それは、何故かと言うとその年輪を必死に食い止めようとしている関門に立つ関女、天からの恵みの雨と共に降ってくる重力がそうさせる。

色々な体のバランス波長を狂わせ溜まった老廃物と言う、いかにも悪意のある肉片を沈澱させる。そういう神から与えられた恵みを拒み続ける美の推進者。

厚化粧、デトックス、ヨガ、顔面体操、すっぽん、ボクササイズ、もうメチャクチャだ。まるで力仕事を好む勇ましい男の様だ。

一日、一日に自分に負荷を与えて、耐えている修行中のお坊さんだ。

何が何だか分からない。だから、健康商品の通販番組の解説者の声を聞くと私にはお経に聞こえてくる。

サッと景子お姉ちゃんの顔を見た、まさにその通りの顔をしていた、若作りした様な化粧のノリ頬は、顔面体操の成果なのか肉と肉でつり合わされている、そこから更に私の方を見て更にニッコリとほほを上げた。 私もオバサンになったら、その関女になってしまうのだろうか?考えた事もない。

私は、ハッキリ言ってそういう風にはならないと思う。何故そう言いきれるかと言うと。

私は、1週間に1度や2度病院に通って幼い頃から、いくつもの注射の針の鋭さを受けてきた。

別の病気や軽い風邪にかかっただけでも頭の中が、ぐつぐつと鍋で煮えたぎってその煮えたモノを心で敏感に感じているんだよ。だからその時は神経を麻痺させるんだ。痛みを貰ってその痛みを同化させる。脳を納得させるんだよ、私はこんなに苦しんでると、自分の脳に納得させる、そうすれば、何も感じなくなる、痛みも、苦しみも、だから心は非常に穏やかになる・・・自分が怖いくらいに、

だから気持ちは、楽だけど体が大きな冷凍庫で脳が冷えるまでギンと凍らされて、そのまま火山のマグマの溶岩がドロドロ煮えたぎっている所に落とされている状態だから、

苦しみも何も無いまま、このままフと自分が消える様な気がする。

そういう耐える種類のモノは、私には、もう必要ない。


私は、生涯・・・・・。病を背負っているのだから・・・。

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